見出し画像

Capturing Grace (2014)

Capturing Grace (2014)
 ニューヨークのダンスクラブのパーキンソン患者に対する活動の宣伝映画だろうと高をくくっていたのですが、みくびっていました。
 ニューヨークのある知的な人達の活動であることは間違いなく、アメリカの格差の上澄みでしょっていわれてもしかたないのですが、パフォーマンスアートとしてめざす高みにうちのめされました。
 ブルックリンのMark Morris Dance Centerではパーキンソン病患者象のダンスクラスをしています。やってくる人達は学校関係、学者、詩人、世界的大企業のexclusiveなど世界の首都ならではのメンツです。
David Leventhal (Former leading dancer of MMDC)はなかなかのイケメンで性格もよくよいニューヨーカー、彼が全面的にこのクラスを受け持っています。
 そこまではよくあるストーリーなのですが、1年かけてお客さんに見せられる舞台を目指そうとなり、単なるリハビリやお楽しみをこえた練習がはじまります。
 数人のパフォーマー(PAの患者さん)がそれぞれピックアップされストーリーがすすんでいきます。
 多分チームで一番ダンスが上手いCindyはretired school social workerです。ご自宅での動画でオフの時に振戦が明らかで歩こうとすると典型的小刻み歩行ですくみもみられます。しかし音楽(ジャズ系)をかけてダンスをすると途端に手足は大きく動き華麗なダンスを披露します。ハマグリのネックレスをつけていてダンスにあわせて音がする、なかなかおしゃれな方です。インタビューではジスキネジアがみられます。
 Joyは詩人です。動くことは人生で欠かせないもの、修理できないぐらいになってしまった、脳細胞は発火をやめ、化学物質はへっていく・・・
 Davidは舞台公演がきまると、生徒たちのトレーニングを次の段階にすることに力をいれます。それぞれのダンサーに個々のスタイルがある、それぞれの美しさがでてくる、 自由な即興ダンスをつくりたい。本物のアートにしたいと。
 途中で代表のMorris氏が見学にきます。シューズをはいてドアを開けるのも大変な人達が、ここに定期的に練習にきて、フルコミットメントをする。必ずしも楽しいことばかりではないだろうに、ここに来るのは本当に価値があるといいます。プロ相手のArtistic Directorですから要求もシビアです。ステージをみせるのに妥協はしません。
個人レッスンでも徹底的に一つ一つのシーンに磨きをかけます。要求することはプロとなんらかわらない。
途中から若いダンサーが加わって合同での練習がはじまります。さらに個人練習、動画みて自主練習。
 ゴールはパフォーマンスをreal showにする。トレーニングをみせるのではない。
 最後の練習とステリハ、you know what to do.. You’ve done all of the hard work. Now it’s a fun part. Davidは1人1人に一輪挿しのバラをプレゼントし、本番です。
 Tuttiでおどる最初のダンス、その後はJudy とMannyの2人によるmicro waltz DUOができるなんてすごいですね。即興ダンスはドビュッシーの月の光のピアノでひとりひとりがソロをとって表現をパスする作品。最後のBrooklyn Peaceは一番上手いCindyを見せ場で起用します。Cindyと若いダンサーがシンクロして踊る場面があるのですが、モーションがふたりで同期しているのに加え、彼女のジスキネジアが独特の効果をあたえ、現代ダンスとしての凄みがでます。ここまで計算してプロデュースするのがニューヨークの離れ業。圧倒的な拍手でした。
 リハビリをはるかに超えた世界がここにありました。病気だからアマチュアだからって芸術は容赦しません。一流のパフォーマンスに仕上げたニューヨークに感服いたしました。
 追記:こうやって時間掛けてステージをめざしてパフォーマンスをすることができる世界が戻ってきますように。https://www.youtube.com/watch?v=P1ajZSX1AdY


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?