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今年の一冊目は『同志少女よ、敵を撃て』

ケチをつけるところは何もない、非常に面白い小説でした。

いくつもの賞を獲得し、様々な著名人から絶賛されいていて、2022年で一番売れたんじゃないかと思う小説。
そこまで期待が持ち上がると、読後に「そこまででは無かったかなぁ…」と、首を傾げてもおかしくないですが、同志少女は、期待通りと言うか、絶賛側に自分も回りたい、納得の小説でした。

これ以外にも、著作があれば、続けて読みたいんですが、本書が処女作のため、次作をいつになるのかと待ち続けるしかありません。
『同志少女よ、敵を撃て』が発売されたのが2021年11月なので、早ければ今年2023年に出たりするんでしょうか?本書で賞を獲るまでに、何作も落選をした作品があるようなので、それらの本が書き直して発刊されたりは…?
今時点は情報は無いので、ただただ待つしかないようです。

6章に分かれているうちの特に圧巻だったのは、中盤の山場になる4章「ヴォルガの向こうに我らの土地なし」です。
スターリングラード(今はヴォルガグラード)での戦いを書いており、4章の結末だけでも、映画鑑賞後の余韻に近いものがありました。

4章は、スターリングラードを占拠したドイツ軍を、逆にソ連軍が囲んでせん滅する作戦が描かれます。
作戦全体を俯瞰した流れではなく、章の最初で全体像を説明した後は、セラフィマ達第三十九独立小隊を中心として章は展開していきます。
狙撃小隊を中心に描きながら、占拠された土地で生きるひとや、そこで作戦を共にするマクシム隊長率いる4人の男たち等、この章のみにしか出てこないキャラクターでも、丁寧で且つ魅力的に描かれています。
静かに熱い狙撃手セラフィマの物語が中心でありながら、この章ではマクシム隊長たちの行く末も強烈なインパクトが残り、盛り立てていました。

この4章のような激しい話が、5章6章と続いたとしたら、それはそれで食傷気味になりそうですが、章によって持ち味がガラリと変わることで、一切飽きないまま最後まで読むことが出来ます。
一抹かもしれませんが、戦争の様々な面を読んでいけるのも、本書の面白い側面です。


ちょうどnoteに著者逢坂さんの対談の記事がありました。同志少女を読み終わってから読むと、一層面白く読める記事ですね。
対談相手は実姉でありロシア文学者の奈倉有里さんです。


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