短編小説『深海魚の憂鬱』4
《これから大阪向かいます》
宮城にメールを入れる。送信ボタンを押す時は少しばかり小堀は躊躇った。こんな有り得ない嘘みたいなエピソードを話せば当然と言えば当然だと誰もが理解してくれる筈だ。
こんな時間からタクシーで大阪に向かう奴なんて日本の歴史の中で小堀ただ1人に違いない。いや中には過去居たかも知れないが、嫌々向かった者は居ないだろ。きっと遠く離れて暮らす恋人にサプライズで逢いに行くといったロマンチックなエピソードであろう。
そんな胸中でも無常に信号ら青へと変わり、タクシーは一路、大阪へ向けて走り出した。運転手はどう思っているのだろうか、小堀は気になった。どうせ長旅で、時間だけは嫌気がさすほどある。道中で尋ねてみようと小堀は思った。
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