私は死神 【小学五年私は特別な友を亡くした】

私はいつも心のどこか片隅で貴方が死にませんようにと本気で思っている
全てが始まったのは小学5年生の時。
私は一人の男の子と仲良くなった
その男の子は内気で友達と呼べる友達を持っていなかった
私が彼の初めての友達、唯一の友達だったのだ
私にとっては一人の友達にしかすぎなかったが彼にとって私は特別な存在である事は知っていた
彼のクラスにいくと他の誰にも見せない控えめな笑顔を私に向けてくれた
それはたとえ彼に用が無くても
夏休みに入る前彼が私が向けてくれた笑顔は切なく、そして楽しげであった
夏休みに入ると私は受験勉強に更に勤しんだ
忙しさに彼を思い出すことなんてなかった

夏も終わりに差し掛かり、毎年恒例の夏祭り時期になった
その日私は束の間の御褒美で塾からの帰りに友達と夏祭りに向かっていた
そんな時突然友達から告げられた
彼が亡くなったと
理由は脳腫瘍だった
数回の手術の末彼は息を引き取った

私は葬儀に呼ばれる事はなかった
彼の住むマンション"イオ"に住む同級生が葬儀に参列した
私と彼との仲は秘密だった
誰も知らなかった
彼の親でさえも
彼はほとんど語らないのだ
それは親に対してもそうであったのだろう
しかし彼と私の世界は誰にも邪魔されず、そこには二つの魂が確かに存在した。

私は彼の死に実感は湧かず、誰とも話さず表情を変えない彼の唯一の友達であり唯一あの笑顔を知っている事、最期に彼に笑顔を与え、友達と遊ぶ楽しさを教えてあげれたと思い優越感だけが残った。
彼の人生の最期に最も輝かしい時間を私が与えたとさえ思っていた。
しかしそんな気持ちもすぐに変わる。
もし私が彼と仲良くなければ、この世界の楽しさを知らなく悔いなく逝けたのかもと
私が仲良くしたせいでこの世界に未練を残して逝ってしまったのではないかと
そう考えるようになってしまった
しまいには私が仲良くしたせいで亡くなったとすら考えるようにもなってしまった
彼が亡くなる前、何か変化があったとすれば友達ができた事だったから

そして二年後次に私は親友を失った
彼は全身麻痺になってしまった
喋る事も出来ず、ただ生きていく事しか出来ない体になっていた
そして私は自分が死神だと以前より強く感じるようになってしまう
以前から心の底から人を恨んだりすると次の日その人が骨折していたりとそういった度重なる奇跡によって私の心は信じ始めてしまった

それ以降私は毎回三年に一度、身内や友を亡くしている
それもその報告を受けるのはいつも私とあったすぐ後に
いつもは会わない身内や友にあったすぐ後に報告を受けるのです
バタフライエフェクトを日頃から考えてしまう私はもし私と会わなければと考えてしまうのです。
そしていつの日か私と居る人に対して常に心の隅で死にませんようにと思ってしまうようになった
とりわけ新しく親しくなった人に強く。
更に云えば親しくなった後に私と距離ができた人に。

私の脳を検査してくれたすぐ後に癌が見つかった叔父が亡くなってからもうすぐ三年が経つ
今回はもう誰も失いたくない
私の周りの全ての人間、そして特に最近私の元を離れた人間が無事である事を祈る事しか出来ない。

〜あとがき的なの〜
こうして私は死神であるという事を言ってきたがきっとこれは小5の友の無口で内気なだけども優しさに溢れた彼を世界に発したいだけなのだと思う。同級生で彼を思い出す人はいないだろう。しかし私はこうして時々貴方を思い出し続けているよ。君の分の人生も君の唯一の友であった私が生きると誓ったから。
そんな気負いが私を死神にしたのかもしれない。
私は死神だという考えには常に君がいたから。

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