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非常事態宣言下での「展示会出展」の考え方

2021年1月9日から発令された東京他1都3県の非常事態宣言。この状況で、展示会に出展するべきか、中止すべきか、出展するならどのように考えればいいのか、悩まれている方も多いのではと思われます。

今回の記事では、出展に悩まれている方に向けて、また展示会を主催する立場の方、出展者に向き合っている設営会社の方等に向けて、この数か月の状況を見てきた上で私なりの考えを記載させていただきます。何らかの判断の基準にしていただければと思います。

1.前回の非常事態宣言時の展示会との違い

前回の緊急事態宣言との違いは、この数か月でどの展示会主催者もコロナ状況下での展示会開催の方法を確立してきているので、どの展示会主催者も「コロナ状況下での展示会開催方法」に良い意味で慣れており、会場はコロナ状況下での展示会開催方法に慣れていなかった前回に比べて、対策が既に取られている、ということが言えます。

現在の展示会は、どの主催者も昨年6月10日に日本展示会協会より出された「展示会業界におけるCOVID-19感染拡大予防ガイドライン」に基づいて運営されています。昨年、展示会は7月末の大阪より再開されましたが、この半年の間にどの展示会もこのガイドラインに則って計画を行い、その中で経験を積んできた、という現在の状況があります。

また、今回の非常事態宣言でのイベントの基準は「収容人数の50%」を上限に「最大5000人」となっていますが、BtoB商談会である展示会の場合、この基準値を超えることは、ほとんどない、というのが現実です。平常時でもこの基準以上に来場者が来てくれればかなりの大成功、と言える数字です。イベントと言っても、展示会はコンサートのような密なものではないので、その点をまず認識することも正しい判断のためには必要です。

2.主な傾向

さて、それでは非常事態宣言下での展示会が予定通り開催されたとして、会場にはどのような変化がみられるでしょうか。その予測としては下記の事項が考えられます。今回の非常事態宣言下での傾向の特徴としては、「展示会自体」は予定通りといったところが多い反面、出展者の躊躇が多く、来場者は展示会種別と企業規模によって分かれるところだと考えられます。

①「出展者」が減少する
②「来場者」が減少する

3.「出展者」が減少する傾向について

まず、出展者は間違いなく減って来ると思われます。既に当社のお客様も出展を取りやめたり縮小する企業様がいらっしゃいます。これは特に地方の企業様に傾向が強く、地方の方から見れば「東京は危険なところ」という印象が強くなってしまっているのだと思います。
ただ、出展者が減ること自体は、他の出展者に取って見れば基本的に、マイナスの要素にはならない、と言えます。先日、当社の知り合いのある出展者さんが話しておられました。「竹村さん、今がチャンスですよ! 他の出展社さんがいない分、みんな当社のブースに来てくれます!」、と。なるほど、と思いました。基本的な考え方として「出展者が減ること」自体は出展する他の企業にとって悪いことではない、と言えそうです。来場者さんが減ることと、出展者さんが減ることは別物で分けて考えなければいけない、とこの時感じました。

4.「来場者」が減少する傾向について

今回の緊急事態宣言によって、確かに来場者数も減ることは想像に難くないと思います。ただし、「来場者が減る→不利→出展はしない」と考えることは慎重に考えるべきです。
なぜなら、この数か月の状況を見てみると、来場者が少なくなる現象は「展示会よって分かれる」からです。言い方を変えれば「来場者の立場」によって変わってきます。例えば、商品の仕入れをしなければいけないバイヤーさんにとっては、展示会に行かないと、商品の効率的な仕入れができません。一方で、オフィスの人事管理ソフトといった「今すぐには必要のないもの」を扱う展示会の来場者の場合、特に今この状況で行く必要はないでしょう。
すなわち、今のこの状況下でも「行かなくてはいけない、といった来場者」はやはり展示会場には来るのです。そして「強いて今行かなくてもよい来場者」達は当然来なくなります。つまり、来場者が来ないから出展を取りやめよう、と一律に考えるのではなく、来場者にとって「会場に来る必要がある展示会かどうか」をまず考え、自身が出展しようとする展示会の質を見極めた上で出展の可否を判断しましょう。

さて、上記以外に、来場者が少なくなっている状況についての傾向を記載してみると以下の2点があります。

①地方の来場者は東京に来なくなる
このことは容易に想像ができることだと思います。ですが、いくつかの主催者の方にヒアリングすると、そもそもこの数か月はもともと地方の方はあまり東京の展示会には来られてなかったようです。今回の非常事態宣言によって、もちろん地方からの来場者は減りはするでしょうが、想像よりは変化がない、と言えるかもしれません。
②大手企業の来場者は会場に来なくなる
このことは今回大いに影響があると思われます。実際にこの数か月出展した当社のお客様からお聞きした感想としてもそのようです。どの展示会でも「やはり大手さんが少ないですね・・」と言われている出展者さんが複数ありました。今回の非常事態宣言でこの傾向はますます強まると予想できます。もちろん大手企業の全てがそうではなく、前述の通り、「会場に行く必要がある」来場者は大手企業であっても会場には来ているようです。


5.出展するか中止するか、その「判断基準」は?

それでは、上記のような状況の中で実際に出展をするか出展を見送るか、判断をする場合、もしこの記事を読まれている方が、企業の一担当者であるなら「コロナが危険だから」という理由だけで判断するべきではない、と考えます。また、複数の企業を取りまとめる地方自治体・支援機関の担当者の方にとっても同様のことが言えます。
展示会は出展する企業にとって、自社の「売上」を確保する重要な場所です。中止をしたが故に自社の財政状況が悪化して会社が倒産する、といった可能性も十分考えられます。出展するか中止するかは、下記の事項と合わせて総合的に判断するべきです。

基準1.出展をしなくても、自社の「売上」は大丈夫なのか

もちろん、上記だけでなく、実際に会場に向かう社員の安全も当然考えるべきです。

基準2.会場に向かう社員の安全性をどのように確保するか

上記基準1から、自社の経営上今回の出展が外せないものであり、かと言って社員の安全が不安という場合には、会場へ向かうスタッフを最小限にして、「半オンライン」で出展するという方法もあります。
展示会はそもそも自社の売上を確保するために出展するものです。出展を取り止める場合、自社の売上高つまりは最終的な決算状況までを踏まえた判断をしなければいけません。

6.「出展する」場合の出展のポイント

出展を決めた場合、このような状況下で出展をするからには確実に結果を出さなければいけません。そこで、展示の検討にあたっては以下のポイントを抑えることをお勧めします。これらは、当社がこの数か月間試してみて、実際に効果のあった方法です。

1.滞留時間を延ばす工夫を行う
来場者が少なくなるとどうしても、出展者が自社のブースに来なくなることも想定されます。これは上記「出展社が減少する傾向について」で記載した事項と矛盾するかもしれませんが、現実的に「魅力がないブース」や「立ち寄りにくい雰囲気が出ている」ブース等には、どんな状況であろうと来場者は寄ってはきません。また、「誰もいないブース」には立ち寄りにくいものです。そこで、自社ブースの中に常に来場者がいる状況を作り出すことは、出展の結果を出す上でかなり重要な要素になります。
2.会期前に事前営業を行い、事前アポを取っておく
できれば、会期前に営業活動を積極的に行い「次回〇月に開催される展示会に出展するので是非お立ち寄りください」といった事前アポを取りましょう。できれば、会期前には、会期中のある程度のアポが取れているのが理想的です。
3.出展方法を検討する
前述しましたが、状況によっては、出展の一部をオンラインにして、スタッフの数人は自社内からZOOM等で参加といった方法も考えられます。この「半オンライン」の方法については、当社がこの数か月に試したことがありますので、下記の記事を参照してください。


8.出展を取りやめる際の注意点

それでは、反対に「出展をとりやめる」ことにした場合、どんな点に注意をしたらいいのでしょうか。まず、ブースを木工で製作することを検討している場合、会期の2週間前には、木工部分が既に設営会社内では出来上がっていることが考えられます。もし会期の直前で出展取りやめを決めた場合、設営会社(装飾会社)には、事前に製作したもの(主に木工作業分)に対しての費用が発生してきます。加えて当社のようなデザイン会社に依頼していた場合、それまでのデザイン作業代(図面作成費等)が発生してくることになります。今回の緊急事態宣言下、多くの主催者さんが出展キャンセルの場合、キャンセル料は100%掛かってくる、といったことも業界内で聞いています。キャンセルするとすると早い段階で決断しなければ、通常通り出展したのと変わらない費用が掛かってくることになります。

①出展キャンセルでも、最大限の利益を取る工夫を行う
リードエグジビションさんなどは、キャンセルの場合でも「壁と床」が作ってください、との要望があるそうです。確かに主催者の方からすると、展示会全体の成功を考える上でのこの要望は必要、と私も感じます。そして、この場合でも壁と床さえ製作すれば、出展はキャンセルすることができます。しかし、私としては「せっかくキャンセルするにしても、最大限活用しましょう」とお伝えしたいと思います。床と壁を作るのであれば、会場にスタッフがいないのであれば、せめて「配布物」の工夫を行い、ブース内に大量に設置しておく。そして、来場者にそれらを自由に持って帰ってもらい、「認知度拡大」を狙います。その配布物から1件でも問い合わせが来れば、その出展は全くの無駄にはならないと思います。この考え方は、経営者ではない、一担当者であれば「その準備だけでも大変だから、だったら一層のこと出展キャンセルでいいよ」と思うかもしれません。しかし、費用対効果、自社の経営等を考える経営者からすれば、チャンスは少しでも活かしたいはずです。もし、自社の利益・費用対効果・将来の売り上げ増への戦略等を積極的に考えられるのであれば是非、「ただではキャンセルにしない」といった姿勢で機会を最大限に活用してみてください。
②オンラインで出展を行う
出展を取り止める場合でも、自社ブース位置に壁と床を作らなければいけないのであれば、前項でも述べましたが「半オンライン」で出展することも考えられてもいいのではと思います。最小限で展示ブースを製作し、そこに常時接続したPCを繋いておくとリアルタイムで商談を行うことは可能です。地方の方は、東京にお住いのどなたか知り合いなどに依頼して、ブースに立っておいてもらうとよいかと思います。

9.まとめ

いかがでしょうか。今の状況下で出展を取り止めるか、出展するか、決定することはなかなか難しい判断だと思います。上記に記載した事項はあくまでも私の主観ではありますが、この数か月の中で感じたことでもあります。
ただ、最近の展示会場の様子を見てみると、会場内は思っている以上に「通常通り」という印象があります。コロナはもちろん危険ですが、自社や出展者自身の経済状況等を考慮して慎重に出展の検討を行ってください。

ちなみに、当社の場合、当社のお客様に「出展するべきかどうか」ご相談があった場合、展示会によってお返事を変えています。バイヤーさんなどが来場者の展示会の場合、出展を基本的にお勧めしています(もちろん対策は講じた上です)が、一方でIT系など「来場者が必ずしも会場に行かなくてもよい」展示会の場合、出展を強くは勧めていません。どちらにしても、当社が日頃の経験で「こちらの方が出展の結果が出る」といった出展者にとってよい方をお伝えしています。

大切なことは自社にとって良い方向へ動かすこと。今回のこの記事が何らかの判断の基準になることを願っています。


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展示会ブースに特化する空間デザイン事務所、スーパーペンギン代表。展示会を通して日本全国の中小企業の販路開拓・地域産業支援を行っています。東京ビッグサイトなどで開催されるブースのデザインを行う他、展示会ブースでの集客の仕方についてセミナーを全国で開催。