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自己主権型IDによって訪れる未来

私たちの活動領域はオフラインからオンラインへと移行し始めています。オンライン上で実現できる個人のアイデンティティはより一層重要な役割を担っていく事になります。

インタビュー前編は新しいIDによって訪れる未来の話を聞いていきたいと思います。

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Kohei: みなさん、プライバシートークにお越し頂きありがとうございます。今回はIoT分野の専門家Robさんをお招きして、デジタルIDとデータガバナンスに関してお話していきたいと思います。

なぜRobさんと話そうと思ったのか

Kohei: Robさん、本日はお越し頂きありがとうございます。まずはRobさんを紹介していきたいと思います。Robさんは、世界トップインフルエンサーランキングを公表するRise.Globalの#IOTトップインフルエンサーリスト100に選出され、CronycleのIoT分野ではトップ20に選出されています。

RFIDやIoTに関連した論評記事を数多く執筆され、Institute of Network CultureのNetwork Notebooks 02への寄稿も行っています。デバイスの開発を行う非営利組織BricolabsをChristian Nold氏と共同で立ち上げ、その他数多くのIoTとデザインに関する執筆も行っています。欧州のプロジェクトTagitsmartとNext Generation Internetではプロジェクトマネージャーとしてチームを率いています。

Robさん、今回はインタビューにお越し頂きありがとうございます。

Rob: ありがとうございます、Koheiさん。

Kohei: ありがとうございます。早速本日のインタビューの話に移っていきましょう。Robさんが立ち上げたIoT Counciに関してお伺いしたいのですが、こちらはどういった理由でスタートしたのか教えてください。

IoT Councilでは民主的にデータ化を議論する

Rob: Internet of Things Councilは2009年、約10年前に取り組みを始めました。元々は個人的な理由でスタートしていて、新しいIoTの分野で一体どういったことが起き始めているのか知りたくて始めた活動です。私自身はそれまで文学や言語を学んでいたので、新しい分野に関しても学んでみたいと思ったのです。

開発者は人々の過去の積み重ねのなかで論理や実践などを原動力に前世紀の1950年代から自動化を進めてきました。

世界全体を客観的に見てみると将軍、侍、カトリックの聖職者、商人といった人たちが過去から歴史を積み重ねてきています。こういった背景を通じて、今ではコンピューターやデジタル化が進み、アナログの時代から移り変わっています。

私の中ではまだアナログな世界が数多く存在していますが、そういった公園の風景や樹樹、水が流れる情景や人が歩く姿などがこれからはデータとして表現されていくことになります。

こういったデータ化の時代に私たちの歴史を振り返ると、データは私たちが歩いている風景の一部分を確認しているだけに過ぎないのです。こういった私たちの行動一つ一つが、新しいデバイスを通じてデータベースにより一層記録されていくのですね。

図 日々記録される私たちの活動と隠したいプライバシー情報

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もちろん今起こっていることは、私たちの活動に何か意味があるということではなく、行った活動がデータ層として記録され、データによって新しい活動が定義されていくことになります。

これは私たちがデータベースを生み出した時に考えていたことです。2030年には現実世界で私たちが本当は何を求めているのかがわかるようになると思います。しかし、アナログ世界にも富裕層や権力者が残り続けることは私には少し衝撃的です。長い歴史にはそれなりの起源があります。反対する人たちや野蛮な人たちが長い時間をかけて作り上げてきたのがこの世界なのです。

もちろん、日本でも過去に帝国の歴史に悲劇や恐怖があった時代もあるでしょう。その中で人々が声を上げて、これまで見ることのなかった世界に対して現実を悟った時期があったと思うのですが、今はそういったことが小さなグループから徐々に始まってきています。そして、データを保有する企業は自分たちでそういった世界を作ろうとしています。

IoT Councilではなぜそういった状況が起きていて、どのように実現していくのかを探索しています。そして、社会に生きる私たちが民主的にプライバシーなどのテーマを考え行動するための場として設計しています。

Kohei: なるほど。それはとても興味深い話ですね。Robさんの活動ではプライバシーを一つのデータ層として考えていて、それは特にコロナ禍ではそういった考えがとても重要になると思います。私たちはコロナ対策のアプリをはじめとして現在多くの技術的なソリューションの利用を進めていますが、その中には個人を特定できるようなものも含まれています。現在は予防という観点で利用が進んでいますが、こういった点は事前に伝えておく必要がありますね。

欧州のコロナ対策の現状

Kohei: コロナ対策アプリに関してはこれまでも使い捨てのIDを利用するなど様々な対策が検討されていましたが、こういった取り組みは効果的なのでしょうか?欧州では越境での活用を進めていくためにプライバシー保護を前提にして取り組みが進んでいると伺いましたが、実際のところお伺いできると嬉しいです。

Rob: そうですね。こういった対策は今の時期に非常に重要だと思っています。私たちのように日常生活を送っている人にとって、他者とのすれ違いは日常茶飯事です。外で友人や繋がりのある人たちと共に過ごすことに留まらず、家で一緒に過ごす際にも意識するべき状況にまで変わってきています。

そういった意味で、ツールを利用することは意義があるでしょう。全ての人が現在の状況をどれだけ深刻であるかを理解するのはとても難しく、日々様々な出来事が起こるため、具体的にどうすればいいのかも見えづらい状況です。欧州では多くの企業が倒産し、病院では医療従事者が働きながら対応している状況で、そういった人たちにとっては今の状況がとても深刻だと肌身を持って理解できる状態にあると思います。

ただ、そういった状況にも限界が来ているという声も少しずつ出ています。理解できる部分もありますが、難しい内容でもありますね。たとえば、欧州の国々でも十分に支援できるだけの資金が残っていない状況です。公共サービスを民営化していく方向性のため、国がデータを持つことなく民を中心とした議論を進めていて、欧州域内の国民のIDに関してもこういった議論が進んでいます。

これは、公共サービスの恩恵を受けている人にとって、政府が資金難に陥ることは一つの問題になると思っています。

自己主権型IDによって訪れる未来

Rob: 私の考えとしては、二つの大きな変化がくると思っています。一つは、公共分野に民間が参入すること。二つ目は、Google、Amazon、Facebook、Appleなどの新興テクノロジー企業が公共インフラ化することです。

大手のテクノロジー企業は、私たちの住む場所を作ったり、壊れた道を舗装したり、病院で診察したりすることはありませんが、こういった企業の参入に期待する声も多くあります。

特定の地域に住む人たちが増えることで新しい生活基盤が必要になると思います。自己主権型のIDに関する議論はまさにその中の一つの取り組みです。

自分自身がIDを持ち運ぶことができ、企業や行政の様々なサービスに自由にアクセスできるようになることはとても重要なポイントです。

コロナの時期にこういった議論は少しずつ進みつつあります。コロナ禍で懸念される広域の監視など、個人を特定するような動きはより個人側に権利を提供していく動きの一つになっていくのではないかと思います。

現在の追跡環境はBluetoothなどの技術を活用することが多く、プライバシーやセキュリティへの懸念からスマートフォンを通じて利用するアプリ設計は匿名化を前提にしています。そういった配慮がなければ個人が安心して使える環境ではないですよね。

現在のソリューションでプライバシーなどの問題を解決できない場合は、ハードウェア自体の管理についても議論が必要になると思っています。

図 クラウド管理からデバイス管理へ変化

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ハードウェアそのものが固有に特定できるようになれば、たとえば、個人が保有するデバイス内のチップを通じて自動で税金を支払うような設計もできると思います。モノがウェブに繋がることで、オンラインを通じたモノの証明につながっていくでしょう。

ウェブ上で自分の活動を記録できるようになりましたが、自分のデータを誰が管理しているのかはわかりません。企業か政府か実際に誰が利用しているかわからない複雑な状況を、できる限り予測しやすいシンプルな状況に変えていく必要があります。

具体的な例を上げると、私の活動を点となるデータを基に三日間追っていれば、私がどういった行動を日々取っているかわかるようになりますね。

月曜日に日用雑貨店で買い物して、火曜日にも同じ場所で買い物するだろうという予測は立てられると思います。シンプルに予測するために機械学習や人工知能を活用しているのですが、私の行動を予測しているわけですね。

もしこういった情報が私に共有されて、私自身が自分の行動を理解しその情報を通じて私自身が日々の行動をよりよくする事につながるのであればよいのですが、実際はそうなっていません。私自身はそういった監視の環境をカメラでの撮影も含めてそこまで気にしておらず、逆にネットに繋がっていない環境の方が不便に思います。

問題は、私が私に関するデータを確認できないことです。

図 知らぬ間にデータを取られ、確認できないケースも

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監視されている状況であったとしても、全ての人たちは自分のデータがどのように監視されているかを確認できる必要があると思います。こういった市民を中心とした環境づくりは現在進行形で進めていくべき変化ですね。

インタビューは後編に続きます。

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Interviewer, Translator 栗原宏平
Editor 今村桃子
Headline Image template author  山下夏姫


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