危険やトラブルの予測と対策

この仕事を通して、“予め問題の芽を摘んでおく”意識が育ちました。まだまだだとは感じていますが、“もし、こんな状況が発生したら”“こういう場合、人はどんな行動を取るだろうか”といったことを想像して、起こりうる危険やトラブルの回避のために、時間がある時に、調べたり対応を依頼したりして、手を打っておくのです。

以前、他物件に暫くヘルプに入った際、常駐のマンションでもないし、そこまで頑張らなくても、または、常駐勤務のコンシェルジュが嫌な顔をするかも、と思いつつ、やはり気になって、対応を検討したことがあります。

マンションにもいろいろな形がありますが、私が一時勤務していたその物件は、下階はずっと企業が入っていて、上階のみ居住区という建物でした。使用エリアの棲み分けが必要なため、建物内で共用の非常階段へ通じる扉は、廊下側からしか開かず、開いて閉じた後はロックされてしまう、という仕組みになっていました。非常時避難用のため、途中階は全て素通りし、地上階まで階段を降りることが想定されているからです。

ただ、ご入居者へその構造が十分に周知されているかというと、全くそうは感じられない状況でした。ちょっと階段で降りてみようか、と開けて閉めたら最後、もう廊下へは戻れません。下に1フロア降りて扉を開けようとしても、ロックされていて開かない、さらに1フロア降りても、さらに1フロア降りても出られない、と繰り返すうちに、焦ってパニックになってしまう。

フロントが閉まっている時間帯の、問合せ対応部署のコールセンターからの報告で、夜中の間に、ご入居者の男性が非常階段に閉じ込められた、と連絡が入ったことを知りました。幸い携帯電話を持って出られていたため、お部屋にお電話し、奥様からコールセンターへ相談ができたようです。

小さいお子さんが何人もお住まいですし、もし興味本位で開けて中に入り、連絡手段がなかったら。土日となると企業もお休みになります。泣き叫んでも、誰も助けてくれなかったら。トラウマになってもおかしくないと、想像しただけで怖くなってしまいました。

さらに、非常階段は他にもあり、その扉の開施錠は防災センターで管理されているなど、複雑な建物構造で、以前から気になっていました。最終的に、こういう内容の掲示が必要と思う、と意見を挙げ、景観を崩さないようなデザインで、文言も簡潔に、といったことを考慮に入れ、非常階段へ通じるドアの表と裏に、マグネットシートを貼って案内することになりました。

つくづく思うのは、こういったことは、いろんな人の目で見て考えるべきだな、ということです。どこでどんな対応が必要か、といったことは、1人ではなかなか発見・行動に移しづらく、人に言われてハッとすることが、よくあるからです。

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