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(ダンサー・振付家)吉本 由美 さん

ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』公開記念企画「あなたのクリエイティブの教科書を教えてください!」クリエイターズインタビュー、第3回目は、ダンサー・振付家の吉本 由美さんです。

幼少の頃から、クラシックバレエ、ジャズダンスを学び、大学で映画を専攻。1995年、パフォーマンスグループ|flowers|立ち上げ。「flowers」「PARADISE」と称したシリーズ公演を手がけ、自ら踊るダンスを軸に演出・振付けの活動を行い、劇場、美術館、造船所、ヘアーサロン、写真館、丘、図書室、船上など、さまざまな場所で作品を発表している。子供の頃からもつ、「この世界の仕組みを知りたい」という思いから創り上げる作品群は、さまざまな角度からアプローチを重ねた、本人が見た、あるいは予感している「この世界の仕組み」。その、ユーモア、美しさ、強さと切なさが詰まった作品は、多くの人を魅了している。自らの公演のほか、演劇、TV、映画、CMなどへの出演、振付け、衣装も手がける。           http://yumiyoshimoto.net/

[公演情報]                           Kiiro新作展 x 吉本由美ダンスパフォーマンス9/12(金)19:30 開演

詳細はこちらhttp://www.emoninc.com/data/exhibition/140819kiiro/Dance_press_emon.pdf

©TAKUO ARAI

Q. あなたの『表現の教科書』を教えてください 

A. 教科書・・・・わたしの教科書・・・・。              と考えた時に、あ・これだあ。と思ったもの。

人から頂いた、1枚のカードです。表紙にはモノクロで子供が写っている。どこの国の子供かわからないけれど、クリームがはさまったクッキーを12段くらい重ねて、両手でがっしりつかんで食べようとしてる。到底一口で食べられる嵩じゃないんだけど、目一杯おおきくあけた口で食べようとしてる。両目はぎゅーっとつぶられていて、鼻にはぎゅーっとしわがよっていて、肩もぎゅーっとあがっている。必死で、クスッとさせられる。

Q.  そこからどのようなインスピレーションを得てどのように実践していますか?

A.  このカードを送ってくれた彼女は数回しか会ったことのない人で、もうこの世にはいないけれど、作品をつくっているときに、いつもいつも励まされる。重要なものって、鳴り物入りでやってくる訳じゃないんだなあ。文字にすると上手く伝わらないかもしれないけれど、

「食っちゃえ。」あるいは「喰っちゃえ。」と言ってくれる。

「食っちゃえ!」あるいは「喰っちゃえ!」かな?

表現そのものの時もあるし、それ以外のことなど、作品創りやパフォーミングにはいろいろな問題や迷いがいつも押し寄せる。目につくところに貼ってあるこの子は、見るたびにすごく新鮮に「食っちゃえ!」と言ってくれる。なので、自分を信じて、その時の問題も、全ての不安も、あらゆるものをひっくるめて、食っちゃうことにしている。

触発されたり、教えられたりする本とか映像とか美術とかはたくさんあるけれど、私の場合、自分のその時の状態で、対象は変わっていく。でも、このカードは、いつもかわらず、驚くほど新鮮に、何回でも、「食っちゃえ!」と教えてくれる。この、「食っちゃえ!」のうしろには「勇気」という言葉がうっすらと透けて見える。

Q.  あなたが表現する上で一番大切にしていることを教えてください

A.   むずかしい質問ですね。大切にしていることは微妙にいつも変化するように思える。また、どんなふうに変化するのか見たい気持も強い。とりあえず、具体的にいつもこころがけていることは2つ。

ひとつは、逃げないで考える。ごまかさない。

もう一つは、

最大の表現ツールである身体を、できるだけ隅々まで準備しておく。 

です。


次号もお楽しみに!

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