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論評もレポートも、実は読書感想文の応用―大人になっても使える、読書感想文のコツ―

想定読者

このnoteは、読書感想文に悩むお子様をお持ちの保護者の方はもちろん、高校や大学の志望動機の書き方に悩む中学生、高校生、レポートを書きなれていない大学1~2年生も対象です。コツさえつかめばみーんな同じルールが見えてきます。ぜひ有効活用してください。

こんな時代だけれど、今年も夏はやってくる―――

子どもの頃、夏休みといえば1年でもっとも長い休暇で、田舎の親戚の家に遊びに行ったり、友人たちとお泊り会をしたり、楽しい思い出がたくさんある。長い休みだから、その分、宿題もどっさり出されていたっけ。
私は、算数ドリルとラジオ体操のハンコ集めと絵日記が嫌いで、8月20日くらいから始めていた。絵日記は7月初旬の天気が分からなくてどうしようと毎年オロオロした記憶がある。そういえば今ならネットですぐに遡れるんだな、あの頃の私が歓喜するな。

そんな中で、毎年楽しくこなした宿題が二つある。自由研究と読書感想文だ。
巷では「時間がかかるし面倒な宿題2トップ」ともいわれる。しかしこの二つの宿題は、コツさえつかめばとっても楽しい夏の思い出になるのだ。
今日はこの二つのうち、読書感想文のコツについて書いてみる。

こんなことを急に書き出した発端は、大学の社会人入試をひかえた親戚に「志望理由書の添削をしてほしい」と言われたことだ。
その志望理由書は二つテーマがあり、一つは「なぜこの大学・学部を志望したか」、もう一つは「新書を一冊選定し、その論評を書け」というものだった。
一つめは、自分の熱意を書けばいい。社会人になってから大学に入学しようなんて考える人間からすれば、800文字なんてあっという間に埋まる。
しかし、問題は二つめだ。「そもそも論評なんて書いたことない」という人だってたくさんいるだろう。私の親戚も、論評ってなんぞ?というところからスタートしている。しかし、これこそが「読書感想文」の応用なのだ!

論評は「解説」でも「叩くこと」でもない

そもそも論評とは何か?ネットで調べるとこんな風に出てくる。

論評―[名](スル)ある物事の内容・結果などを論じ、批評すること。また、その文章。「論評を加える」「論評を避ける」「事件を公式に論評する」
出典 小学館デジタル大辞泉

「批評」やら「批判」と聞くと、いわゆるネットスラングの「叩き」や「炎上」を連想し、マイナスなものと捉える人が多くいるが、実はそうではない。
自分がその内容や結果について何を考えたか、論理的に説明することを指す。そのため、マイナスのことだけでなく、賛成意見や賞賛することも、論理的であれば批評にあたる
つまり、「なんとなく良い/悪いと思った」といった「お気持ち」の表明や、「○○さんがそう言ってるから私もそう思う」といった根拠のない判断は批評には当たらない。
読書感想文や大学の志望理由書に求められていることは、「私はこの本の内容についてどう思ったか、そう思った理由はどのような知識・体験に基づいているのか」を論理的に述べる力だろう。
大学受験した時、大学院受験の時、さらには社会人になってから博士課程に進学した時も、志望理由書を書いて、その都度ちゃんと合格してきた私が言うんだから、あながち間違ってないだろう。

では、自分の気持ちを論理的に述べるとは、なんだろうか?
「気持ちなの論理的なの?」
「気持ちは主観、論理的なのは客観でしょ?」
そんな疑問があるだろう。わかる、一般的にそうだと言われている。
しかし、主観的な気持ちを論理的に語ることができるコツがあるのだ。

文章の基本は「起承転結」

小説だってエッセイだって、はたまた論文だって、文章は基本的に起承転結がある。もちろん、読書感想文にも、志望理由書にも、だ。今日は読書感想文の起承転結を考えよう。

【起】

選んだ本は何か?、どうしてその本を選んだのか?


【承】

本のあらすじ。何について書かれた本なのか?どんな構成の本なのか?

【転】

印象的な部分はどこか?、何に心を動かされたのか?

心を動かされたということは、どこかで共感したということ。なぜ共感したのか?

今まで持っていた知識や経験と共通することがあったか?または、自分の知識や経験から、著者のいう事と異なる感想を持った?はたまた、今までの知識や経験が覆されるようなことは?

【結】

感想文の結論。選んだ本を読んで学んだことは?その学んだことをこれからの生活や人生にどう生かしていくか?


こうして並べてみると、起承転結の中でも、「転」の分量がやけに多いと感じないだろうか?
そう、読書感想文にとって最も分量を割き、時間をかけるべきところは、この「転」なのだ。

主観である「自分の気持ち」を、「客観的な論評」に落とし込むには、上記の「?」がとても重要になってくる。

なぜ?どうして?の気持ちに答えを見つけ、それを言語化して文章にすること―これこそが、読書感想文の醍醐味である!

欲しいのは、経験を「一般化」する客観性

感想文を考えるとき、その本の中だけに留まろうとすると、なぜ?なんて出てこないかもしれない。なぜ?が出てくるのは、「自分の経験や知識と照らし合わせた時」だ。
たとえば、最近話題になった気になるニュースや、友人との何気ない会話、電車の中で遭遇したちょっとした事件など。
日々の生活の中で、ちょっとアンテナを張っておこう。そのアンテナに引っかかってちょっと気になったことを忘れずに心の中にとどめておこう。
それらの「気になったこと」は、あなたの経験であり、決して本の著者が経験したことではない。でも「この本で書かれているこの文章、あの時感じたあれに似ているのでは…?」と繋げて考えてみよう。

自分が感じたことを、著者の文章と繋げる。これこそが客観性である。自分が感じたことだけでは主観だが、それを第三者にも共感してもらえる文章にする「一般化」という過程を踏むことで、客観的な文章に仕上がってくる。

そのエピソードと自分の感じたことを、読み手に伝わるように文章にできれば、あなたの読書感想文はもう80%完成しているといっても過言ではない!あとはパズルのように文章を組み立てていくだけ。がんばってみよう!

やりがちなミス

最後に、読書感想文でやりがちなミスをまとめてみた。
1.あらすじは短く簡潔に。読書感想文の半分があらすじなんてことにはならないように。重要なのは、「あなたがこの本で学んだこと」、つまり、起承転結の「転」だ。

2.起承転結の「結」の部分に、選んだ本の結論を書いている人がいる。感想文の結論は本の結論ではなく、自分の感想の結論!つまり、「私がどう思ったか」「選んだ本の何が学びになったのか」「この本で学んだことを明日からどう生かすか」など。

本を一冊読むと、その本がどんなジャンルであれ、どんな内容であれ、読む前に比べて知識の引き出しの個数が一つ増えるのだ。その体験はひとつの成功体験となって、あなたの人生を豊かにする。だからこそ、その豊かになった部分を結論に書くのだ。

3.大学生の講義レポートにおいては、感じたことの一般化は経験だけでは不足している。科学的根拠、つまり、論文などの引用が必要になってくる。自分が展開する理論が、いかに一般的で客観性がある、信頼できるものなのかの証拠として、論文や本を引用するのだ研究者を目指す大学生は、ぜひこの方法を早めに身に着けておきたいところ。

おわりに

さてさて、読書感想文が苦手な人は、そもそも文章を読むのが苦手な人も多いと思います。ここまで読んでくださってありがとうございました。
今後さらにお役に立てるような文章を書いていくために、よろしければぜひフィードバックをお願いします。

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