No.921ゲシュタルト療法におけるホメオレシスと意識について

ゲシュタルト療法におけるホメオレシスと意識について、以下の私の解釈がレズニク博士が言うところの的を得ているのか、的外れなのかはよくわかりませんが、書いてみたいと思います
ホメオスタシスという言葉は馴染みのある言葉であり、私たち生き物が生の営みを行う上で外部の環境に関わらず一定の状態を保とうとする自己調節機能のことである。

2013年11月発行の「畜産の研究 第67巻11号」を引用にしながらホメオスタシスとホメオレシスの関係性について記載すると以下のようになる。
————————————————————————
ホメオレシスについて、Bauman博士は「優先される生理学的プロセスをサポートするために行われる、体組織における代謝の長期的な調整」と定義している。

一つの例を挙げると、

家畜である乳牛において、ホメオスタシスの観点から捉えた場合、飼料を食べ、吸収された栄養素は殆どが脂肪組織へと蓄積されるはずである。

しかし、泌乳初期においてはホメオレシスの制御によって、吸収された栄養素は乳生産へ優先的に分配される。

乳牛においてはホメオスタシスにより健康を維持しながら、ホメオレシスにより牛乳の生産性を維持するためにそれに関わる代謝が調整されているはずである。
すなわち、栄養素の生産性への分配の調整が行われているはずである。
この調整にホメオスタシスとホメオレシスの二つが働いている。
————————————————————————

このことは人間においてどういうことなのだろうか。
心理的なホメオレシスとはどのようなものなのか。

Bauman博士の考えを私なりに勝手に解釈してみる。

心理的ホメオレシスとは、「私たちが成長する方向へと向かうために必要なエネルギーの流れであり、自己成長促進機能である」と仮定する。

ホメオレシスが機能する条件として、健康な私であることが必要不可欠であり、この健康な私というのが正常なホメオスタシスが機能している状態であろう。

ホメオスタシスが正常に動き出した時、私たちのエネルギーは固着したものから流動化したものへと変化し、正の方向へと流れ始める。

この正の方向へと流れ始めたエネルギーは環境変化の中で今最も私たちが必要としているものを私たちのカラダの感覚から理解する。
この機能がホメオレシス機能であると考える。

この”必要なものを理解しているカラダの感覚”が意識と呼ばれるものであり、このカラダの感覚に気づくことでホメオレシスの意識はカラダ全体へと拡がり、カラダの感覚での理解に加え、思考での理解を促すことになる。

このプロセスはゲシュタルト療法のワークにおいても見られることであり、ホメオレシスへの気づきはクライエント自らが正常なホメオスタシスを取り戻した後にセラピストの提案、もしくはそれがなくとも自然と起こってくる場合が多いように思う。

私のクライエント体験を例にとると、

私は父との関係性においていつも父を超えなければならないという感覚を持っていた。
そのために日常においても頑張り過ぎる傾向があり、父に立ち向かい、父を打ち負かしてやろうとするゲシュタルト療法でのワークをやり続けた。
私のエネルギーは父を超えなければならないという場所で固着してしまい、バランスを取るために他者と戦い続けていた。
この時の私のホメオスタシスはバランスを取るために働いてはいるが正常なホメオスタシスではない。
何故なら、他者と戦い続けることでバランスを取っていたからである。

ある時、私は父を超えられない、父には勝てない、私の負けだというワークをした。その時初めて、父を超えなくてもいいんだ、私は私で良いんだと気づき、父を私の中に受け入れた。
私のエネルギーは柔らかく、優しいエネルギーへと形を変え、私のカラダ全体へと動き始めた。
そしてこの時、正常なホメオスタシスが機能し、私は健康を取り戻した。

その後私は日常生活においてエネルギーが私の人生をどのように生きるかのかという生の方向へ向かっているのを感じるようになった。
それはホメオレシス機能がホメオスタシス機能の正常化によって私に必要なものを意識に浮かび上がらせたということだと理解する。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?