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第3話 最初の試練

「久しぶり〜髪切ったね!似合う」
「ありがと!いや暑いね」

そんな会話を交わしながらバスへと乗り込む。ガイドさんが点呼をとり、バスは定刻通りに新宿駅を出発した。

1年ぶりの再会で、お互いにライフスタイルが大きく変化していた。近況報告だけでも話は尽きない。夢中になって話していたが、しばらくして異変に気づく。

「バスの中暑くない?」

エアコンが効いているはずなのに、扇子で常に仰いでいなければやり過ごせないほどの暑さ。会話に熱中していたせいかと思ったが、周りを見回すとうちわやらパンフレットやらで仰いでいる人がほかにもいた。

「暑いですよね……エアコンは最大出力になってるんですけど……」ガイドさんも困惑している。幸いにも怒鳴ったり喚いたりする人はいないものの、次第に暑くなっていく車内に危機感がつのる。

どうやらこのバスのエアコンは壊れている。だが、長岡花火のために組まれたたくさんのバスツアーのため、どの営業所もバスは出払ってしまっている。代わりのバスは手配できそうにない。

休憩の回数を増やしながら現地まで向かうことになったが、正直なところ熱中症が多発する予感しかしない。

「一旦15分間休憩にします!」

自販機とトイレだけの小さなパーキングエリアに降り立つと、真夏の真っ昼間でありながら、外の風が涼しく感じたほどだった。

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