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ビジネスパーソンが地方創生で気をつけること【取材編①】

僕たちのソーシャルチャレンジャー事業と株式会社VSNのバリューチェーン・イノベーターを掛け合わせて「地方創生VI」という事業を展開していることは以前の記事でも書かせて頂いた。

今回は社会課題をテクノロジーで解決する挑戦をする取組である「地方創生VI」に参加した方々が実感したある能力について書きたいと思う。

■ビジネスパーソン以外の人から信頼を得ることの難しさ
「いやいや、それは当たり前のことだろう。」と言われそうなことだが、一番重要なことなので書き進めたい。都市部を中心にビジネスの中枢に身を置くビジネスパーソンにとって、相手からの信頼を得る武器は仕事における成果やスキル、所属している企業の看板などである。例えば、東京で初対面の相手と打ち合わせをする際には、どんな企業に所属していて、どんなプロジェクトをどんな立場・役割で推進している。そのプロジェクトの目標は〜〜ということを説明することができれば打ち合わせは進んでいく。その中でお互いが取引することでより良い成果が望めそうであれば契約の話になるし、そうでなければ継続的な情報交換といった関係を続けていくことになると思う。

そんな日常を送っているビジネスパーソンが研修で地方の住民取材フィールドワークプログラムに臨むことになる。先ず最初に躓くのが、相手の話の深掘り方法がビジネスシーンと全く違うところ。ビジネスシーンの場合は事業目標や業務目標があって、その目標に対して現状の進捗が良いのか悪いのか、課題があるのかないのかなど、質問をする項目もある程度決まっており解決方法も想定できることが多い。その為のソリューションだったり、エンジニアのスキルだったり提示できることは多くある。さらに産業構造や業界内の知識など、ビジネスリテラシーを高める為の方法は数多く存在するので優秀なビジネスパーソン程知識が豊富で頼り甲斐がある。

しかし、住民取材フィールドワークでは優秀なビジネスパーソン程、取材相手の話の深掘りができずに自信を喪失するケースが多い。実際にプログラムの中で起こった例を複数合わせた物語をベースに説明してみたい。

・トマト農家を営むAさんの取材
取材に臨むのはITコンサルタントの資格を保有するSさん、大手通信会社でサービス開発を行うエンジニアのHさん、データサイエンティストのCさんの3名。フィールドは関東の農業が盛んな土地で今回取材をする先も比較的規模の大きなトマト農家のAさんだ。

3名は取材の2週間程前からトマトの市場規模や育成方法について調べたり、スマート農業についての知識を吸収したり、テクノロジーを組み合わせることによる可能性をチーム内でディスカッションしたりと万全な準備をして取材に臨んだ。

いざ、取材が始まりコーディネーターを務めてくれている行政職員によるお互いの簡単な自己紹介を終えるとトマト農家のAさんが農業を生業にする上での課題を軽く話してくれた。話が最後まで終わらないうちにコンサルタントであるSさんはこれ見よがしにトマトの育成についての最新情報の提供やスマート農業の事例、トマト農家にテクノロジーを導入することによる可能性についてのプレゼン一通り行った。農家であるAさんは突然のプレゼンに一瞬驚いた顔をしたが、その後は感心するように最新のテクノロジーの情報について質問をしたり、トマト農家を営む上での課題についてを話したりと1.5Hの時間はあっという間に過ぎた。チームメンバーもAさんの反応に一定の手応えを感じて、どんどんスマート農業についての可能性で盛り上がり、取材を終えた。

この話は実際に行った取材シーンをいくつか組み合わせて僕が作った話だが、初めてビジネスパーソンたちが臨む取材でよくあるケースである。結論から言うと、このような感じで話が盛り上がっても地域の方からの印象はかなり悪く、行政職員からプログラム運営の僕らに相談があったりする。

なぜ、このようになるのか。
次回はその理由について書いていきたい。

つづく。

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