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阪神タイガースはサイン盗みをしているのか?「論理的」に考える

本noteでは、阪神タイガースのサイン盗み問題を、「得点圏打率」のデータを交えながら論理的に考察します。


はじめに

ふぁい、と申します。

題にも記したように、阪神タイガースのサイン盗み問題が世間で再燃しています。
普段は野球の話を一切noteにしないのですが、今回の件に個人的に興味があったので考察してみます。
プロ野球やデータの専門家ではなく、いちプロ野球ファンですので、そこはご了承ください。


サイン盗み問題の発端

2024年9月26日、デイリー新潮で、読売ジャイアンツの選手が、阪神タイガースの選手のサイン盗みを警戒していた、という旨の記事が投稿された。

正直、明確な情報ソースのない、真偽不明の信憑性に欠ける記事であると感じた。
世間でも、一部をのぞく大多数の方がそう感じていたと思う。
しかし、この記事の信憑性と、実際にサイン盗みが行われていたかには一切の関連性がない。この記事が本当であるケースだけでなく、この記事は嘘もしくは適当な情報だがサイン盗みは行われたケースも考えられる。
それを考慮していない阪神ファンの意見や、「大山選手は人間性がいいからしている訳がない」といった根拠不明瞭な情報による決めつけが散見された。
逆に、巨人ファンおよび他球団ファンによる、しているに決まっているという根拠のない攻撃も見られた。
事実が不明瞭な情報で盛り上がるのもプロ野球の醍醐味のひとつではあると思うが、このような議題に根拠なく擁護したり非難するのは間違っていると断言できる。
「マッチポンプ」「火のないところに煙は立たない」といった言葉を利用し、正論のように話すのはもってのほかだ。村上宗隆選手と近本光司選手、ひいては阪神タイガースとの衝突の際のサイン盗み問題に関しても、証拠不明瞭で終わった話のはずだ。

筆者は、サイン盗み問題を、データを交えながら論理的に分析してから意見を述べるべきだと考え、このnoteを書くことにした。


得点圏打率を比較する

サイン盗みをしている派の意見として、最も多く見られたのは「阪神タイガースは得点圏打率が高すぎる」というものである。
個人的には、コンタクト率のほうが、よりサイン盗みをしているかどうかに関わるデータな気もしているが、とりあえず得点圏打率を調べてみる。

※データが入力ミス等で間違っている可能性があります。ご了承ください。
※データは、プロ野球ヌルデータ置き場(https://nf3.sakura.ne.jp/index.html)より参照しています。


阪神タイガースと他球団の比較

まずは、セ・リーグ全体と、阪神タイガースの得点圏打率を比較する。

今期の打率は現状、セ・リーグ全体で.244となっている。たまたまだが、現在の阪神タイガースの打率も同じ値だ。
そして、阪神タイガースを除く他5球団の得点圏打率も.244となっている。

・得点圏のランナーの有無で打ち方を変える選手がいる(であろう)事
・三塁にランナーがいる場合は外野フライが犠牲フライとなり凡打にならない事
・ランナーなしなら安打になる当たりがランナーの影響でアウトになるケースがある事
・代打が出る可能性が得点圏か否かで変わる事
など考慮するべきことは多々ある。
しかし、基本的には、データが十分にある際は打率と得点圏打率はほぼ同値で収束するのが普通であるといえよう。

しかし、阪神タイガースの得点圏打率はリーグ平均を大きく超す.279である。次点で高い東京ヤクルトスワローズが.261なことを考えると、確かにかなり高い値と言えるだろう。

選手個人の成績について

次に、選手個人の成績についても調べてみる。
現在のセ・リーグ得点圏打率ランキング上位にいる阪神タイガースの選手は、大山選手(2位)、森下選手(4位)、近本選手(5位)、佐藤輝明選手(6位)である。

※ちなみに、1位オースティン選手(De)、3位小園選手(広)。

確かに、得点圏か否かでかなり差はある。
しかし、そもそも、得点圏打数が一番多い、東京ヤクルトスワローズのオスナ選手でも142打数なので、データ量が少なく上振れが起こりやすいデータではある。
なので、この4選手や、オースティン選手や小園選手のような選手が出てくるのは当たり前ではある。だが、阪神タイガースの選手がランキング上位に多いのは不自然だ、という話も理解できる。一時期、1位から4位を阪神タイガースの選手が占めていたこともある。

そして、得点圏以外の打率がリーグ平均並かそれ未満にも関わらず得点圏で打ちすぎているのが不正の証拠、という意見もあるだろうが、それは完全に正しい見方とはいえない。
一番打っているシチュエーションを抜いたら成績が降下するのは当たり前である。例えば、得点圏打率が下から2番目である中日ドラゴンズの岡林勇希選手は、得点圏では.183という成績だ。だが、得点圏以外では.273の成績を残している。この結果に対し、「得点圏以外で不正をしている」という主張する人がいたとする。だが、その意見を間違いだと認識する人も多いだろう。ならばその逆も然りである。


得点圏打率を細かく見る

得点圏打率が高い=サイン盗みをしている、ではないとは主張したものの、サイン盗みをしたほうが得点圏打率が高くなるのは当たり前である。
なので、その得点圏打率をもう少し細かく見てみる。

二塁ランナー無しでも打っている

サイン盗みを調べる際に重要なのは、得点圏打率ではなく、二塁ランナーがいる際の打率である。ゴミ箱を叩く方法でもない限り、二塁ランナーがサインやグローブの位置を見て、バッターに合図を送らなければ成立しないからである。

画像の左側の表をみていただければ一目瞭然であるが、セ・リーグ全体では二塁走者がいてもいなくても同じ打率になっている現状だ。対して、二塁走者なしでは.236しか打っていない阪神タイガースが、二塁走者ありでは.277も打っている。なるほど、サイン盗みをしているようにも感じるわけだ。

しかし、得点圏に限ると、二塁走者がいない際の打率もリーグ平均より高いのである。ランナー三塁および一三塁のシチュエーションでは母数が211打席と少ないものの、リーグ全体や他5球団平均と比べて高いのは事実だ。
無論、右の表の通り、ランナー二塁や一二塁を含む二塁走者ありよりも、ランナーが三塁にいるというシチュエーションのほうが犠牲フライなどで打率が落ちづらく、得点圏だけで判断すれば二塁ランナー無しのほうが打率がいいのは当たり前である。
しかし、得点圏打率のみでサイン盗みを断定するのであれば、少なくとも得点圏中、二塁ランナー無しの場合は打率が他5球団と比べ落ちている必要はあると言えるだろう。

ちなみに、阪神タイガースは犠牲フライの数が平均よりも少ない。そのため、犠牲フライが多いがゆえに打率が上がっているわけではないことも付け加えておく。

上位4選手の二塁ランナーの有無と打率

最後に、阪神タイガースの4選手の二塁ランナーの有無による打率変化を調べる。

森下選手、近本選手は得点圏打率よりも二塁ランナーがいる場合の方が打率が高い。すなわち、先ほど示したように、得点圏中においては三塁ランナーがいる場合のほうが打率が上がるという一般論からは外れている。

一方で、大山選手、佐藤輝明選手は得点圏打率よりも二塁ランナーがいる場合の方が打率が低い。(二塁+二三塁+満塁<三塁+一三塁)
すなわち、二塁ランナーがいなくとも得点圏打率は高いのである。犠牲フライを凡打として計算したとしても、この2選手は得点圏打率よりもランナー三塁+一三塁の打率のほうが高い。シフトなどを考慮しないのであれば、二塁ランナーがいるから打っている、とは言えない

ただ、森下選手、近本選手が二塁ランナーがいる際に、より打っているのは事実である
きっちりと調べるためにランナー三塁+一三塁の打率を計算してみる。
森下選手が18打数、近本選手が22打数と母数が少ないことには留意が必要だが、森下選手が.222近本選手は.318である。
近本選手は得点圏打率が.336であることを考慮すると、ブレの範疇である印象を受ける。だが、森下選手はランナーが二塁にいるときと、そうでないときで打率に大幅な差がある、という事実があるのは確かだ。

しかし、だからといって理由まではわからない。たまたまかもしれないし、シチュエーションの得意不得意の差かもしれないし、本当にサイン盗みをしているかもしれない。だが、それは我々にはわからないのだ


考察

世間の意見とこのnoteで筆者が考えたことを交えながら、あえて、二つの目線から考察結果を記す。

阪神タイガース擁護派

A.得点圏打率が高いのは事実だが、その内二塁ランナーがいないケースでも阪神タイガースは打っている。なので阪神タイガースの得点圏打率が高いのは勝負強いから、もしくはたまたま得点圏で上振れているだけだ。

B.そもそも、サイン盗みをしているのであれば、下位打線がもっと打っているはずだ。

阪神タイガース非難派

ア.森下選手に顕著にみられるように、二塁ランナーがいない時よりも、二塁ランナーがいる時のほうが明確に打っているのは事実である。サイン盗みをしている可能性が高まる理由には十分なり得る。

イ.阪神タイガースの下位打線も、平均よりは低いが、本人の打率より得点圏打率が高い選手は多くいる。下位打線が打っていないことはサイン盗みをしていない証拠にならない。なんなら、疑われないように上位打線の期待値が高い打者のときだけサイン盗みをしている可能性もある。

ウ.大山選手と佐藤輝明選手は確かにランナー三塁や一三塁でも多く打っているが、そこだけが実力もしくは上振れである可能性もあり、サイン盗みをしていない根拠にはなり得ない。そもそも、三塁ランナーがサイン盗みをできないとは限らない。

考察を考察する

少し偏見が混ざっている感じもあるが、概ねズレた意見ではないだろう。特にウは、今回のデータ取りとは真っ向から反する意見だが、間違いなく正しい意見と言える。データなど、出したい結論に寄せて取ることなど容易であるし、逆に出されたデータから出したい結論に持っていくことも容易である。


結論

このnoteでは、2つ言いたかったことがある。

1つは、結果から結論を見出すことには意味がない、ということだ。その結果が出た過程や理由が一つとは限らない。

例えば、2019年にドーピングで陽性反応が出た元広島東洋カープのバティスタ選手の2019年の成績は、372打数で.269、26本、OPS.863である。
ならば、同年に
499打数、.335、28本、OPS1.018の元広島東洋カープの鈴木誠也選手や、
410打数、.280、33本、OPS.917を残した元東京ヤクルトスワローズのバレンティン選手は、
ドーピングをしていたと疑われて然るべきだろうか?答えはもちろん否である。(ドーピング検査が不要だという意味ではない)

要は、結果など文字通り結果論でしかなく、結果から逆算してサイン盗みを訝しむのはともかく、結論を断定したり、ましてや選手や球団を攻撃するのは誤りである。

言いたかったことの2つ目は、ろくに調べたりせずに推測で語るのはやめるべき、ということだ。
筆者も深く調べたわけではないので、偉そうに言える立場ではないのだが、結局サイン盗みをしているか、少しではあるがデータを集めて考察した筆者にもわからないのに、一切調べずにわかる訳はないのである。
しかし、残念ながらXなどでは、何も調べずに勝手に決めつける人が少なからずいる。阪神タイガース擁護派も、阪神タイガース批難派もである。

調べろとは言わない。だが、こういう案件を語るのであれば、調べてからにすべきであるし、調べる気がないのであれば黙っているべきである。
全てのプロ野球ファンに言いたいことだ。


おわりに

筆者は阪神ファンであるので、できる限り公正に記述したつもりではあるが、必ずどこかで阪神が有利になるような記述やデータのとり方などを無意識にしていると思う。
申し訳ないと思う一方で、公正なつもりの人間だろうと、絶対にどこかしらで無意識にそうなると思っている。それも、プロ野球ファンがこういう案件に口を出すべきではないと思う理由である。

筆者はサイン盗み問題が解決することを願っている。公正な判断を下せる人間によって、公平な結論が出ることを願っている。
「サイン盗みを疑われたことのあるチームは、怪しい動きをするな」という結論にならないことを願っている。ルーティーンなどを一部球団の選手からのみ規制するのは、疑い得の疑われ損になるからだ。公平な対応がなされることを願っている。
そして、ないことを信じたいが、もしもサイン盗みがあることを立証できたのであれば、阪神タイガースにきっちりと処罰が下されることを望む。
最後に、プロ野球が公平公正に進行され、我々ファン全員が、公平公正な目でこのような問題を見れるようになることを願っている。


ご読了ありがとうございました。
繰り返しになりますが、素人のnoteですので、間違っている部分や、データのとり方にミスがあるかもしれません。ご了承ください。
また、誤字脱字や名前の間違い、文章の拙さ等もあるかもしれませんが、こちらもご了承ください。

筆者は、おそらくもう二度とこのようなnoteを書くことはないと思いますので、野球関連のこのようなnoteを読みたい、という理由でのフォローは必要ありません。

筆者 ふぁい

2024年9月27日 公開
2024年9月27日 鈴木誠也選手の打数の間違いを修正

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