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JVを設立して2年が過ぎました。

こんにちは、LayerX/MDMの丸野です。

1年前に書いたこちらのブログのおかげで「ずんちゃずんちゃの人」と呼んでいただいたり、こちらのpodcastを聴いていただいた方から「バイカル湖に飛び込んだ人」とお褒めいただく機会があり、大変光栄だなぁ〜と思っております。

ずんちゃ ずんちゃ

本記事は【2022 春 LayerX Advent Calendar(概念) 】43日目の記事です。

私が今コミットしている「三井物産デジタル・アセットマネジメント(通称:MDM)」は、2020年4月に三井物産さんとLayerXが中心となって設立したJVで、有難いことにこの会社の立ち上げから関わらさせていただいております。

当時は「大企業とスタートアップのJVなんて、うまくいくの?」という冷めた声も少なからずあり「ぶっちゃけ会社や事業どうなんですか?」といったご質問もいただきます。

よい機会なので、立ち上げからの2年間を振り返ってみたいと思います。

最後に、今仕込んでいる新規事業についても少し紹介させていただきますので、ぜひ最後まで見ていただけると嬉しいです!

コロナ禍でスタート。4社JVがいきなりリモート!

会社のスタートは逆風から始まりました。
2020年4月に会社を設立して、いきなりの緊急事態宣言。

会社設立には様々な手続きがあり、設立後も働く環境を整えるために、様々な準備が必要です。

さらに、今でこそ正社員の方が増えてきましたが、当初は色々な株主からの出向者で成り立っていたため、オフラインで信頼関係ができる前からいきなりのリモートワークスタートになりました。

設立当初のガランとしたオフィス。椅子も4脚しかありませんw

しかしながら、LayerXコーポレートチームの心強いバックアップと、総合商社に居ながら4社目の会社立ち上げという異色の経歴を持つ社長の上野さんの圧倒的実務能力で、無事に会社が出来上がっていきます。

コミュニケーションの問題も、LayerXのslack(shared channel)に三井物産さん・SMBC日興証券さん・三井住友信託銀行さんの皆様にもご参加いただき、頻繁にコミュニケーションを取らせていただくことで何とかことなきを得ました。(大企業がslack等のツールを利用することは社内整理が本当に大変なので、おそらく裏側で壮絶な社内調整をしていただいたのではないかと推察します。本当に感謝しかないです。。。)

また、この頃、椅子のクオリティを巡って微笑ましくも壮絶な社内バトルが勃発するのですが、それはまたの機会にお話し致しましょう。

一旦Microsoft製品にフルベットしてみよう → 前言撤回

「効率的なアセマネ会社」を目指すにあたり「各種業務ツールを何にするか」はとてもホットなイシューです。

当時は「LayerX側で使っているものを押し付けるのは良くないよね、MDMの特性に合ったものを選んでいこう」という理念の下、「金融・不動産系だとWindowsの方がほとんどだし、Microsoft365に寄せるのはありだよね。(どっちみちExcelなどは絶対使うので、残りもパッケージでついてくるという意味で)お財布にも優しいし!」ということで、MSさんの製品を軸に、以下のような構成を取りました。

  • メール/予定表 → Outlook

  • 社内コミュニケーション→Teams

  • ビデオ会議→Teams

  • 議事録→OneNote

  • クラウドストレージ→box(一部sharepoint)

結論から言います。上記構成は数ヶ月で崩壊しました。

パフォーマンス(動作が重い)が主な理由で、一挙手一投足の生産性に拘るメンバーには、残念ながら上記構成はなじみませんでした。

他にも「ドキュメントは同時編集でガシガシブラウザで編集したい」「社外の人がTeamsを受け入れられない」などニーズ・要望があり、これらに答えるため、今は以下のような構成になっています。

  • メール/予定表 → Outlook(これは問題ないのでそのまま)

  • 社内コミュニケーション→Slack

  • ビデオ会議→ GoogleMeet, Zoom, Huddle(Slack), Teams

  • 議事録→Notion

  • クラウドストレージ→Google Workspace

こういった業務ツールの検討・移行はなかなか大変ですが、逆にいうと色々試せたことで、今がBetterであるという実感がありますし、今の構成に自信を持てるようになりました。今後もより良いツールが出てくると思いますが、朝令暮改の精神で見直していけるといいな〜と思っています。

ライセンス、6ヶ月で取る予定が・・・

MDMはアセマネ会社なので、金商法上の登録(ライセンス)が必要です。

MDMでは「第一種金融商品取引業」を始めとした複数の業登録を行なっていますが、これは本当に大変でした。

こういった事業をやりたい。そのために規程・規則を整備して、体制を整備して、当局・自主規制機関への説明・手続を行なっていくのですが、MDMの事業はあまり過去事例がないユニーク点もあったので、当初「6ヶ月で取れればいいね」といっていたライセンスは結果的に約1年半かかりました。

1つ反省できる点があるとすると「あれもやりたい、これもやりたい」ではなく「まずはミニマムスコープで」という姿勢が大事だな思いました。プロダクト開発と一緒ですね。少しでもこういったライセンスを取られる方の参考になれば幸いです!

全然アセットが買えない・・・からの反撃開始

いざ営業開始!という所で、また壁に立ちはだかります。

最初MDMは、プロ投資家様向けに不動産ファンドを組成する所からスタートしました。しかし、三井物産グループの看板はあるものの、
・実績もない新会社
・デジタル証券市場なんて本当に立ち上がるの?
などなど、新しいものだらけのMDMで初取引を実現するのは本当に大変でした。

その後、株主グループの皆様にも多大なサポートをいただき、何とか1つ目の案件組成ができてからは、実績が出てきたことでご理解いただける投資家様も増え、徐々に軌道に乗り始めました。

お陰様で最近は毎月のように新しいファンドを組成できており、本日もリリースを出させていただきました。2021年10月の営業開始から、気づけば約7ヶ月で運用資産総額は約700億円となりました。


プロ投資家様にオンラインで商品を提供するアハ体験

投資商品のご提供は未だに「温かみのある人力での営業」が中心です。特にMDMが得意とする不動産・インフラ等の商品であれば尚更です。

しかし、この構造があるが故に、営業側の都合(手間・コスト)で、投資を検討していただきたい全てのお客様に情報をご提供することが困難でした。

こういった課題を解決するべく、MDMでは「ALTERNA」というプロ投資家様向けの投資案件情報の配信サービスをリリースしました。

現在数十社のプロ投資家様にご登録いただいており「これだけ十分な情報開示がされていると、早く検討できるので有難い」などのコメントもいただいております。

また、ALTERNAを通じて成立したディールについても本日(!)発表しました。

まだまだ改善していきたいことが沢山ありますが、今後もより多くのお客様に良質な案件をご紹介できるようにしていきたいと思います!

エンジニアが約4割、どんどん進むデジタル化

MDMでは、アセマネ会社としては珍しく、メンバーの約4割がソフトウェアエンジニアです。(私のように「簡単なゲームくらいなら作れます!」というなんちゃってはもちろん除いていますw)

こちらの記事にも書かせていただいた通り、様々な非効率なアナログ業務のデジタル化が進んでいます。

例えば、こんな成果が出始めています。

  • パスワード付ZIPで届いた案件資料の解凍・保存・データ化が一瞬で完了

  • 案件受領〜簡易価格査定〜投資家様へのタッピングが最短数十分で完了

  • 数時間かけてやっていた物件テナントさんの反社チェックが半自動で完了


「金融・不動産のプロフェッショナルとソフトウェアエンジニアが日々議論しながら良いソフトウェアを作るとこんな感じになるんだ!」と身内ながら日々驚いています。

ついに個人投資家様向けの商品が

2021年度は、プロ投資家様向けだけでなく、個人投資家様向けの商品提供にチャレンジした年でもありました。

MDMでは以下の2案件をそれぞれSBI証券さん、野村證券さん経由で販売させていただきました。

※どちらもIRサイトで、商品を購入いただけるわけではありません

実際ローンチしてみると「こういう安定的な商品を待ってた!」「え?草津の温泉旅館に投資できるの!」など多くの反響をいただくことができました。有難い限りです。

立ち上がるデジタル証券市場

2021年度は多くのプロジェクトが立ち上がりました。
MDMも商品提供サイドとして、先ほどの2件のプロジェクト組成に関わりました。

日本全体で見ると、2021年度に有価証券届出書を出しているデジタル証券の公募案件は7件、募集金額は約73億円で、そのうち約72億円が不動産でした。
※あくまで個人で把握している範囲なので漏れがあるかもしれません。また募集額未定のものは0円で計算。集計時点は2022年3月末です。

以下のLIFULLさんの記事によると、2020年度の不特法型クラウドファンディングで60億円、株式投資型クラウドファンディングで9.2億円なので、デジタル証券での資金調達規模は初年度ベースでこれらを上回る規模となっております。

セカンダリ市場も、SBIさんが中心となって動いている大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)が2023年のデジタル証券PTS市場のローンチを予定していますし、日本証券取引所グループさん(JPX)も中期経営計画で2024年度中のデジタル証券市場の設立を公言しています。

今後も更に盛り上がっていきそうですが、MDMとしても主に商品提供サイドからこの市場を盛り上げていきたいな〜と思っております!

Project ZENIOKOSHI 始動。 眠れる2000兆円を社会に還流!

創業の時から掲げている経営理念。

ここまでMDMの2年間をざっと振り返ってきましたが、山あり谷ありながら、運用資産も増え、公募ファンドも実現し、今の所いい感じでこれているのではないかと思っています。

しかし、創業の時に打ち出した"「眠れる銭」を、Activateせよ"という経営理念を、どこまで実現できているでしょうか?

正直まだまだです。

少し話は変わりますが、私は非金融業界からこの領域に入ってきましたが、金融サービスのUXの悪さには本当にゲンナリしておりました。

終わらない口座開設、商品の情報もどこをどう見ればいいのかよくわからない、そもそもスマホ対応していない等・・・。皆さんも経験ありませんか?

もちろん「使いやすさなんて、大事じゃない!いつもの〇〇証券で買いたい」という方もいらっしゃるので、引き続き他の証券会社さんとも連携していきますが、個人の方が、本物の商品を、もっと簡単に、もっと便利に、もっと分かりやすく投資できるようなプロダクトの開発をスタートします。

MDMの特徴として、自分達でモノを見て、商品を作って、運用までやっちゃうという「一気通貫」があります。最近は使いやすいサービスも増えてきましたが、商品製造・サービス提供・アフターフォロー(運用)が一体となって最高のUXを提供する金融サービスは未だないと思っています。

解決したい問題は以下です。

  • 投資経験がある方もない方も安心して購入できる本物の商品を提供する

  • 金融あるあるの"負"を解消し、最高のUXをオンラインで提供する

このProjectをコードネーム「ZENIOKOSHI」と名づけました。

商品作り、プロダクト開発、体制整備、マーケティングなど色々とやるべきことは山積みですが、日本人の資産運用の課題の一丁目一番地を解決することで、MDMの経営理念である

「眠れる銭」を、Activateせよ。

を実現していきたいと思います!

一緒に働く仲間を募集中

この新規事業立上のため、全ポジションで採用を強化しております。
面白そうだなーと思っていただけたら一度カジュアルにお話しさせてください!


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