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補助的な漢方薬治療は関節リウマチ患者の脳卒中リスクを軽減しますか

〇はじめに

関節リウマチの患者は虚血性脳卒中のリスクが高く、死因となったり、長期の障害につながる可能性があります。関節リウマチの患者の脳卒中死亡リスクはメタ分析から52%上昇、デンマークと台湾の研究でも脳卒中リスクが30%高いことが示されました。CRPやTNF-αの上昇による全身的な炎症反応が関与しており、動脈硬化の進行と脳卒中の病理過程に関連していると考えられています。標準治療の一部であるコルチコステロイドと特定のNSAIDsは虚血性脳卒中のリスクを高め、反対にメトトレキサートとTNF阻害薬はリスク低減に関連することが分かっています。ところで、漢方薬には抗炎症作用があり、一部の漢方製品が関節リウマチの症状や炎症の管理に効果があることが報告されています。しかし、関節リウマチの患者における脳卒中リスクと漢方薬の関連性については研究が不足しています。そこで大規模な後ろ向きコホート研究により、補助的な漢方薬の使用と関節リウマチの患者における脳卒中リスクとの関連性が評価されました。

〇関節リウマチと虚血性脳卒中の疫学

関節リウマチ(RA)患者は虚血性脳卒中(IS)のリスクが高く、死亡の主要因となり、重度の長期障害につながる可能性があります。先行するメタアナリシスによると、RA患者の脳卒中死亡リスクは52%上昇しました。また、デンマークと台湾の研究では、RAを有する患者は、RAを有しない患者と比較してISのリスクが30%高いことが示されました。さらに、RAを有する114,342人のアメリカ人女性を対象とした別の前向きコホート研究では、ISの相対リスクは1.48(95%信頼区間[CI]:0.70-3.12)でした。そのメカニズムとして、CRPやTNF-αが上昇したRA患者における全身的な炎症反応が考えられます。このような慢性炎症は、動脈硬化を促進する根底にあり、ISの主な病理過程であると考えられています。

〇関節リウマチと標準療法

RA患者における全身性の慢性炎症に加えて、日常的に処方される特定の医薬品もISのリスクを高めます。欧州リウマチ連盟(EULAR)の勧告によれば、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)の一種であるメトトレキサートと、短期間のコルチコステロイドがRAの第一選択薬です。6カ月以内にメトトレキサートで治療目標が達成できない場合や、疾患活動性が高い、びらんが早い、リウマトイド因子が高いなどの予後不良因子がある場合は、アドオンとしてTNF阻害薬を考慮する場合があります。以前の研究では、コルチコステロイドと特定の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が、RA患者のISのリスクを1.5~2倍高める可能性があると報告されています。メトトレキサートとTNF阻害薬は、対照的に、虚血性脳卒中のリスク低減と関連しています。しかし、これらの薬剤は、感染症、疲労、および肝障害の潜在的なリスクと関連しています。標準治療に伴う副作用や衰弱を避けるため、漢方療法に望みを託す患者が現れました。

〇関節リウマチと漢方

最近の研究で、関節リウマチ(RA)の患者の約30%が中国の漢方薬を服用していることが明らかになりました。漢方方剤や生薬の一部からは、抗炎症作用が示されており、桂枝芍薬知母湯と乳香が含まれます。また、ライコウトウ、シマハスノハカズラ、および生姜も炎症を抑制する潜在能力が報告されています。これまでのところ、関節リウマチ患者の臨床症状の軽減および慢性炎症の管理の観点から、漢方製品(CHP)の効果を分析した研究が多く行われてきました。しかし、RA患者におけるIS(脳卒中)のリスクの低減とCHPの使用との関連性については、研究が不足しています。本研究では、CHPの使用と西洋医学(WM)の併用がRA患者におけるISのリスクとの関連性を評価するために、大規模な後ろ向きコホート研究を実施しました。

〇エビデンス

「補助的な漢方薬治療は関節リウマチ患者の虚血性脳卒中リスクを軽減する」

【目的】

関節リウマチ(RA)患者における虚血性脳卒中(IS)のリスクと、西洋医学(WM)と併用する漢方薬(CHP)の使用との関連を調査するために、レトロスペクティブ・コホート研究を実施した。

【方法】

データは、1997年から2011年の台湾の国民健康保険研究データベース(NHIRD)の受益者登録、入院・外来診療請求、大惨事のための登録から得たものであった。1997年から2010年の間に新たにRAと診断された患者を、RA診断後のCHPの併用の有無により、CHP群と非CHP群に分類した。1:1の頻度マッチングの結果、4,148人ずつのRA患者がCHP群と非CHP群に振り分けられた。

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