1年中サマータイム。
「1年中サマータイム!」。なんといい響きだろう。こんな日が来るとは思っていなかった。
そうバンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア州で、サマータイムを廃止ではなく、1年中サマータイムとすることが決定したのだ。
そもそもなぜサマータイムが必要なのか?
サマータイムは正式にはDaylight Saving Timeといって、日が長い夏の期間だけもっと有効に太陽の恩恵にあずかりましょうということで導入されている。
カナダで最初に導入したのはオンタリオ州の都市だと言われている。1908年のこと。そして紆余曲折を経て、現在は3月第2日曜日から11月第1日曜日までとなっている。中には導入していない州もあるので、全国統一という制度ではない。
サマータイムは、家族団らんやアウトドアを楽しむだけじゃなくて、電気代が節約されるとか、経済的な効果的とか、色々な恩恵を並べてここまでやって来た。
しかし1年に2回時計の針を変えることに弊害も出てきたりして、「もうそろそろいらないんじゃないの?」みたいな議論はずっとあることはあった。
それがここにきて一気に、「もういっそのこと1年中サマータイムにしちゃえ!!」みたいなことになったのは、実はBC州から言い出したことではない。
お隣のアメリカ・ワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州でそういうことになってきたので、じゃあ同じ西海岸だから私たちもということで、そういう運びになった。
そうなるとあとは結構速い。もともとサマータイムいらない論があるから、州民の意見を聞く調査をしても22万人が参加して93パーセント賛成という驚異的な数字となった。
とっとと決めちゃいましょうということで、今年の10月31日に州議会に提案。可決されるのは時間の問題で、あとはいつから導入するかということになる。
サマータイムについては、日本でもオリンピックの時に導入するだの、しないだのという意見が出たが結局流れた。
だいたい日本のような国民総働き者みたいな国では、仕事時間が増えるだけでアフターワークをゆっくり楽しみましょう~なんてことにはならない。
働かなくてすむ口実を常に真剣に考えている北米のような国民性にこそ有効となる制度なのである。
ここバンクーバーは緯度が高い。日本でいうと北海道最北の稚内のまだ北で、樺太の半分くらいのところにある。
だから夏はすごく日が長い。サマータイムがなくても夜は9時頃まで明るい。サマータイムがあるから10時くらいまで明るい。
そうすると夕飯を食べた後でも明るい中で散歩をしたり、アウトドアを楽しんだり、ナイトマーケットのようなイベントに出かけたりできる。
これこそがサマータイム制のいいところで、「日が長いから明るいうちにもっと働こう」なんて言葉カナダでは聞いたことがない。
生産性よりもゆとりを優先するのがサマータイムの有効活用なのだ。
これが1年中となるとどうなるか?
今度は仕事や学業方でいい方向に働くのではないかと思う。
というのも、北の方にあるだけに夏は日が長いが冬は短くなる。10月下旬のバンクーバーの日の入りはだいたい5時半ごろ。これが11月第1日曜日にサマータイムが終了すると4時半になる。
5時だと昨日までは明るかったのに、今日は暗いとなるわけだ。だからこの時期、交通事故が多発する。睡眠障害を起こす人もいたりして、弊害こそあれほとんどいいことはない。
それが年中サマータイムになると、いきなり暗くなることもないし、体が慣れているから健康被害も少なくてすむ。仕事にも学業にも支障をきたすことが少なくなるというわけだ。
ちなみに前にも紹介したがバンクーバーの冬は雨季である。9月から3月までは雨の季節で、毎日毎日どんよりとした日が続く。1週間に5日間雨なんて全然普通。それが何か月も続く。
だから冬にうつ病を発症する人が多いと言われている。冬はビタミンDの摂取をとテレビで医療関係者がよく言っている。
そう考えると1年中サマータイムはバンクーバーにはいいことずくめ。導入するのが遅すぎたくらいだ。
もし来年バンクーバーに来ることがあったら、ぜひちょっと気にかけてみてほしい。3月第2日曜日に時計の針を進めたが最後、二度と戻すことはないかもしれない。
「1年中サマータイム」、その響きだけでなんとなく幸せになれる気がする。
写真:ある朝のバンクーバー by myself
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