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宇宙の商業利用時代の幕開け

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先月に引き続き、GITAIの田口です。今回は日本の宇宙業界について、そして我々の事業について説明させていただきます。
私が新卒として就職活動をしていた頃(2004年)は、就職先で「宇宙」と言えばJAXA(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構、旧宇宙開発事業団)でした。しかしその風景はガラリと変わりました。アメリカのNASAがいち早く手掛けたのですが、今まで国主導で行っていた宇宙開発を、民間事業者をより積極的に活用しよう、と流れが変わりました。有名どころで言えば、電気自動車TESLAのイーロン・マスク社長が立ち上げたロケット会社SpaceX(ZOZOTOWNの前澤元社長が、月への切符を購入したことでも話題になりました)、Amazonのジェフ・ベゾス社長が立ち上げたロケット及び月面開発のBlue Origin、宇宙から世界のあらゆる所を網羅したインターネットを提供しようとしているOneWeb(SoftBankが2000億円も出資していることで国内でも話題に)などなど。そして10年ほど遅れて、日本にもその流れが訪れています。特にこの2年で、日本の宇宙業界が大いに盛り上がっています。いくつか例を挙げますと、宇宙ゴミ回収サービスのAstroscale社(累計資金調達額 約155億円)、電波による地球観測衛星を開発・製造し、それらがもたらすデータを活用したサービス提供のSynspective社(同109億円)、月への輸送サービスと月資源活用のispace社(同103.5億円)、可視光による地球観測衛星を既に打上げ、サービス事業(AxelGlobe)も立ち上がっているAxelspace社(同50.6億円)、人工流れ星による宇宙エンターテインメント事業のALE社(同約28億円)。このように、それなりの額の資金調達に成功している民間宇宙スタートアップが既に複数社あります。宇宙で働きたければ、選択肢がいくつもある良い時代になりました。
そんな中、2016年7月に創業した我々GITAIは、今までに累計約6億円、当面のロボット開発と事業資金の調達に成功しています。そしてこの資金を元に、GITAIの第一目標、「国際宇宙ステーション(ISS)に向けてGITAIのロボットを打上げる」ことに一堂邁進しております。

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ISS建設完成直後、Space ShuttleからISSを見下ろした様子

THE VOYAGE読者の皆さんなら、ISS(= International Space Station)のことはよくご存知でしょうが、念の為簡単な説明をさせていただきます。ISSはJAXA(日本)、NASA(アメリカ)、ROSCOSMOS(ロシア)、ESA(欧州)、CSA(カナダ)が中心となり、15ヵ国によって共同運営されている、有人の宇宙ステーションです。1998年末からその建設が始まり、13年かけて2011年に完成しました。大きさは全長73m × 全幅108.5mと、ちょうどサッカーグラウンドと同じくらいの広さです。と言いつつも、面積のほとんどが太陽電池パネルなので、人間が生存できる居住区は1割も無いです。総重量約344トンの巨大な構造物が、高度400km(せいぜい東京-京都間の距離です)、時速28,000km(秒速8km、90分で地球を一周します)で地球の周りをぐるぐる飛んでいます。そこには現在、常時3人以上の宇宙飛行士が滞在しているのですが、その滞在費を含めたISSの運用費には、莫大なコストがかかっていることはご存知でしょうか?
例えば、人間1人をISSに打上げるには、約55億円もかかります。まだまだ「旅行」と言えるレベルの気軽さでは無いですね(^_^;) そして1人の人間がISSで1時間(1「時間」ですよ!)生活する為には、約550万円かかると言われています(これには打上げコストも含まれています)。よって、人間1人がISSに行って1年間生活するには、約480億円かかる計算になります。一方で、例えば50kgのロボットをISSに打ち上げた場合、JAXA経由でしたら約1.7億円、1時間の運用コストを55万円(GITAIの目標が、作業コストを人間の10分の1、最終的には100分の1まで下げることを目指しています)とすると、ロボットを1年間ISSで働かせるには約50億円かかることになります(最終目標達成なら約6.5億円!しかも24時間作業可能*)。また一度打上げたロボットは、最低2年間は活動し続けられるよう、現在開発を進めています。よって、宇宙飛行士の入れ替えや、水・食料など物資の補給に必要なロケットの打上げ回数も、減らせることが可能になります。これらを考慮すると、GITAIが目指しているロボットをISSに打上げられた場合、ISS運用費の莫大なコストカットが可能になります。これでは国家が喜ぶだけで、皆さんに直接関係無いように思えるかもしれませんが、実は民間企業も大喜び!という時代が来ようとしています。
現在NASAが先頭を切って、地球低軌道(LEO = Low Earth Orbit)の民間商業利用が促進されようとしています。宇宙への移動コストが下がってきたことによって、宇宙の商業利用が現実味を帯びてきた、と調査研究の結果NASAが判断しています。この調査研究によると、民間独自のLEO商業宇宙ステーションを運用しても充分な利益が見込めるほどの、民間による宇宙実験や宇宙製造の需要があることが分かりました(参考:Study Input Informs NASA Course for a Vibrant Future Commercial Space Economy)。その例として挙がっているのが光ファイバーの一種であるZBLAN(参考:https://en.wikipedia.org/wiki/ZBLAN)の宇宙製造です。

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LEO商業宇宙ステーションの一例(Nanoracks社のウェブサイトより)

一方で、それら民間LEO商業宇宙ステーションでの各種作業を引き続き人間が行っていては、作業コストがいつまで経っても安くなることがなく、民需による宇宙の商業利用を呼び込むことができません。この問題を解決する決定打が自動化・ロボット化であり、それを実現する為の手段の提供を、GITAIは目指しています。そして一度微小重力空間でのGITAIロボットの実用性が証明できれば、過酷な船外環境、月面、そして火星へとその活躍の場を拡げてゆきます。私が退職する頃には、「宇宙ロボットと言えばGITAI」という時代が来ていることでしょう。
そしてまさに今、我々はアメリカの民間宇宙企業と、GITAIロボットのISS実証を話し合っているところです。早ければ2020年末には、GITAIのロボットがISSで動いているかもしれません!宇宙の商業利用時代の幕開けとなる、「商業宇宙ロボットの宇宙実証」という歴史の転換点を、皆さんが証人となってご覧になってください!それが実現できるよう、GITAIの活動を温かく見守ってくださるよう、皆さん何卒よろしくお願いしますm(_ _)m

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ソフトバッグのジッパーを開けるGITAIロボット*遠隔操作ロボットなので、オペレータ(操縦者)は地球上にいることを想定しています。



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兵庫県出身の43歳。5回の転職を経て、現在GITAI Japanで事業開発を担当。一年中宇宙とアメフトに燃えている。趣味はアメフト、筋トレ、旅行、星空散歩、楽器演奏、囲碁。うどん、広島風お好み焼き(スジ)、江戸前寿司、ステーキ、ピザ(New York Style)、牛乳をこよなく愛する。夢は宇宙飛行士。

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