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【レポート】ビジョンデザインワークショップ第1日

フォトニクス生命工学研究開発拠点は、さまざまな生体情報を計測、数値(デジタル)化し、活用することで社会を支えるフォトニクス技術の開発と社会実装を目的に生まれました。大阪大学と連携しながら、大阪大学 大学院工学研究科・フォトニクスセンター、産業技術総合研究所生命工学領域フォトバイオオープンイノベーションラボ、シスメックス株式会社などの企業と一緒に研究を行っています。

フォトニクス生命工学研究開発拠点のWEBサイトはこちら

 フォトニクス生命工学研究開発拠点のビジョンデザインワークショップが8月7日、大阪大学のフォトニクスセンターで開かれました。計3回のワークショップの1回目です。フリーライターの私も、一般人の立場で参加しました。当日の様子をリポートします。(フリーライター:根本毅)

第1回WS集合写真

(写真説明)ワークショップに参加したメンバーたち

■ビジョンを洗練させるためワークショップ開催
 まず、拠点とワークショップについて簡単に説明します(詳しくはこちら)。
 この拠点は、科学技術振興機構(JST)の「共創の場形成支援プログラム」(COI-NEXT)に採択されたプロジェクトです。研究開発はバックキャスト方式、つまり最初に「実現したい社会像(ビジョン)」を定め、その未来像から逆算して「何を研究開発すべきか」を決める方法を採ります。従来の「研究を積み重ねていって何かを開発する」方法とは違います。
 フォトニクス生命工学研究開発拠点は、プロジェクトの企画時に実現したい拠点ビジョンを「フォトニクスを中心とした融合研究による人間・環境に優しい社会の実現」としました。ただし、ビジョンは幅広い人の考えを取り入れ、洗練させていきます。3回にわたるワークショップでビジョンを考え、メンバーで共有します。

■4チームに分かれて「実現したい社会像」を考える
 会場に着くと、5~6人ずつA~Dの4チームに分かれて座りました。各チームにはさらに1人ずつファシリテーターが付きます。私はDチーム。他に大阪大の研究者や阪大経営企画オフィスの職員、民間企業の社員がいました。これからどんなことが行われるか分からず、何となく落ち着きません。
 全体の進行は、公益財団法人・大阪産業局の浅岡陽介さんが担当。まず、バックキャストについて、分かりやすく説明しました。

第1回WS集合写真2

(写真説明)ワークショップの流れについて説明する浅岡さん

 「バックキャストというのは、未来のありたい姿を起点に考える思考法です。例えば、『省エネを実現するには』というテーマの場合、現在を起点とする思考だと『現在より電気の使用量を減らす』となります。一方、バックキャスト思考は現状をいったん無視して『すべてのエネルギーが再生可能となって電気がいらない社会を作る』というような答えになるかと思います」
 なぜ今、バックキャスト思考が必要なのでしょうか。浅岡さんの説明によると、昔は「問題」がたくさんあり、次々と解決されて皆に喜ばれました。例えば洗濯機。戦後、洗濯機が登場し、家庭の主婦は重労働から解放されました。しかし、今は解決すべき問題がなくなってきたため、『5%節電の洗濯機』のように改良される程度です。そこで、ありたい姿を独創的に定義し、解決すべき問題を作り出す必要が生じているのです。
 浅岡さんは「ロジックで積み上げていっても、イノベーションは起きない厳しい時代です」と話しました。

■2040年に実現させたい「健康で心豊かに暮らせる生活」は?
 いよいよ実践。その前にチーム内で自己紹介をし、各自「最近ハマっていること」を紹介しました。「運動」「空手」「ワイン」「料理」……。多様なバックグラウンドの人がそろい、関心もさまざまです。チームとして、だいぶ打ち解けられた感じがしました。
第1回の今回は、「2040年(20年後)に実現させたい健康で心豊かに暮らせる生活」をテーマに、とにかくアイデアを出すのがミッション。フォトニクスを中心に据える拠点ですが、今回はフォトニクスを考慮しません。最終的に、フォトニクスでできそうなことを抽出して拠点ビジョンを確定するそうです。
 60分間、とにかく思いついたことを付箋に書き、白い壁に貼っていきます。スタイルは「○○できるようになり、○○になる」。何が可能になって、どういった生活にしたいか、を書くわけです。「質より量」という言葉に励まされ、アイデアをひねり出します。

第1回WS集合写真3

(写真説明)アイデアを記した付箋を壁に貼っていく参加者たち。内容が近いアイデアをグループにしていきます。

私は「何を食べても太らないようになり、好きなものを好きなだけ食べられるようになる」や「若い時の記憶力や判断力を維持できるようになり、年を取っても仕事を続けられる」などと書きました。日ごろ何に困っているか、ばれてしまいます。
 考える際のポイントとして「我慢ではなく、ワクワクするか」「達成できるか分からない、高い抜本的な目標であるか」が挙げられていたので、それも考慮します。
 「なるほど、ドラえもんだな」。以前、知り合いが「バックキャストはドラえもんですよ」と言っていたのを思い出しました。「あんなこといいな♪ できたらいいな♪」の世界。結構、楽しいです。途中で「楽することばかり考えてるな……」と反省し、「痛みを共有できる装置が開発され、患者と医師、出産する女性と夫、などが互いに理解し合える社会が実現」という趣旨のアイデアも出してみました。
 他のメンバーもたくさん貼っていきます。他の人のアイデアへの乗っかりもOKというので、メンバーのアイデアを参考に空想を広げます。A~Cチームも、たくさんの付箋を貼っていました。

■アイデアを基にストーリー作成
 アイデアは、内容が近いものでグルーピング。それを眺めて、「ありたい社会像」を作ります。例えば、私たちのDチームは「食」に関するアイデアが多数ありました。そこで、「ありたい社会像」として「好きなものを好きなだけ食べられる社会」を中心に据え、その周りに「植物と会話ができるようになり、農作物の生産性が向上する」「おいしいものをたくさん食べても太らない食生活」などと、既に出していたアイデアを配置します。さらに、それらのアイデアそれぞれについて、ユーザーの表情や可能をイラストで表現します。これによって、誰が喜ぶのかイメージするわけです。

第1回WS集合写真4

(写真説明)ストーリーづくりの一例。大きな紙に清書し、各アイデアにイラストを付けます。Dチームは結局、違うアイデアを発表しました。

 最後に、A~Dの各チームがアイデアを発表して終了しました。

第1回WS集合写真5

(写真説明)アイデアの発表の様子

■次回はアイデアの具体化
 次回はアイデアの具体化を考えます。どんな体験ができるか楽しみです。同じチームの男性会社員も「どうしても現在視点の思考になってしまい、バックキャスト思考は難しいですね。2回目がどうなるか楽しみです。拠点でどのようなコラボレーションができるか、社会に対してどんな役割を果たせるか、について考えながら参加しようと思います」と話していました。


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