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鳥!脅威の知能(その1) [2020読了本]

ここのところ仕事関連の本を中心に読んでいたので,ひさしぶりに趣味に走って鳥の本を読んでみることにしました(ペンギンが大好きなので🐧)。ブルーバックスの「鳥!」というタイトルからそそるわけなのですが,息抜きがてらのつもりが,これはとんでもない良書でした。

あまり知られていない驚異の鳥の能力を本書から少しだけご紹介したいと思います。最初は1つの記事で纏められるかな,と思っていたのですが,そうは問屋が卸さないのです。ご紹介したい情報が数多詰め込まれておりましたので,いくつかの記事に分けて行きたいと思います。

ただ,本書全体を通して感じた個人的な見解としては,鳥全体の驚異の知能は,それでも人の思考の柔軟性や対応力に迫るものではないと思います。人間のオールマイティさといったら半端ないですからね。個々の鳥が有するスーパーパワーのそれぞれには,人も驚きの内容が隠されていた!という感じでした。といっても,すごいですよ,本当に。

というわけで「その1」の今回は,鳥のIQについて事を纏めていきます。それではどうぞ,驚異の鳥ワールドをお楽しみください。

1:いわゆる鳥頭、じゃない

西原先生の名著「鳥頭紀行」。お題目の通り,鳥頭とは,どこへ行っても三歩で忘れる,ことを表す言葉です。鶏も「三歩歩けば,すぐ忘れる」と言いますよね。

しかし,近年,驚くべきスピードで新たな研究成果が提出されており,こうした鳥類への言われなき低評価はそろそろ改めるべきなのかもしれません。むしろ鳥の方がすごい能力を持っているわけです。

進化の分岐点: 人と鳥とが進化の過程で分岐したのは3億年も前のことです。興味深いのは,それぞれ独自の進化を遂げたはずの生物が,似通った遺伝子や神経回路を有しているという事実です。これを収斂進化と呼ぶそうです。

たとえば,鳥には「自己」があり,相手を「だまし」もします。人と同じようにです。従来こうした高度な知能を持つ生物は,哺乳類のなかでも特に大型類人猿やゾウ,イルカなどに限られると思われてきました。

そもそも,「知能」という概念は,非常に捉えどころがないものです。下記の本文からの引用は,そのイメージを的確に表しています。

知能とは知能検査で測られるものだ」と述べた、ハーヴァード大学の心理学者エドウィン・ボーリングの循環論法に近い。タフツ大学の元学長ロバート・スタンバーグも言うように、「知能の定義は専門家の数ほどある」ということだ。

たとえば,イギリスではシジュウカラアオガラという鳥が,早朝に各家庭の玄関に届く牛乳瓶の蓋をあけて,上層のおいしいクリームを食べることを覚えたそうです。しかもこれが町中,そして国中の鳥たちに伝播した,というのですから,鳥の驚異的な社会的学習能力を示しています。

自然界における成功とは?: 下記ツイートは,最近バズったばかりのものですが,学校の先生的には「子孫を残すため」が正解なのでしょう。実際問題,この問題はすごく哲学的だと思うんですけどね笑

さて,話を本筋に戻し,「子孫を残すこと」が生物としての本懐であるならば,数の多さと世界の何処にでも種を広げることが,その指標になるはずです。20世紀の末に,ある科学者が地球上にいる野鳥の総数を推測したところ,2000億から4000億羽という結果になったそうです。人一人当たり30~60羽です。

この結果は野鳥の数なので牛や豚,鶏のように「家畜として反映した」という皮肉的な状況ではありません(このあたりの話はホモ・デウスという本を読むと面白いです!)。鳥は飛んでどこでも行けますので,自力で拡散する力は人間よりも優れていると言えます。そう考えると,鳥の方が反映している,といえるかも知れませんね。

収斂進化: 鳥たちの行動特徴は,驚くほど人のそれと類似しています。鳥と人とでは,体形の違いは見ればすぐわかるほどの違いを有していますが,それでも自然の中での問題対処方略は,人と鳥とでとても類似しているのです。

かのダーウィンは鳥のさえずりを「言語に一番近い」と述べたそうです。それぞれが異なった進化の過程の中で獲得してきた学習に関わる遺伝子発現パターンが,驚くべき類似性を持っていたと考えられるわけです。

それでは,時に人と類似した,時に人を凌駕する驚異の鳥の能力を個別に紐解いていきたいと思います。

2:リアル鳥頭は、驚異的な知能

知能様々: 2014年にBBC放送が,8段階の難しいパズルを素早く解決する「007」というカレドニアカラスを紹介しました(下記動画)。餌を手に入れるために,3つの小石を利用して長い棒をゲットしなければいけないのですが,ジェームズボンドよろしく謎を解いてしまったわけです。

こうした課題には,餌をとるための道具の入手,というメタ的な認知を利用する必要があります。これだけでも,鳥の知能の高さを認識するには十分だと思います。

一方で,同じニューカレドニアに住む「カグー」という鳥は,ものすごくおばかで有名なんだそうです。個体数は数百とも言われる絶滅危惧種のカグーですが,なんと捕食者に向かって走ってきてしまうのだそうです。かわいいといえばかわいいですが・・・。

また,カリブ海のバルバドス島に生息するコクロムクドリモドキは,自分の餌が他の鳥に盗まれる可能性を判断できるそうです。これは費用便益分析という能力で,自分の行動が実行に値するかどうか否かを判断する能力なのだそうですよ。

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オナガクロムクドリモドキもなかなかすごい能力を持っているようです(下記リンクを参照ください)。

知能の捉え方: 一般に科学者は知能よりも「認知」を好みます。なぜかというと,認知は,学習や記憶,知覚,意思決定などのメカニズムを指すことばだからです。

従来,鳥の認知は「モジュールの集合」であると考えられてきました。つまり,目的ごとに特定の認知機能が個別に独立しているという感じです。しかし近年,鳥には何にでも汎用可能な一般的な認知能力があるのではないか,という考えにシフトしているのだとか。

これは,人間の知能理論のg因子という考えと似ているわけですが,脳科学的に翻訳すれば「問題の解決において動物の脳内の異なる領域が相互にネットワークを形成している」と表現できるかもしれません。

本書では,バルバドス島にすむバルバドスアカウソ(下記のツイート上)や近縁種のニショクコメワリ(下記のツイート下)の生態実験が詳しく紹介されています。遺伝的にはほとんど双子のような鳥ですが,アカウソは大胆不敵であり,ニショクコメワリは用心深く慎重なんだそうです。

しかし,鳥の知能もしくは認知実験は,まだまだ手探りの状態です。というか,実験にはどうしても限界が存在するため,ルフェーブルという研究者は野性環境での野鳥の認知能力測定の重要性を提唱しています。

必要とされているのは、実験室内での知能の指標ではなく、生態系の中での指標だと示唆した。知能は、動物が「新たな問題の答えを見つけたり、古い問題の新しい答えを見つけたりするために」自分の環境を新しくする能力に見て取れる、というのである。

逸話から知能の基準を作り出す: ルフェーブルは面白い研究に乗り出します。鳥たちの風変わりな逸話を収集し,これをベースに鳥たちのイノベーション指数を算出したのです。

逸話としてはたとえば,アザラシの乳を吸うカモメ,昆虫で魚釣りをするアメリカササゴイ,極めつけは地雷でガゼルを爆発させるハゲワシ(たまに巻き添え食って自分も地雷で吹き飛ばされたとか)などです。

ルフェーブルの基準で最も賢い鳥は,「カラス」です。次に,「オウム・インコ」。そして,ムクドリモドキ,猛禽類,キツツキ,サイチョウ,カモメ,カワセミと続きます(フクロウは夜行性なので対象から外しているそうです)。こうした賢さ上位組の鳥たちは,脳もより大きくなる傾向があるそうです。

現在は,単純に脳の大きさで物事を図るのではなく,その内部,つまりニューロンの働きをベースに研究が進んでいるそうです。フィールド研究と実験研究と細胞レベルの研究がつながることによって初めて,鳥の知能を丸裸に出来るのだと思います。

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今回はここまでとなります。続きが気になるところですが,すでに3,500字弱となっていますので,残りは次回の記事でご紹介したいと思います。

次回の記事が完成しましたら,リンクを貼り付けて公開します(追記:下記リンクから次の記事へどうぞお進みください)。

それでは長文にお付き合いいただきありがとうございました。


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コメント (3)
もうすごすぎて内容すっとびましたが、とりいそぎ『カグー』にハートを射止められた点と『鳥好きマガジン』に追加させてくださいのお知らせと事後報告です🐧
りあこさま,ありがとうございます🐧! 確かにカグーの愛らしさはキューピットの矢もビックリの精度で心を打ち抜きますね笑 そのお馬鹿さにも進化的な理由があるかも知れないと本書に記載されてあり,進化深いなぁと感じた次第です。マガジン追加,ありがとうございます!タマシギの回,震えました!これからも勉強させてもらいます^^
わーー!こちらこそ丁寧なご返信ありがとうございます!
お馬鹿さ=進化かも、ですか!なるほどうちのインコ♂もきっと進化だ(笑)
マガジンもさっそく見ていただき感謝です♪鳥好きさんnoteに出会いましたら、ぜひ教えてくださいませ(o^^o)
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