トラペジウムを読んだよー
高校一年の東ゆうは、どうしてもアイドルになりたかった。
「この学校に友達が欲しいだけなんです」
地方の、ただの女子高生がアイドルを目指す。オーディションは受けない。自分でプロデュースして、メディアに見つけてもらう。
そのために彼女は聖南テネリタス女学院に来ていた。
飛びっきりの美少女を、地元の、しかも東西南北の各校から1人ずつスカウトしてアイドルグループを作るために。
「諦めたくても、諦められないんだ。」
トラペジウムとはオリオンの星団。ラテン語で台形を意味する言葉。これは光り輝く4人を見つけて、集めて、そして見つけてもらうための物語。
これは青春を持続させる難しさの小説。
ぼくは乃木坂にあまり詳しくありませんが、高山一実さんについては少し知っています。乃木坂5期という設定で僕に電話をかけてくる変質者の友人がよく彼女の話をするからです。
「上久保くん!ケータリング好きに食べていいからねー笑」
5期生である彼が、多忙な1期生の高山一実さんに声をかけてもらったのはその一回きりらしいですが、よほど嬉しかったのかその時の話を何度も僕にします
「3期4期には完全に怯えられてるし、特に梅澤さんは俺のこと嫌ってるしで居場所がなかった時に声をかけてくれたのが高山さんや」
「5期の俺を認知してくれて、優しく接してくれた!高山さんは俺にも優しい!」
「高山一実さんが卒業してしまう。俺にも優しかった数少ない先輩やのに。」
「高山さんは素敵なお姉さんや。。。」
こうして、僕の中には虚像に似た高山一実象が出来上がっているのです。
姉御肌で、分け隔てなく人に接する大人な女性。僕の中の高山一実さん象はそんな感じです
そんな姉御肌の高山さんが書いたトラペジウムが200円で売られていたので手に取って読んでみました。
中身は直球のジュブナイル小説で、刺さる人には刺さるかもなぁ。という感じでした
この小説が面白かったのは、僕がいままで曖昧に想像していた、アイドルがアイドルであろうとする努力と苦痛。それが赤裸々に、しかも現役のアイドルの言葉で書かれていたことです。
アイドルになるということは、畢竟人間らしさを削いでいくとだと思います
めちゃくちゃ可愛くて性格が良くて悪口も言わず少食でうんこをしない、交際経験もデジタルタトゥーもない処女の完璧美少女。
神への供物として焼かれる、あるいは湖に沈められるような村一番の処女を、現代ではアイドルと呼称するのです。
オタクの欲求を詰め込んだ偶像に生身の人間がどこまで漸近出来るか。それがアイドルになるということであり、彼女らが背負わされる職責であり十字架だと思います
しかも、偶像へと自分を置き換えていく苦悩を語ることは許されません。
生まれながらのアイドルなんていない。それを分かっていながらその存在を心から信じるオタク達が悲しむからです。
不在を確信しながらも存在を信じ込める。二重思考が得意なオタク達が。
交際なんぞが発覚すればウィッカーマンよろしくの大炎上です。
交際、そしてそれに付随するセックスは最も人間らしい行動で、最もアイドルから遠い行動です。不特定多数の総体に向けられるべき愛情が特定の誰かに独占されている。
オタクはそこに裏切りを感じます。
御託を並べましたが、これは単純な小説です。純粋にアイドルになりたかった少女と、純粋ゆえ歪んだオタクのアイドルへの欲求。
アイドルをマクガフィンに翻弄される少女の小説
アイドルという虚像、それを演じる職業としてのアイドル。そんな職業アイドルの苦悩が高山一実という現役トップアイドルの筆記で語られるこの小説はマジで高山一実にしか書けません
アイドルが嫌いな人も読め。
そしてアイドルを叩くのを辞めろ。愛でろ。
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