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営業部長の読書日記

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書店巡回歴・三十数年、PHP普及局きっての読書家である営業部長アキラ――。店頭で自分の眼で見て、触って、買った本の魅力を語ります。
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記事一覧

■読書日記<第14回> 小説改稿の醍醐味と読書の「新たな可能性」を知った夏

ウクライナ戦争と新型コロナウイルスの蔓延は、いったい世界をどこへ連れていくというのでしょうか。いろいろと考える材料を読書に求めてはいるのですが、なかなか難しいですね。とはいえ、「世の中に片付くなんてものは殆どありゃしない」と『吾輩は猫である』執筆中の自身に重ね合わせて、後年の夏目漱石は『道草』(1915年/『朝日新聞』連載)の最後に主人公・健三の言葉として記しています。家庭的にはペシミスティックな人間である漱石の言ではありますが、これはこれで真実であるのかな、と思えます。なか

■読書日記<第13回> ハラスメント研修を機に「働き方」を問い直す

理不尽に領土を侵されたウクライナ紛争の解決はいつになるのでしょうか。21世紀となり、いくら技術や思想が進んでも、人類は戦争をなくすことができずに残念です。まるで現代の問題すべてが集約された縮図を見せつけられているようですが、まだまだ予断を許しません。 さて、GWの「子どもの日」3連休は、久しぶりに再開された「上野の森親子ブックフェスタ」に、PHP研究所のブースを出店して参加しました。いくら世界で凄惨な紛争が続こうが、新型コロナウィルスの猛威が収束しなかろうが、晴天のなか、平

■読書日記〈第12回〉おろかな争いをしている余裕はない

春はさまざまな変化がありますね。私もご多分に漏れず、PHP研究所の京都本部から東京本部へと転勤しました。幸い仕事は変わらず、これからも読者や書店さんに本をお届けしてまいります。閉塞感の増す世の中で、弊社の書籍や雑誌が、みなさまのお役に立てれば幸いです。 ■3月26日 『生きることとしてのダイアローグ』⇒人も世界も〈対話〉で発展する『生きることとしてのダイアローグ』は、ロシア人思想家のミハイル・バフチンが唱えた「対話論」にフォーカスを当てた解説書です。バフチンは、ドストエフス

■読書日記<第11回>ノンフィクションとフィクションとのあいだ

地政学的リスクの高い中央ヨーロッパで戦争が始まりました。これによって、政治、社会、経済など、いろいろと世界の構造が変わっていくようです。国際的には、米英の相対的な地位が下がり、ますます中露の存在感が高まることで世界の多極化が進み、種々の軋轢が進むのでしょうか。とにかく、ウクライナ侵攻がアフガニスタン情勢のように泥沼化しないことを祈ります。 呑気に読書を楽しんでいいのだろうかと、後ろめたい気もします。困ったものです。 ≪今月の購入リスト≫ 『感染症としての文学と哲学』福嶋亮大

<第9回&10回・合併号>「聖地」巡礼に始まった2022年・読書の旅

2022年、気づけばもう2月中旬に。無事に新年改まり、「さてさて、今年はどうしようかな」と思っていたところ、おやおや、流行り病が再び猛威を振るい、いっこうに収まりそうもありません。「まん防」解除は3月に持ち越しだそうで、困ったものですね。とはいえ、2022年が未来へつながる希望に満ちた年になることを、心より願ってやみません。 思い返せば、年末の大掃除(結局、ちっともできませんでした)の合間に本棚からあれこれ引っ張り出し、そして大晦日、正月は幕の内も過ぎ、果ては1月いっぱいまで

<第8回>新店挨拶では必ず本を買い求め、お店の袋に入れて持ち歩きます

世間ではいよいよコロナ禍もすっかり明けたかのような雰囲気で(いまだオミクロン株の脅威はあるにせよ)、ここ京都はとくに紅葉見物の観光客でごった返していました。制限解除(人びとの心理的にも)を受けて、私も仕事では八面六臂で活躍しなければならず(できてはいませんが……)、本を読むのも、ちょっとの暇を見つけて、なんとか細切れでも至福のひとときを味わいたいと、もがく毎日です。 ≪今月の購入リスト≫ 『NOISE~組織はなぜ判断を誤るのか?(上・下)』ダニエル・カーネマンほか著(早川書

<第7回>節操のなさに呆れながらも、「濫読」をやめられない日々

≪今月の購入リスト≫ 『稲盛と永守』名和高司著(日本経済新聞社) 『読む・打つ・書く』三中信弘著(東京大学出版会) ※ともに、大垣書店イオンモールKYOTO店で購入 『音楽の危機』岡田暁生著(中公新書) ※大垣書店京都ヨドバシ店で、天花寺さやか先生の一日店長イベントの手伝い時に購入 『塞王の楯』今村翔吾著(集英社) ※11月1日、きのしたブックセンターの新装オープン挨拶時に購入(書店オーナーであり著者の今村翔吾先生は、弊誌『歴史街道』で連作短篇を好評連載中!) 『謎解きサリン

<第6回>食べて寝て働いて、時折り本に齧りつく毎日

先月は弊社の期末決算(毎年9月)でしたが、さまざまな問題に翻弄されながらも、なんとか新しい事業期を迎えることができました。全国の書店の膨大な実売データ、怒涛のSNSでのパブ情報、進む商談や会議のオンライン化等々、ともすればデジタルの奔流に押し流されてしまいそうになります。とはいえ、難しい顔をしていても仕方がないので、ここはグッと堪えて「笑顔」でいきたいものですね。気がつくと、ほぼ一日の大半、しかも土日返上で仕事に勤しみながらも、なんとか本だけは手にしています。私にとっては精神

<第5回>未来への「希望」について、とめどなく考える日々

いったい、どのように収拾がつくのか見当もつかないコロナ禍のなかにあっても、人類の未来には「希望」を持ち続けたいものだと思います。希望の対象には、たくさんのものがあります。わたし個人としての希望? 親として、子供としての家族? あるいは、所属する組織? たまたま住んでいる地域共同体? 偶然に国籍を持つ国家? サピエンス種としての人類? 乗組員の一員としての宇宙船地球号? 太陽系惑星の所属する銀河系? もしかして、ダークマター? ……はてさて、茫洋としてしまいますが、私がもっとも

<第4回>オリンピック騒動で心乱れる日々のなかで

コロナウイルス感染が急拡大するなかで強硬開催(!?)された東京オリンピック。終わってみれば金27,銀14、銅17と、史上最高の58個のメダルを獲得する日本人選手の活躍もあって、直後の世論調査では「オリンピックを開催してよかったと思う」人が6割超と、国民の厳しい見方も和らいだようですが……。それにしても、マスコミもマスコミで、開催か中止か、有観客か無観客か、直前までのあの大騒ぎは、いったい何だったのでしょうか。今回のオリンピック騒動に心を搔き乱されたのは、たぶん私だけではないは

<第3回>「進化論」がやたら気になる今日このごろです

私的な芋づる式読書の備忘録「考えるヒント」(©小林秀雄)は、「進化論」という、これまた大きすぎる鉱脈にぶち当たりました。書店での仕事中にも、関連する新刊がどうしても目について戸惑います。なぜいま、進化論なのでしょうか。この1カ月で新たに購入した本は、下記のとおりです。 ≪今月の購入リスト≫ ①『進化思考』太刀川英輔 海土の風 2021/4/23 @大垣書店イオンモールKYOTO店 ②『「悪」の進化論』佐藤 優 集英社インターナショナル 2021/6/30 @大垣書店烏丸三条

<第2回>「京都本大賞」の下読みの日々、戸惑いながらも気になって読んだ本

じつを言うと、私は「京都本大賞」の実行委員会に参加しており、ここ数日、ノミネート作品選出のため、京都関連の小説を読み続けているのですが、これがなかなか興味深い作品ばかり……。差し障りのない時期が来ましたら、改めて紹介させていただきますね。 さて、今回も個人的な備忘録「考えるヒント」(©小林秀雄)の続きを書かせていただきますが、最初に、この1カ月で新たに購入した本を紹介させていただきます。 ≪今月の購入リスト @ふたば書房京都駅八条口店にて≫ ①『「利他」とは何か』伊藤亜紗/

GWに気になった本&読んだ本

PHP普及局きっての読書家の書籍代は、毎月ウン万円。「彼が何を読んでいるか気になる」との声が社内でも多し……。そこで、自腹で買った本の魅力を語ってもらいました。 いつも捗る、自分の部屋の外での新鮮な読書  PHPの京都本部で西日本の書店さんを担当させていただいている河崎亮と申します。  本連載は「こよなく書店を愛する私に読書日記を」ということでオファーをもらいましたが、コロナが猛威を振るうにつれ、読書の有用性が喧伝されるようになったのは周知の事実です。私も人生で、その時々の