2019-12月号-レポSpaceAppsChallengeOSAKA-集合写真

Space Apps Challenge OSAKA

2019年10月19日~20日、大阪工業大学梅田キャンパスにてNASA公式ハッカソン「Space Apps Challenge Osaka」が開催されました。今回、主催者様から宇宙メルマガTHE VOYAGEからも『THE VOYAGE賞』を授与する機会を得ることができ、この度、THE VOYAGE賞を受賞されたチーム【夢想エンジニア集団】にてチームを牽引された、リーダーの五十里翔吾様にご寄稿頂きました。

チーム一丸となって濃密な2日間をかけ作り上げた内容を、メルマガに掲載する権利として「THE VOYAGE賞」を受賞されたほか、「レヴィ賞」「UMEDAI賞」も受賞された【夢想エンジニア集団】どのようなプレゼンだったのか、皆さまにお届けします!!

今回、日本で開催された【Space Apps Challenge】は全国6会場で開催され、そこからグローバル進出チームに選ばれたチームが世界各国から進出したチームと共にグローバル審査を受けています。12月末には世界のTop30が選出され、2020年1月にはグローバルウィナーの6チームが発表となります。 大阪会場から選出されたチームおよび、日本から参戦されたチームに期待したいですね!


<編集部を代表して編集長からのメッセージ>

宇宙メルマガTHE VOYAGEは宇宙に想いをはせるひとときを、メルマガを通してお届けしたいという趣旨のもと、毎号読者の皆さまにメルマガを配信しています。 「THE VOYAGE賞」の選出の決め手は、まさにそこにあります。

【夢想エンジニア集団】のコンセプトをお聞きした際、自分の声で選ばれた場所に自分の花が咲いている…その花は夜空のどのあたりにある惑星で、どのような色に見え花を咲かせているだろうか…と、夜空を見上げ宇宙に想いをはせる…そんなひとときをまさに作り出し、日々の生活の中に宇宙を身近に感じられるのではないだろうか… それはTHE VOYAGEとも共鳴するところではないだろうか…ということで「THE VOYAGE賞」を贈らせて頂いた次第です。

読者の皆さまにも「THE VOYAGE賞」を受賞された作品についても、ご感想など頂けると大変ありがたいです。どうぞご一読ください。 また、今回「Space Apps Challenge Osaka」にて最優秀賞を受賞したチーム【Power of Power】と、優秀賞を受賞したチーム【ENMEI-エンメイ】の代表者様からも、ハッカソンでのプレゼン内容をコンパクトにご紹介頂けることとなりましたので、そちらもどうぞご一読ください。


THE VOYAGE賞 夢想エンジニア集団

★はじめに
本稿は、2019年10月20日~21日に渡って開催されたハッカソン"Space Apps Challenge Osaka"の参加レポートである。筆者の所属したチーム〈夢想エンジニア集団〉は、「宇宙にあなただけの花を咲かせよう」というスローガンを掲げ発表した作品"Blooming on Your Planet"によってTHE VOYAGE様より賞をいただき、筆者は本稿の執筆の機会を得た。

★夢想エンジニア集団、発足
筆者は"Space Apps Challenge Osaka"以前にはハッカソンに参加した経験はなかった。技術にも自信がなかったので、なんらかのアイデアを持ち込むことでとりあえず場に溶けこもうと思い、行きの電車で頭をひねった。寝ぼけまなこの御堂筋線で、少し前に読み直した『星の王子さま』にこんなセリフがあるのを思い出した。「(前略)どこかの星に咲いている花が好きになったら、夜の空を見ることが嬉しくなる。ぜんぶの星に花が咲く」

大切な星があるから、星空全部が好きになる。このような考えを、何らかの形で表現できればいいと思った。

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そして、チームビルド前のアイスブレイク時間に筆者は「宇宙に花を咲かせられるサービスを作ろう!」と提案した。「どこかの星に、その人だけの花が咲いている」という想像力を掻き立てて、自然の夜空を見上げてしまうような気持ちにさせるアプリケーションを作ろうということだ。すると、アイデアを面白がってくれた数人が筆者のチームに参加すると宣言してくれた。そうこうして、筆者らのチームが結成された。

★アイデアの詳細
筆者らのチームが提案したアプリケーションは、生成モデルを利用したシミュレーション形式の育成ゲームである。

その詳細を以下に示す。あなたはアプリケーション上で種子を選択し、その種子に音声で言葉を込めることができる。すると、システムはあなたの発話に込められた気持ちを推測する。具体的には、その発話の非言語的情報から機械学習によって発話者の感情をラッセル環上にプロットする。得られた感情の情報に対応して、居住可能(habitable)惑星が一つ選択される。システムはその惑星上で、選択した種子からどのような花が咲きうるのかをあなたに提示する。このとき、花を生成するモデルには、地球上の環境において、どのような種子が、どのような環境の下で、どのような花を咲かせるのかを学習させた敵対的生成ネットワーク(GAN)を用いる。学習済みのネットワークに、あなたが選んだ種子、システムによって選ばれた居住可能惑星の環境情報を入力し、花の3Dモデルを取得する。

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以上のようなアルゴリズムによって生成した花が、宇宙のどこかにある惑星に咲いているのだという視覚的なイメージをアプリケーション上に提示する。さらに、同じ星にほかの人が咲かせた花や、そこに込められた音声メッセージを見聞きすることができる。

大切なのは以下の点である。花はあなただけの花であること。星は、あなたの気持ちによって選ばれる。そして、同じ気持ちを持つ人と繋がることができる。そして、その繋がりは、言語によってではなく気持ちによって生成する。

★何が伝えたかったのか、その意義
何か自分の世界に意味を与えてくれる存在を見つけられたならば、星空だけではなく、世界も輝いて見えるはずだ。夜空の一等星も、町ですれ違う他人も、宇宙の構成物という点では同じではないだろうか。

もちろん、たかが一つのアプリケーションが提供するイメージが「何か自分の世界に意味を与えてくれる存在」になるとは思っていない。しかし、「夜空を見上げる」ことは、そのような存在と出会う可能性を広げるきっかけや心構えをもたらすのに十分な経験となりえる。

ちょっとした想像力が素晴らしい出会いを呼び、世界を少し深く思いやるようになる。そして、その輪が広がることで世界がもっと良いものになっていく。そのようなポジティブな連鎖を引き起こすことを、少しでも促進しうるような情報技術のあり方を提案したかったのである。

2019-12月号-レポSpaceAppsChallengeOSAKA-夢想エンジニア集団

★自己紹介
五十里翔吾(いかりしょうご)
大阪大学基礎工学部 知能ロボット学研究室
ロボットによる人間同士のコミュニケーションの円滑化や、情報技術を用いた創造的な場づくりといったテーマに関心がある。大学では美術部、哲学研究会に所属。

最優秀賞 POWER OF POWER

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私たちのチームでは、近年深刻になってきている宇宙ゴミの問題をもっと広く知ってもらいたいと考え、宇宙ゴミをテーマにしたパソコンゲームを開発しました。

ルールは簡単で、ロケットを動かし、周りから飛んでくる無数の宇宙ゴミを避けるだけ。つい夢中になって遊んでもらえるよう、少し難しめに作りました。さらに、ただ遊ぶだけではなく、楽しみながら宇宙ゴミについて学んでもらえるよう、細かいところに色々と工夫を凝らしました。

例えば、宇宙ゴミには壊れた人工衛星やロケットのパーツ、それらの破片など様々な種類があるので、宇宙ゴミにぶつかってしまうと、ゲームオーバーになるだけではなく、ぶつかった宇宙ゴミのデータ(どんな種類か、どこから打ち上げられたかなど)が表示されるようになっています。

このデータはでたらめなものではなく、NASAが公開している実際の宇宙ゴミのデータを利用しました。また、メンバーがデザインした、宇宙ゴミを擬人化したオリジナルキャラクターも登場するので、宇宙ゴミを身近に感じてもらえるようになっていると思います。

このゲームはweb上に公開されていて誰でも遊べるようになっているので、ぜひ多くの人に楽しんで欲しいです。

ゲームへのリンク: https://hideyasu.github.io/pop/

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優秀賞 ENMEI - Prolonging Life -



Apollo 11号による人類の月面着陸が実現されてから半世紀。今や、官民ともに宇宙へのアウトリーチは日々勢いを増し、人が地球の外へ行く時代もさしせまっています。しかし、宇宙でも地上と同じく病気や怪我はつきものです。

そこで我々が注目したのが宇宙点滴です。NASAによると宇宙で想定される病気、怪我の4分の1で点滴装置が必要とされています。しかし、地上の点滴装置をそのまま宇宙に持っていくわけにはいきません。重力を利用して機能している地上の点滴装置は、無重力空間では使い物にならないからです。実のところ、NASAの宇宙実験でも点滴装置の実装はほとんど行われていません。

そこで我々が考案したのがコンパクトでポータブルな宇宙点滴装置―ENMEI―です。エアタンクが組み込まれたインフュ―ザーポンプにより小型化が可能になり、ウェアラブルな装置となっているため、患者も大型機械につながれて動きを束縛されることはなく、自由に動き回ることができます。

この技術は地上の医療でも点滴棒が不要になり動作範囲も広がることで患者の精神的苦痛が軽減されるなど有意に還元されます。また、この点滴装置により宇宙での臨床研究も飛躍的に進歩すると思われます。


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