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海外大学院留学の真実。イギリス、工学と博士課程。2.博士課程の環境 | 金 輝俊、Hwi Jun KIM

海外大学院留学の真実。イギリス、工学と博士課程。2.博士課程の環境 | 金 輝俊、Hwi Jun KIM

目次

  • 日本の大学院

  • イギリスの大学院から合格通知

  • 海外大学院生活 -博士の始まり-

  • 博士課程の環境

  • その他もろもの。労働許可証とか

  • 博士の休日

  • 今思う、ベストな大学院と専門

  • 研究能力について

  • 学士課程時代からの色々な進路

  • 論文の続き

  • 博士課程でやり残した事

  • 最近のロバスト制御の研究関連

  • 研究方法論

  • 勉強とか進路とか

  • 博士は色々難しい

  • 博士のコース設定

  • 理想の大学院

  • 大学院後のキャリアプラン

  • 大学院と社会と国家

  • 博士号に対する見解

  • エピローグ

海外大学院生活 -博士の始まり-

大学院は勉強の場ではない。特に工学系はね。研究と事実上の職業訓練の場である。研究開発の素養を磨き、将来、開発職や研究職になる。あるいは文転しても仮説ドリブンの力を使って、仕事にレバレッジをかける。例えば、マーケターとかでね。決して、遊びではない。皆、真剣である。

Coventryの研究グループは大部屋で院生は10-15人くらい。パーティション付き。机は4人がけのダイニングテーブル並みの広さで、本棚まである。共有のレーザープリンターと最新のPC。かなり環境は良い。コーヒーもある。みんなでちょっとずつお金をプールして、コーヒー豆を買っていた。一人当たり面積もそうだが、研究者なので、静かな環境が必要。なので、パーティションはあった方がいい。日本で働き始めて、ちょっと思ったのが、パーティション。キュービクルすらない。そして、おしゃべりしながら仕事をしている。これは、考えるのはちょっと難しいかもしれない。筆者は散歩の時間を重要視しているので、あえて、コーヒーは学食で買っていた。これで、ノートPCがあれば完璧だったかな。どこでも仕事ができるし。

CoventryのCTAC、Ph.Dグループの部屋の自席。Coventryの図書館の自習机。カフェテリア。など。色々仕事ができるところはある。なんなら、バーミンガムのスタバでもいい。やろうと思えば、色々なところで仕事はできるけど、そうは思わなかった。

集中と発散。学類の時、ヨーロッパのどこかの大学院ではコーヒータイムが重要で、それがあるから、発想が豊かになっている、と読んだ。なので、それを真似た。自席で集中して仕事をして、たまに外でコーヒーを飲む。確かに、問題解決策を思いついたり、集中力が上がって、仕事の効率が高まった。仕事?そう、Ph.D候補生の研究は仕事である。

博士課程の環境

どこの大学の図書館でも使える。例えば、Warwick。Coventryの図書館もまあまあ良くて、Master of Scienceまではあれでいいかもしれないが、博士には論文の数が少ない。と言うことで、Warwickの図書館を使っていた。Coventryの図書館には学生証のバーコードで赤外線センサーで入っていた。Warwickも多年度有効の入管許可証を持っていて、バーコードで赤外線センサーで入っていた。いつでも好きなように使えるし、論文が大量にある。平日夜になると、図書館に行って、競合調査のために、図書館で論文をコピーしまくるのは通例だった。博士候補生にはこういう事が必要なので、入管許可証が別の大学でも発行できる制度になっているのではないかと思う。

Warwickの図書館を使ってたのはさっき読んだけど、Coventryの図書館はどんなのだったの?建物は結構新しい。Coventryの図書館は何時まで開いているか、聞いてみたところ、midnightまで、と返答がきた。どうやら、適当な時間で夜中まで開いているらしい。Warwickも同様で、一回、23時まで図書館にいたことがあるけど、普通に開いていて、他にもそこそこ、学生がいた。イギリスは凄い環境が充実していると思う。

ジャガーとの提携。指導教官がジャガーのPh.Dホルダーの人もいる。CTACはジャガーと強いつながりがあって、毎年のようにPh.Dホルダーを送り出したり、ジャガーと共同研究したり、している。実際、筆者の同期の一人は指導教官の一人はジャガーのPh.Dホルダーだった。国内で言うと、筑波の連携大学院のようなスタイル。ジャガーと繋がっていたり、外部の会社からグラントをもらっている院生は結構いて、そういう人は皆、RAをもらっている。珍しい?筆者が聞いた限りでは英米の大学院はこうなっている。日本の大学院のように科研費が全てではない。科研費ももちろん、十分にいいが、企業とつながりがあるので、そのまま、企業にPh.Dホルダーとして就職するのも容易になっていいのではないかと思う。

あ、一応、日本の大学院でも企業と繋がりあるところはあるのかな。聞いた事あるのを思い出した。でも、少数派だろう、おそらく。研究室の研究費には使えるのかも。例えば、計算クラスタとか。でも、大学院生に給与出せるのかな?

筆者の場合、理論適応ロバスト制御、しかも制御対象が複合材料で普通とはちょっと違って、難しい。普通はアクティブサスペンションを介した自動車のダイナミクスの制御、とかかな。筆者が今思うに惜しいな、と思うのは院生2年目でスマートマテリアルシステム、デジタルラグランジアン、Disturbance Observerと自動車でデンソーUKかジャガーに提案書を書いて、グラントを取ってきてしまえばよかったと思うこと。実は、ヨーロッパの科研費に当たる所からグラントを院生の時に引っ張ろうと思ったことがある。さすがに学生には無理で応募はやめたが、良く考えたら、指導教官と共同で出せばよかったかもしれない。すでに、研究提案書はあったから、それをベースに工学的応用とその社会へのインパクトなどを書いて。

こういう事で、研究室が研究資金を持っているのが、英米の大学院の良いところ。

事実上、院生が教授のために働いているってどういう意味?自分の好きな研究しているだけでしょ?文系は知らないから、工学系に的を絞る。普通、助教や助手は博士やポスドクのfurther workを持って挑むものだと思う。そうして、研究を続け、准教授くらいになると多数の未検証の仮説や予想が出て来くるものだと思う。未検証の仮説が多すぎて、自分では全ては検証不可能になると思う。そうした、未検証の仮説のうち、多分オリジナルだろうと見通せるものをマスターに渡して、検証してもらう。こういう構造だと思う。実は、室長と室員の関係性も似ていて、かつて室長だった筆者には准教授の考え方は大体、推定が着く。そして、准教授や教授は学生の論文のラストオーサーになって、自分の実績が増えていく。こういう意味において、院生は教授のために働いていると思う。

その他もろもの。労働許可証とか

Ph.Dは労働許可証が取りやすい。今は無くなったが、労働許可証でなく、滞在許可証に近いtier1 generalもPh.Dは取れる。M.Philはある一定以上の職歴ありだと取れる。色々種類はあるが、イギリスの労働許可証は誰でも取れるものではない。

銀行借入も自分の与信でできる。連帯保証人は要らない可能性が高い。銀行に行って、途中まで話した。最終ドキュメントを読んでないので、連帯保証人は多分。

クレジットカードも最初500ポンド = 10万円(1ポンド = 200円)。限度額70万円まで伸びる。

博士候補生は色々優遇されているのである。

今回はここで、終わり。続きはまた次回。

著者略歴

金輝俊 / Hwi Jun KIM
戦略コンサルタント 兼 ITアーキテクト

ハイテクITベンチャーのProduct Manager / Chief IT Architect、Webベンチャーのグループリーダー、外資系IT企業のProject Manager 兼 Systems Architectなどを経験。会社を離れて数年後、Webベンチャーと外資系IT企業グローバル本社は、それぞれ東証マザーズとNYSEに上場した。

ファッションテックベンチャーのグロースハック室 室長 兼 システム開発部スペシャリストに。30人4部門を参謀長として指揮統括し、約10億円の株式による増資に成功。シーリズCへと導く。その後、起業。NMD Soft, Principalとして活動を開始。

社会貢献活動として、原爆の実相を伝えるためと、東日本大震災の解析のために、Nagasaki Archive、Hiroshima Archive、Mass Media Coverage Map of The East Japan Earthquakeなどの開発と一部企画に関わった。

主な著作にThe Real M.Phil Thesis: The Mathematical Foundation of Smart Material Systems / Yet Another Mori-TanakaMBA Thesis: The Modern Strategy from Japanがある。

筑波大学 第三学群 工学システム学類 学士(工学) First Class (イングランド基準。70%以上がA評価)

Coventry University大学院 Control Theory and Applications Centre, Master of Philosophy (Upper Master, Research Degree)。飛び級入学。返済義務無し奨学金付き。

主な受賞にアレスエレクトロニカ展Honory mention、経済産業大臣賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。

詳細なプロフィールはこちら:https://www.khj1977.net/profile/

以上

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