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Peak2Peakのデジタル写真講座:第一回  写真にとって「明るさ」とは何か

風景写真や山岳写真を撮影し作品として完成させていく時に必要な思考やテクニックを、毎回お伝えして行きます。今回のテーマは「明るさ」です。実際に撮影したデータを使いながら解説していきます。今回は、残雪期の鹿島槍ヶ岳で撮影した写真を使って進めていきます。

<256段階の階調>
デジタル写真の規格をまず理解しましょう。被写体である風景は無限の明るさの階調を持っています。もっとも明るい部分からもっとも暗い部分まで、明るさはアナログ的に無限のグラデーションで移行して行きます。しかしデジタル写真を構成するのは「画素」であり「ピクセル」です。これは折り紙を並べて絵を描くのに似ています。一枚一枚の「折り紙=画素・ピクセル」それ自体は同じ色、同じ明るさです。デジタル写真では隣あう「画素・ピクセル=折り紙」の明るさや色が微妙に違うことで、グラデーションを作り画像を描いています。

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ここに真っ白から真っ黒まで26段階のグラデーションを作ってみました。これをう〜んと遠くから見ると滑らかなグラデーションに見えてきますが、近くで見ているとグラデーションではなく明るさに段差があるのが分ります。デジタル写真はこの段差の最大数が規格で決まっています。256段階です。真っ白から真っ黒までを最大256段階で表現しているわけです。このことをまず覚えておきましょう。

256という数字は少し難しく言いますと8bit(2の8乗)です。上の図をもう一度見てください。一枚一枚の「折り紙=画素・ピクセル」は256段階の明るさを表現することができるわけです。これを信号の深さと捉えます。デジタル写真は、被写体から届く光をセンサーで電気信号に置き換えますが、この時この256段階の深さを使って明るさを描くわけです。

話が少し難しくなったでしょうか。数字はともかく、デジタル写真は、被写体の無限の階調を限られた情報に置き換えて表現しているということを理解してください。

(8bitの規格はJPGで定められたもので、RAWデータの場合はbit数が増えます)

<ダイナミックレンジ>
明るさに関して、ここにもう一つ厄介な問題があります。それはカメラ(のセンサー)の性能によって、「カメラが記録できる明るさの範囲=ダイナミックレンジ」が違うということです。これは被写体が持っている明るさの範囲、明暗差とは別の問題です。

撮影した被写体が持っている明暗差(最も明るい場所と最も暗い場所の明るさの差)が、カメラが記録できる明るさの範囲よりも大きい場合、はみ出した部分は真っ黒(黒潰れ)になるか、真っ白(白飛び)になって何も描写することができません。

スクリーンショット 2020-05-06 12.46.38

ダイナミックレンジは個々のカメラ(センサー)の性能によります。早朝、ご来光を撮る際に、登ってくる太陽と山並みを一緒に撮影した場合、朝日の輪郭を描こうとすれば、山並みは真っ黒なシルエットになってしまいます。これは太陽という非常に明るい被写体に対して、手前の山並みが暗いので、この明るさの差がカメラのダイナミックレンジからはみ出してしまうことが多いからです。そしてどれくらいはみ出してしまうかは、カメラ(センサー)の性能によっています。

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(冷池山荘のテント場から、三ノ窓に沈む夕陽。太陽の表面は白飛びしているが、剱岳を完全なシルエットにすれば、太陽の輪郭は描くことができる)

もしカメラのダイナミックレンジからはみだす明暗差を持った被写体の場合、撮影時に、明るい部分を描くのか(白飛びさせない)暗い部分を描くのか(黒潰れさせない)、の選択をしなければならない、ということになります。被写体の明暗差のどこにカメラのダイナミックレンジを当てるのか、が問題になってきます。

逆に言いますと、撮影時にカメラのダナミックレンジを最大限に活かす撮り方を心がけるべきだ、という事が言えます。もしダイナミックレンジをはみ出してしまうと、そこは信号が存在していないただの真っ白、ただの真っ黒なのです。

<破綻していないデータ>
以上のことを心した上で、実際の明るさ調整に入って行きます。今日の題材は残雪期の鹿島槍ヶ岳から撮影した後立山連峰の稜線です。こちらに鹿島槍ヶ岳への撮影山行の詳しい紹介があります。

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(4月中旬、鹿島槍ヶ岳山頂から。五竜岳、唐松岳、白馬岳が見える)

「カメラのダイナミックレンジの狭さ」についてお話ししましたが、じっさいはこのことをあまり意識することは、最近のデジタルカメラでは少なくなりました。なぜならば、デジタルカメラの技術的な進歩により、ダイナミックレンジは改善され、以前に比べて圧倒的に広くなっているからです。ですから、「ご来光の太陽とシルエットに見える山並み」のように極端に明暗差がある被写体でなければ、カメラに露光を任せても(オートで撮影しても)、破綻することはありません。

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