見出し画像

暮らしを縛る法律の改悪などについて

進む戦争準備、そのために脅かされるもの
~私たちの暮らしを縛る様々な法律の改悪、法律の制定などが次々に進められています~

 戦争しないことを誓った国(憲法9条:戦争の放棄)なのに、軍事費倍増と様々な法律の改悪・制定や閣議決定によって、戦争できる国づくりが進められています。軍事費が増額される一方で切り詰められ、追い詰められているのは私たちの生活・命そのものです。軍事国家化の下で、医療・福祉・教育など社会保障の切り捨て、国民負担増、雇用の不安定化などなど、私たちの生活・命が脅かされています。助けを求めても、「自己責任」の一言で切り捨てられて行く世の中が作られていきます。
 また2024年の通常国会では多くの人が知らないうちに、しかも野党も賛成して私たちの生活を縛り戦争を可能にする様々な法律の改悪・制定がすみ、秋の臨時国会でもまだまだ着々と進めようとしています。
 ここではそういった法律の改悪・制定などについて、特に重要と思われるものの要点をまとめます。

【2024年通常国会で成立した戦争準備のための法律】
●「重要経済安全情報保護活用法」(セキュリティクリアランス制度)

 2013年に市民が大きな反対の声を上げる中で成立した「特定秘密保護法」の経済安全保障版です。この法律は、秘密保護法における機密対象を経済安全分野まで広げ、対象者を大幅に拡大するものです。
 
今回拡大された 「セキュリティ・クリアランス制度(適正評価制度)」は、経済安全保障上の重要情報を扱う人物について、国家が事前に調べて信頼できる人物か評価し、情報漏洩に対して罰則を課す制度です。
 その対象者は、公務員のみならず、民間企業の従業員や大学・研究機関の研究者など極めて広汎に及びます。多くの民間人が詳細なプライバシーに関する調査を受けることになり(拒否できるとされていますが、仕事を続けるために実質強要される危険が強い)、厳罰のある規制の下に置かれることになります。身辺調査は、精神状態や犯罪歴、借金など経済状態、飲酒の節度、配偶者の国籍等に加え、家族、同居人、知人にまで及びます。市民としての活動など思想信条にかかわる調査にもつながります。日本弁護士連合会は、国民の知る権利及びプライバシー権の侵害、人権侵害の危険性を指摘し、反対の意見書および声明を発表しています。

 このようにして重要な経済情報を国の管理下に置き情報統制を強めることで、国民に知らせないまま秘密のうちに軍事国家化がすすめられていくことになります。

●地方自治体による戦争への協力強制の準備(「地方自治法の一部を改正する法律」)

 この法律は、地方自治の本旨(憲法第92条)に反し、地方自治の主体性を破壊するものであり、事実上、「緊急事態条項」改憲を先取りする大変重大なものです。
 法改悪により、「自然災害」「感染症」「武力攻撃」等を想定し、大臣が「非平時」であると判断すれば、すなわち生命等の危険につながる「おそれがある」と判断しさえすれば、国が地方自治体に政策を強要できることになりました。国会すら関与せず大臣の判断のみで、国会へは「報告義務」だけです。「自治体の意見を聞く」ことは「努力義務」でしかありません。これまで、政府と地方自治体は形式上対等とされてきました。しかし、地方自治法の改悪によって、この原則が根底から覆されてしまったのです。
 なぜこのような法の改悪が必要だったのでしょう?「自然災害」「感染症対策」に関することなら、災害対策法や感染症予防法によって、国による自治体への包括的な指示権がすでに認められています。だから法改悪をする必要はありません。この法改悪が戦争を想定していることは明らかです。国が本気で戦争を始めるとすれば、地方自治体と国民全体を強制的に動員しなければできません。たとえば、 戦車や装甲車が道路を通過する場合、その日時や車両数を地方自治体に申請しなければなりません。避難者やけが人の受け入れも地方自治体に頼らなければなりません。そこに「大臣の指示権」を認めてしまえば、自治体や地方議会、住民の意見も聞かずに、あらゆる権限を政府が手にすることができると言うことです。この権限を使えば、「自衛隊のために通行路を開く指示」「施設に防護措置を施す指示」や「ミサイル攻撃に備えて職員を庁舎に待機させる指示」なども発動されかねません。私たちの生活道路に戦車が普通に走り出す日も遠くないかもしれません(沖縄では既に始まっています)。

●いもなどの作付を「不測の事態」に強制(「食料・農業・農村基本法」改悪など)

 戦時体制を構築するための目玉となっているのが、「食料安全保障法」とも言われている3つの法律です(①「食料・農業・農村基本法」改悪、②「食料供給困難事態対策法」、③「食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律」)。
 戦争の準備として、食糧確保・供給体制は重要であるという考えです。そもそも日本は、食料自給率が38%と低い状態が続いています。日本の農業は重労働と低収入、後継者不足等で危機に瀕しています。私たちの安全な食生活を守るのであれば、軍事費ではなく農家の支援に予算を回し、食料自給率を高める政策が必要です。しかし、食料安全保障法では、「食糧自給率の向上」が最大目標から外されてしまいました。政府には日本の農業の衰退を食い止めようとか、食料自給率を高めようとか、持続可能な農業をつくろうとか、農業を、農業者が安心して生産して生活できる産業にしようというような発想は全くないようです。
 その一方、農家に生産や出荷を強制できる、すなわち作付けを管理するという信じがたい異常な法律です。農業者に対して出荷や生産の計画の届け出を求めたり、生産の拡大や転作を指示したり、計画を届け出なかった者は罰金を科し、政府の指示通りに生産しない事業者は名前を公表してさらし者にすることまで考えています。有事においては、花や牧草からイモへ転作を強制することなどを可能とするものです。
 加えて政府は「イザという時の食生活」として、「朝昼晩3食イモ、卵は3か月に2個、肉は一か月に一皿」などという非常食を紹介しています。なんと消費者の食生活も規制の対象とされようとしています(農水省資料「食料自給力指標の各パターンにおける食事メニュー例」)。まさに「ほしがりません勝つまでは」の発想で、生産においても消費においても「食料主権」が失われようとしています。

https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/pdf/26menu.pdf

【2024年臨時国会で狙われているもの】
●「能動的サイバー防御」と情報監視のための法整備

 さらに秋の臨時国会では、サイバー攻撃を想定した「能動的サイバー防御」(ACD)の法整備を進めようとしており、すでに有識者会議を開催し、法案の準備が急ピッチで進んでいます。
 ACDとは、国が平時から通信を監視し、サイバー攻撃などの動きを探り、「兆候」の段階で相手のシステムに入り無害化する仕組みのことです。つまり「防御」と言いながら、サイバー空間における先制攻撃をできるようにしたいのです。実際には中国やその他の国々の通信を常に監視し、他国の通信網や軍事システムの破壊が、いつでもできる体制を整えることにつながる大変危険な法律です。
 また、この仕組みにおいては他国に対する監視に留まらず私たちも監視の対象となります。政府に不都合な運動や活動の全般、とりわけ反戦平和や日中友好の団体・個人が監視の対象となることが想定されます。もとより、私たちの通信や情報の大量収集と、たえざる監視が合法化されることとなります。

【マイナンバーカードは国民の監視システムである】

●マイナンバーカードの強制による全国民の情報掌握と統制

 2023年6月に改正マイナンバー法が成立し、今年秋以降に健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと保険証の一体化を本格化しようとしています。政府は、マイナンバーカードを普及させることに躍起になっており、マイナンバーカードと保険証を紐づけ、保険証を廃止することでマイナンバーカードの取得を強制しようというのです。
 政府は、なんでそんなにマイナンバーカードを普及したいのでしょう。マイナンバーカードがあれば、行政の手続きも簡単に行えweb上での手続きが行えるなど、便利さだけが宣伝されています。しかし、マイナンバーカードは、国民の個人情報を1つの場所に集め、国が管理・監視するためのシステムです。さらに個人情報の漏洩の危険もあります。
 今、マイナンバーへの個人情報紐づけ範囲をどんどん広げようとしています。銀行口座を作る時に、はっきり拒否しないとマイナンバーカードと紐づけられてしまいます(「口座管理法」2024年4月施行)。運転免許証とマイナンバーカードの一体化をする法案も作られています。また、2023年6月の改正マイナンバー法では、「マイナンバーの利用が認められている事務について、主務省令に規定することで情報連携を可能とする」とされており、各省庁が省令だけで、マイナンバーとの紐づけを拡大できるように規定されてしまっています。国民が知らない間に情報がどんどん集中化されようとしているのです。
 保険証を紐づけることで、その人の健康状態が把握でき、銀行口座を紐づければ資産状況の把握もできてしまいます。例えば、国が戦争準備をする段階で、兵隊が足りなければ、資産状況・健康状況を確認して、生活困窮にある元気な若者をピンポイントで探し当て、「経済的徴兵」をすることも可能になるのです。

絵本「戦争のつくりかた」 アニメ「戦争のつくりかた」

このページで書いた、戦争準備・戦争できる国づくりについて、絵本「戦争のつくりかた」(2004年)を元にしたアニメ「戦争のつくりかた」-What Happens Before War?-が公開されています。(2015年製作)
 とてもわかりやすく、また、未来を予見するような内容にドキッとさせられます。是非、ご覧になって下さい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?