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将棋ファンを増やすために初心者から5つの提案

☗将棋好きはまだまだ増やせる

私は藤井聡太さんの活躍がきっかけで2017年から将棋界に興味を持ち、棋力はおそらく二桁級を卒業できる程度(※道場デビューしていないので推定)の初心者だ。

私にとって将棋棋士の先生方はすべからく憧れのヒーローだが、実際に知名度があるのは個人的感覚だとやはり羽生善治さん、藤井聡太さんだ。名前を知らないというかたにはほとんどお目にかからない。その他の棋士は、将棋ファン以外の人に話す時はまずどんなかたなのかを説明しなければならない。

それが歯がゆく、残念でたまらない。将棋界には個性豊かで魅力的な棋士が大勢いらっしゃるので、本当はもっとアピールできるはずだ。

ちなみに「レジャー白書2022」(日本生産性本部・編集発行)によると2021年の将棋人口は500万人で、年々減少傾向だという。日本将棋連盟の公式HPの「よくある質問」では1200万人と回答されている。

どこまでを将棋人口に含めるかでバラつきはあるものの、日本の人口約1億2400万人に対し、イメージ的には学校の40人の1クラス中に2〜4人ぐらい、と考えると体感で確かにそのくらいかなという気もする。

しかし同じ調査で余暇活動に動画鑑賞(レンタル・配信を含む)を挙げたかたは3690万人もいる。ABEMAやYouTubeなど複数メディアで動画配信がある将棋はこれからまだまだ伸びしろ十分な可能性を秘めているといえる。

将棋に縁もゆかりもない環境で過ごしてきた私が突如、将棋に沼落ちしていった経緯にヒントがあるかもしれない。
将棋ファンを増やすために出来ることとして、次の5つについて考えてみた。


1.少しでも興味を持った人の意欲をそがない

これは本当に感じるのだが、初心者への上から目線は絶対に良くない。
そもそも今こんなに熱く将棋を観戦している私でさえ、かつてはNHKで日曜朝に放送される将棋番組にザッピングの途中でチラッとたどり着いても、全く意味が分からず「秒で」チャンネルを変えていた。
わかりたいと思う事すら無かった。

私の場合は、藤井聡太さんが企画番組で羽生善治さんに勝つという衝撃的なシーンを目の当たりにし、中学生でも出来るならもしかして私にも出来るのかなと知的好奇心をくすぐられたことがきっかけだった。(もちろん一瞬で藤井さんが凄すぎると気付かされたことは言うまでもない)

何をやってるのかな、この小さな大切な芽生えを無神経に摘み取るような経験者のマウントは本当に残念だ。

ある大盤解説会で、最前列に長年のベテランファンといった感じの紳士が座っておられ、聞き手の女流棋士が咄嗟に答えられなかったのを「桂損やろ〜」とヤジを飛ばしていて、あまりいい気はしなかった。

教えようという気持ちはありがたいが、そんなこともわからんのか、という感じの言い方は歓迎できない。

初めは何もわからなくて当然だ。大縄跳びに自分も加わってみたいと遠巻きに様子を伺っている人が萎縮することがないように、長く将棋を愛好してこられたかたにはどうか喉元まで出かかった言葉を飲みこみ、温かく手を差し伸べて迎え入れて欲しい。


2.棋譜利用の制限を緩やかに

棋譜の利用に制約がある。新入りからしたら、キフ?それって何?楽譜ならわかるけど、が最初の印象だった。

無断での商用利用は著作権侵害となる。しかし「非商用」であってもその線引きが難しいため、棋戦によっては局面図の枚数や符号の数に至るまで細かく規制されている。先生方の紡ぎ出す棋譜は発想の独自性からも発明と同じように尊重され保護されるべきだという考えには大いに賛成する。

ただ残念ながらこの各棋戦ガイドラインが非常に厄介で、長文かつ堅苦しい法的文書のため、要約すると何が言いたいのかがわかりづらい。第何項で述べた◯◯にとか、日常的に法務に携わる人でもない限りは馴染みがない。
軽い気持ちで確認してみたら、全文読むの面倒だ、それなら最初からやめておこう、となりそうなのだ。

一番疑問に思うのは一部棋戦が設定している、棋戦終了後にしか符号を語れないルールだ。
スポーツ中継でもそうだが、一番感情が高まった瞬間に分かち合うからこそ一体感が生まれ、盛り上がるのに、何とももったいない。

Twitterでトレンド入りしてるけど何のことかな?といった感じに興味を惹きつける事は、きっとファンの裾野を広げるよいきっかけになるはずだ。

主催協賛の各社にはクロスメディアでの相乗効果という未知数の可能性(いわゆるバズり)にも期待して、バランスをうまく取りながら、規制緩和について検討して頂けたらと思う。


3.独特の言い回しや専門用語を控える

将棋には耳慣れない言い回しがたくさんある。余す、味がいい、精算する、詰めろ、まるで第二言語のような将棋用語は挙げればキリがない。

そして戦法や囲いの名前も多種多様。それを全部覚えないとこの方々の会話を理解することさえできないのかと初心者は落胆してしまう。

私も最初のうちは指し手に込められた思いを知りたい一心であれこれ本を読んだりググったりして、最近やっと、本当に徐々にではあるものの意味がわかるようになってきた。

これは赤ちゃんが言葉を覚えるのと同じで、習うより慣れろなのだろうが、初心者が最初にぶつかる壁でもある。できるだけわかりやすい表現だと本当にありがたい。

初めて木村一基九段の解説を聞いた時に、間の取り方や緩急、絶妙な笑い、平易な言葉、どんどん腑に落ちてまさに一流の話芸だと拍手喝采したい気分だった。初心者目線に寄り添おうと心がけて実践しておられる事を感じた。

将棋言語習得前の人にも易しい表現はどんどん追求し、誰もが理解できて楽しめる解説となるように配慮して頂けると嬉しい。


4.将棋コラムをもっと気軽に

現在、将棋コラムを書いておられるかたのほとんどが大学の将棋部経験者やアマ有段者、将棋雑誌編集者など、長年将棋の世界に携わってきた専門性の高い方々だ。

特に局面の分析などに関しては知識量が圧倒的で、専門知識に乏しい自分などが文章を書いてよいものかと躊躇ってしまう。

週刊文春オンラインの「読む将棋」のように、将棋をテーマにしたコラム集の初心者版は無いのだろうかと思っていたら、noteでも将棋や棋士先生の名前でハッシュタグ#検索をかけると結構たくさんヒットする。気づいた時はとても嬉しかった。

私もたくさんアップしているが、私の記事に関しては経験者のかたがご覧になったら的を得ていないところがたくさんあると思う。
しかし初心者目線で語られる内容については、私と似たような境遇のかたにきっと共感して頂けるはずだ。私自身、将棋が好きなかたの文章を読むことはとても楽しい。
ぜひ将棋に関する記事が活発に投稿され、たくさんのかたが目にしてくださる事に期待している。


5.棋士グッズを活用する

将棋会館や将棋連盟のオンラインショップでは様々な将棋グッズが販売されているが、棋士個人のグッズで一番数が多いのは揮毫を印刷した扇子だ。
そしてイベントでの景品になることも多いのが揮毫色紙。いつの間にか扇子と色紙がどんどん増えていくのは将棋ファンあるあるだろう。

一方で、新将棋会館のクラウドファンディングの返礼品として大人気だったのが、将棋棋士のアクリルスタンド、いわゆるアクスタである。
棋士1名1万円の返礼品には約500人もの支援が集まった。これまでアクスタといえばアイドルやキャラクターが殆どで、将棋棋士はとても斬新だった。

馴染みのない、前例の無い事に関して将棋連盟がこのように意欲的に取り組まれる方針は大変ありがたく、ファンとしてもさらに親しみを感じることができる。

もちろんお忙しい先生方にご無理のない範囲で、ぜひ新しい風として色々な棋士グッズを展開して、将棋や将棋棋士の魅力が身近に感じられるようになると嬉しい。

新・将棋会館プロジェクト第2期返礼品

☖将棋を次の100年へ

観る将歴約6年。6年後の自分がまさかこんなにも将棋を夢中で好きになっているなんて。その時は想像もつかなかった。今でも旧知の友人に将棋にハマっていて、と話すと将棋⁈と怪訝な顔をされる。それぐらい私のイメージと繋がらないからだろう。

それは逆に言えば今は将棋に興味のカケラもないかたが6年後、将棋が大好きになっているかもしれないのだ。その未来へと繋がっている今、たくさんのきっかけやチャンスの種を蒔く事で、将棋を応援する仲間はきっとどんどん増えていくはずだ。

現在、「将棋を次の100年へ」というキャッチコピーを掲げ、東西の将棋会館を新たに建設中であり、クラウドファンディングも行われている。
この時期だけの一過性のものではなく、将棋が100年後にもっと人気の競技になるためも今の取り組みが肝心になる。

そして100年後には想像もつかないような能力を持った将棋棋士たちが、きっと素晴らしい棋譜を紡いで感動を与えてくださっているのだろう。

私はあと100年とは言えない年齢だが、出来るだけ長生きして、ぜひそんな未来をたくさんの将棋愛好家と一緒に見てみたい。

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