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『圕の大魔術師』司書のお仕事っ!!vol.2〜レファレンス編(A面)〜

あごたふです。noteの方では超個人的に大好きなマンガ作品を好き勝手な視点で楽しむというコンセプトのもと書き散らかしています。

今回も『圕(としょかん)の大魔術師』をちょっと変わった角度からコソコソお話ししていきたいと思います。

実は僕は普段、図書館で働いています。この作品に関してはリアル図書館員の視点から面白いと思ったポイントを書くことが多く、考察しがいのある重厚なストーリーに関してはあえて深掘りしません。そういったものを期待されている方には物足りないかもしれませんが、お楽しみいただければ。(考察系noteをご希望の方には最後にオススメのマガジンを貼っておきます。ぜひそちらをお楽しみください。)

以下ネタバレを含みます。作品を未読の方でコレから読む予定の方は一旦「戻る」を押すといいかもしれません。この作品は前知識なしで没入するのが丸いです。よろしくお願いします。

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今回のテーマは「レファレンス

今回のテーマはレファレンスです。(作中では、おでこがドヤ顔で「レファンス」と言っているアレです。)

図書館で働く司書は一体どうやって利用者の問いに応えているの?大変な仕事なの?(A面)とか、小難しいお話は抜きにしてレファレンス事例を元に親しみやすい話題から「絵本探し」をもっと楽しくするお話(B面)などを2部構成でお届けできればと思っています。(B面は後日公開予定です。)

レファレンスとは何か。またその難しさとは。

本題に行く前に、この世界の司書試験について一言。

ただの地獄ですよね。

僕も図書館員の端くれですので「司書資格」は取得している身ですが、もしもこの世界の住人だったら絶対に無理ゲーだったと思います。(ぶっちゃけ、日本の司書試験もコレくらいの難易度にした方が未来の図書館界にとっては絶対にプラスだと思っていますってのは内緒。)

そうなんです。シオたちはそれくらい難しいことをやらされていたのです。

わかりやすいのが一次試験と三次試験です。

この試験、内容が狂気。そりゃ発狂もします。あまりの難しさにリタイアする子も続出。果ては発狂して強制退室させられる受験者もいるわけです。

そんな中、後のカフナの卵である物語の主人公たちはというと。

バケモンかYO

コレは才能という一言では片付けられない状況と言わざるを得ません。人並みの努力では到達できない境地です。シオくん、こんな中で本当によく頑張ったなと。

それでもベテランカフナの試験官に言わせてみれば「日常の延長」でしかない、と。これくらいのことは呼吸をするのと等しいレベルでこなさなければ一人前の司書とは言えない。常人にはあまりにも厳しすぎる世界。

僕自身、この子たちと比べるとなんと教養のない浅はかな人間であることかと思い知らせれ、同じく司書を志す身としては恥ずかしさで穴があったら入りたいと思いながら読んでいました。(正座)

本題に戻します。「レファレンス」とは何か。改めて彼らの試験から分析してみましょう。

まず、レファレンスの本質とは何か。結論から言っちゃいます。

レファレンスとは、図書館に研究、学習、調査を目的として来館した利用者に対し必要とされる情報・資料となるものを検索し、提供し、時には回答することでそれらの補助をすることです。

知の宝庫である図書館には日々、様々な悩みを抱えた利用者、研究者、専門家といったありとあらゆる分野に長けた利用者までもが来館します。そういった千差万別な利用者たちに図書館員は対等な対応を求められるわけです。

(レファレンス小話:ちなみに。図書館員は原則、美術品の鑑定、人生相談、医療・健康相談、宿題・懸賞の答えを回答することはできません(調べ方のサポート、参考図書の案内に留めること))

対等な対応というのは同じ土俵に立って対話できるレベル(=同程度の知識を持ち合わせていること、コマの中では「そのモノの言葉を理解し」とあります)であることが重要なわけです。

例えば、家電屋の店員であれば家電商品の知識が必須です。来店する人は基本的に家電を買う目的しかないわけですから、家電屋の店員に野菜の知識は必要ないですよね。そういった仕事とは違い、図書館を訪れる来館者には学校の宿題のために必要な教材を探しに来る人もいれば、小説や雑誌が読みたい人もいます。研究者にとっては専門書や学術雑誌が必要なわけです。

しかし、ですよ。図書館にはあらゆる専門家が訪れるのです。

これらは世界を構築する分野のほんの一部です。(ちなみにこのコマは筆記試験で問われている試験範囲です。恐ろしいです。)

ありとあらゆる分野のエキスパートであることが人間にとって果たして可能なのでしょうか。最強の知の巨人たちが集結する図書館などおそらくありません。(いや、本当にないかはわかりませんが。海外の図書館の司書レベルは非常に高いと聞きますし。)

残念ながら司書も人間なので全知全能ではありません

レファレンスの定義としても、あくまで司書の役割は利用者の「補助をすること」に尽きます。

しかしそれは、裏を返せば利用者の携わるあらゆる分野を補助できるだけの素養が備わっていないといけないということです。理想像とは言え、司書になるには本来かなり高度なレベルを要求されるものなのです。

これを受けて、この世界で司書試験を受けるカフナの卵たちの反応をもう一度ご覧ください。試験内容の幅の広さに対し「広く浅いだけじゃない」と余裕の発言をしていますが、これが相当レベルの高いことであるのがわかります。

考えてみてください、試験を受ける個室には参考図書は見当たりませんでした。それはもう、彼らが課題図書を読むだけで問題が解けるほど、ありとあらゆる分野の必要最低限の教養を身につけているということなのです。

ここまで来て改めて、もう一度言わせてください。

バケモンかYO(本日2回目)

このように、司書のある種理想像とも言える姿を、泉光先生は強烈に描き切っているわけです。しかも、まだ若き登場人物たちにもその責務をしっかりと負わせているあたり、先生の司書という存在に対する期待や敬意のようなものが感じ取ることができ、個人的には超身が引き締まる思いで読んでいます。(勝手な解釈です)

一朝一夕で習得できるほど生易しいモノではない「司書の仕事」。どうやって日々、来館者の対応に臨んでいるの?という疑問をもった方も多いことでしょう。

実は、あるものが新米司書からベテラン司書にとって欠かせない強い味方となっているのです。

ここからは、その秘密に迫ってみます。

司書にとっての三種の神器「レファレンスブック」

それが、参考図書(レファレンスブック)です。司書にとっての三種の神器が一つ。

レファレンスブックとは何か。

(図書館情報学用語辞典)一部抜粋

参考図書ともいう.特定の情報を求めるときに使用し,全体を通読することは想定されていない.特色としては,〈1〉見出しのもとに各項目が簡潔に記述されている,〈2〉排列に特色があり,探索を容易にするために目次や索引に工夫がなされている,〈3〉冊子体であり,容易に持ち運びや利用ができる,などがあげられる.図書館では,レファレンスサービスを成り立たせるツールであり,レファレンスコレクションとして構築されている.現在では,レファレンスブックと同じ内容の著作が電子メディアで提供されるようになってきた.

今回は、主に調査における基本「ある事柄について調査するために必要な図書」と、「司書としての心構え」についてを物語と共に見ていきます。

三次試験は「書物への案内(レファンス)」。シオたち凸凹トリオ班の課題は、とある本の作られた年代と内容を導き出すことでした。シオとオウガはナチカの圧倒的知識量に助けられます

その知識をスタート地点として(これも十分すごいんですよ)、言語、書体、翻訳という順に課題の謎を紐解いていきます。その時に、彼らを助けたアイテム。それが参考図書である民語辞典や書体を調べる本(作中では明言されませんが書体字典のようなものだと思います)です。

利用者にとってのサポーターが図書館員なのであれば、図書館員をサポートするものが参考図書(レファレンスブック)なのです。みなさんが図書館にいった時に、おそらくあまり立ち寄らないであろう分厚い本しか並んでいないエリアにある本たちです。

利用者から与えられた問い(課題)に対し、どの角度から解答を導き出すか(または利用者自身が導き出すための道筋をどう示すか)そのスタート地点となる着眼点を得るためのあらゆる教養を身につける努力を司書は怠ってはいけないのです。ゴールまでの到達速度が段違いになるわけですから。若干面倒くさい性格をしていますが、ナチカ抜きにシオとオウガの合格はきっとなかったことでしょう。

しかし、時には近道を使うことも重要です。利用者は待ってはくれないのです。では、その近道とは何か。

それは、最初からわかる人に聞くことです。

凸凹トリオの制限時間内での解答が危ぶまれる場面で、シオの観察眼が導き出した行動が、まさにそのことを体現しています。

ラコタ族のアヤちゃんに聞く!

ちなみに筆者推しの子です。(クールビューティーなのに時々天然なのが最高に可愛い)

ちなみに筆者推しの子です。(重要なことなので2回いいm…)

受験生の中で首席の成績を収めるほどの実力者である彼女は、自分の公用語であるラコタ語の知識を網羅しており、シオに対し即座に解答を提示することができました。

調査過程のショートカットに成功したシオでしたが、この行動に対し真面目慎重派のナチカは愚かな行為だと彼を責めます

しかし、結果はどうだったでしょうか。試験官はその行為にペナルティを課すことはなかったのです。実はこの三次試験、あらゆる不備を設けて全員失格になるよう意図的に設計されていた課題だったのです。

司書にとって利用者の求めるものに対して解答を提示すること、もしくは解答までに必要な道筋を示すための本まで辿り着くこと、それは使命なのです。何よりも、そのためにできることは手を尽くすのが当然。現実では時にGoogle先生に頼ることだってあります。アヤのように人そのものがレファレンスブックになり得ることもあるわけです。

仲間の中には、目の前の利用者に対し自分よりも有効な武器を持っている司書がいるかもしれません。目の前の利用者に対する役割を理解して動けるかどうか、その判断こそが大事なのです。

よって、シオがとった行動は間違っていなかったのです。

あらゆる分野に秀でた司書が図書館に集えば、それだけ利用者から信頼される図書館に育ちます。だからこそ、個人があらゆる分野に秀でることは難しくとも、司書は自分には何ができるのか、また何もないのであればこれから何を主題に持って学んでいくべきなのかを常に問いながら生きていくことが大事になってきます。(精進します)

餅は餅屋。マンガは「アル」です。(ちゃっかり、アルを挟む悪い子)

みなさんは図書館に行きますか?ネット環境さえあればありとあらゆる情報が手に入る時代。本当に必要な情報は手に入れられましたか?精査してみましたか?

図書館にはあなたの知らない、情報世界への扉のが眠っているかもしれません。

スマホを捨てよ、図書館へ行こう。

次回、もう少し具体的に司書のお仕事をご紹介しようと思います。

司書のお仕事っ!!vol.2〜レファレンス編(B面)実務の事例紹介「絵本探しをもっと面白く」は後日公開いたします。お楽しみに。

最後に、司書講習の時にお世話になった参考図書をご紹介。この本マジですごかった。レポートを作成する際に重宝する超絶実用的レファ本です。

ここまで読んでくださり本当にありがとうございました。バイバイ。

📙📘 【番宣】 📕📗

ライターの先輩「旅するタコ」さん(@Takosan_ha_umai)編集長率いる同作品をさらに楽しむマガジン(通称タコマガ🐙)に寄稿しております。

同じく先輩のおがさん(@basil_ko84)、もり氏さん(@morishi0522)も独自の視点でガチ考察を寄稿されており、より作品を楽しめるマガジンとなっています。

まさに『圕(としょかん)の大魔術師』を紐解くレファレンスブックならぬレファレンスマガジン!ぜひ、ご堪能ください!

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