敗者 山竹宏・・・

「顧客の為のサービスを。」をモットーに営業所運営を続けていた3年後、本社から配属されていた副所長の経費不正使用、労働時間改ざん、交通事故隠しの内部告発書が、自分の机の上に置かれていた。若手の営業マンは悪気がなくても、労働時間の超過は起きてしまうし過密な時間での勤務、ましては他業種からの転職組には事故のリスクはついて回る。

営業所内の古株と、副所長は結託してそれらをパワーハラスメントを使い,自分に報告無くもみ消していた。そして荷物事故処理等の経費も流用されていた。

営業所毎に人事考課や査定が入るシステムだと、将来の事を考える役職はどうしても、マイナス査定に響く出来事は隠したい。

けれど、交通事故をその形でもみ消すとなると事故処理は営業マンの自腹、労働時間に至っては、他人のタコメーターを装着させたりと社内規定を逸脱した行為を「高査定」の為に平然と行われている事が告発文に詳細に書かれてあった。

営業マンは、TV・CMを見て入社してきた真面目な若手社員。

常日頃働きやすい会社を公言している会社でのこの反比例な出来事に愛社精神ゆえの告発であった。

自分は直ぐ、副所長の田中を呼びつけ事態を説明をさせたが,整合性の合わない回答を、驚く位不遜な態度で繰り返すだけで埒があかなかった。

自分は、業を煮やし直属の上司である支店長に、告発文を手に説明に出向いた。この頃には、安田支店長は上部組織である彼がその座を欲していた統括支社長に昇格されていた。

同じ建物の上部階に支社長室があるので、支店長へ報告を終えた自分は挨拶に出向いた。

「山竹君、今支店長から報告聞いたでぇ。お前何青臭い事で騒いどるんや?  ええか?営業マンの変わりなんぞなんぼでもおる。お前や副所長の変わりはおらんやろ?そんなん何処でももみ消し取る些細な事例や!下見とらんと上見て仕事せんかい。」

全く予想すらしていなかった叱責を安田支社長から喰らい

「安田さん、お客さんの為の会社その為には営業マンが安心して働ける組織である事と所長時代に何時も口を酸っぱく教えてくれたじゃないですか?」

「あんなぁ、山竹、何度も言て来たと思うけど、組織はあがってなんぼじゃ、わしの傘下の営業所の査定が下がるような、告発上げて何の得になるんじゃ?組織ん中で飛び出す杭は、がつんと打たれんでぇ」

全く取り合う気配無く

「支店長との会議があるさかい、話はこれで終わりや!ええか?もっと賢くならなあかんで本社にも外部にも漏れ取らんうちに、営業マンを上手に切捨てとくんやで。」

そう言って、事務員を引き連れ出て行ってしまった。

自分はこの不条理に「何故だ?」と強い怒りを感じながらどうすれば、勇気を出して告発した営業マンを守れるか考える為に営業所に戻った。


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