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あのミットに向かって 56話

4回の裏の藤巻高校の攻撃、6番、7番を打ち取り2アウトとなり、8番の松原の打席となっていた

松原:そろそろ手がつけられなくなってきたな

大谷は前の回から吹っ切れたようにいいピッチングを続けていた。

大:ふー
あと1人…

拓:低めに

大:コク

シュッ

ゴォ

ゴゥパァーン

審:ストライク

拓:ナイスボール

松原:真っ直ぐ一本で

拓:真っ直ぐの調子が良いからそのまま攻めていく

大:コク
ンァ!

シューーー

松原:フン!

カキーン

大:!?

ボコッ

大:ウッ!

拓:大谷〜

実況:今、鋭い当たりが大谷の足首に直撃しました
大丈夫でしょうか

グラウンドに選手達が集まります

拓:大谷大丈夫か?

大:痛いっすね

拓:(クソッ、左足首か。踏み込む時に大事なところ)大谷一旦ベンチに下がれ

大:えっ!俺は大丈夫です。

拓:大丈夫であることを確認してこい

大:わかりました。

実況:一旦大谷選手ベンチに下がります。

結:あれは痛いな

拓:もしかしたらこれ以降投げれないかもですね

真美子:大丈夫かしら

翔平:見た感じ足首だからなぁ
厳しいかもな


ベンチ裏

救護:これはどう?

大:それは大丈夫です。

救護:こうは?

大:うっ!

救護:投げるのをやめた方がいいかもしれませんね
打撲してますね。一応病院でレントゲンもとった方がいいでしょう。ヒビも入ってるかもしれませんし。今後のことも考えると…

大:投げたいです。監督!

真剣な眼差しで監督を見る健吾

監:それは出来ない。
ここでお前の野球人生を終わらすわけにはいかない

大:ここで投げないと俺、絶対後悔します。

監:お前はもう限界だった…
だから、この回を抑えたら交代させるつもりだった

大:!?
そんな事は決して…

監:この暑さにお前の体力は奪われていた。
正直、お前が1番分かってたんじゃないのか?

大:………ガクガク

監:病院は試合後行かせます。その間は氷でアイシングさせます。

救護:わかりました。
試合終了後直ぐに、車を廻します。

監:ありがとうございます。

スタスタスタスタ…

〇〇:健吾!

大:………

〇〇:お前の気持ちはよくわかる。
俺も怪我をした!たくさん迷惑かけた。お前にも。
でも、健吾は俺の分まで都大会決勝で投げてくれた!次は、俺が返す番だ!
お前のピッチングはこのチームを勢いづけてる。誰もがお前を凄いと思っている。
あとは俺たちが必ず優勝してやるから、黙ってベンチで観とけ!

春:〇〇君…

大:生意気…

〇〇:えっ!

大:生意気って言ったんだよ!

〇〇:何でそんなこと言うんだよ!

春:元気戻りましたね。

竹:良かった

大:その代わり負けたら許さないから!

〇〇:分かったよ。ぜってぇ負けね〜

ウ:ここで選手の交代をお知らせします。

観客:えっ!!
やっぱりダメだったか。
まだ観たかった〜

ウ:ピッチャー大谷君に変わりまして

背番号18、



"森田〇〇君"



7番、ピッチャー、森田君

観客:ここでまた1年か
この投手もいいピッチングするんだよな

期待してるぞ!森田〜

1塁側スタンド雷道ナ:やらかすなよ!
絶対抑えろ〜〜

実況:一塁側スタンドが息を吹き返したかのように声援が送られています。

そして、この人立ちも…
史:ママ!〇〇が出てきたよ!!

史母:あら、そうじゃない!

史:決勝に〇〇が出てる。ウル

史母:泣くの早いわよ笑
〇〇君ならこの場を自分のものにするんじゃないかな

史:私もそう思ってる。いや、絶対なる

そして…
蓮加!〇〇君出てきたよ

岩:マジ!!

梅:ホントに釘付けになったよね

岩:だってカッコイイもん

梅:史緒里も呼べば良かったね

岩:史緒里は1人で見て号泣してるんじゃない?

梅:そうかもね笑

その通りでした。

拓:お前かよ

〇〇:えっ、ダメですか?

結:正一郎だと思ってんだけどな

〇〇:キャプテンまで

西:苦しくなったらいつでも飛び蹴りしにくるからな ボン!

〇〇:いや、もう蹴ってる!

濱:俺は〇〇ちゃんな気がしてたよ

〇〇:味方は濱田先輩だけです。

拓:さぁ、決勝の舞台だ
準備は出来てるか?

〇〇:沢山やってました。

拓:お前らしいよ
ここで求めるのは個性。
お前の全てを俺にぶつけてこい

〇〇:はい!

さぁ、きました。決勝戦

もう4回ですが何のその!
いつものように目の前のバッターを打ち取るのみ
日々野球に費やしてきた時間こそ誇り!
これまで戦ってきた相手にも感謝
まだ1年ではありますが、グラウンドに立てば関係ない。
全ては優勝するために
一球一球全力で投げていくのでバックの皆さん、
そして観客の皆さんよろしくお願いしゃす!

春:よく噛まずに言えたね

齋:そこまで言うなら期待しとく!
全部ぶっ倒せ!!

拓:言わないと始まらないもんな

観客:期待してるぞ〜

史:聴きたかったなぁ
テレビでも流してほしいよ

史母:あれ昔からやってるわよね

史:アレないとこっちが心配するもん。
でも、観客も盛り上がってるからいい事言ったんだろうね

正宗:やっぱり面白い奴だな。やっとお前と投げ合える。楽しみにしてきて良かったわ

ウ:9番、レフト、津幡君
津幡:変則左腕。ビデオからではわからないあの感じ。でも、対戦する打者がアレだけ振り遅れてる
何かあるな

拓:急な登板。初球外して〇〇の状態をみるか?

いや、カウントを悪くして不利になるのはこっちだし、〇〇の良さを台無しにしてしまう
求めているのは、全球勝負できる球。

初球アウトコースにフォーシーム
下位でも狙ってくるぞ

〇〇:コク
健吾…
アレだけのピッチングをされたら、俺も負けてられないよな
向かう先は健吾も同じだろ?

"エース"

いずれはどちらかがつけることになる。
それまで2人で高め合っていこう

ザーッ 身体リラックス

ドン 強く踏み込む

腕がしなるように…
全神経一点集中

"ココッ"

ンァラ!

拓:(お前が持ってして生まれたスピンの効いた綺麗な真っ直ぐ!)

シュルルルル

ズッバァーン!

審:ットライク!!!

藤巻ナ:!?

津幡:何だ今の
ボールが途中からもう1段階球威を増してきやがった

拓:次はムービングを

拓:ンァ!

カキーン

審:ファール!

観客:続けてアウトコースにムービング
さぁどう締める

津幡:変化球か同じコースに真っ直ぐか
どう来ようとも必ず繋いでやる
思い通りにはさせない

拓:………

ダン(踏み込む音)

ン!

ズバン!
津幡:うっ

正宗:うほぉっ!

実況:バッター津幡手が出ず。
インコースストレート!見逃し三振〜
遊び球なし!
3球でこの回を切り抜けました!!

〇〇:しゃぁあ!!

観客:うぁあああ
雷道ナ:しゃぁ!!!

実況:甲子園がどよめきます。

拓:ほぼ構えた所だった。今日は今までで1番いいかもな

実況:4回を終了して1ー1の同点で5回に入ります


統:どうだった?津幡

津幡:外で見るよりもだいぶヤバかったです。
球速というよりも球威。
リリース部分が見えない分タイミングは取りづらいです。

統:ミートがあるお前でもそう思うならそうかもな
これは次の一点が鍵になるぞ

この回も抑えて、正宗に点取ってやろうや!

藤巻ナ:シャァア!!!!

ウ:5回の表、雷道高校の攻撃は、
8番、ライト、橋本君
橋:しゃっす!

正宗:スゥハァー

統:インコースに

正宗:下から突き上げてくる感じたまんねぇな
悔いのないようどこまでもやり合おうじゃねぇか

ンラ!!

ビュン

ズバーン

審:ストライク

実況:2球目

ンァ

ゴゥ

カキーン
橋:クッ

審:ファール!

正宗:まだ足りねぇな

もっと鋭く!
ギュイーーン

ゴゥパァーン

審:ットライク アウト!
実況:最後は縦のスライダー
これがなかなか捉えられません。
雷道高校

〇〇:凄いな

拓:あれが3年生の執念だ
打席でもわかるくらいボールに勢いがある

〇〇:(ヤバい、胸の高鳴りが治まらねぇ)

統:正宗の本気はこれからだ!

ん、ゴゥーーーー

ザーッ

バン

実況:空振り三振!
最後はスプリット!
落ちるのが早かったのにもかかわらず、バッターは手が出てしまいました。
それ程キレているのでしょう

果たして点を取ることはできるのでしょうか

5回表を終了し、なおも1ー1。
同点です。


ウ:観客の皆様も本日は気温が高くなると予想されます。十分に水分をとっていただきますようお願い致します。


監:今日はいつもより暑い。
しっかり水分摂っておけ

雷道ナ:はい!

齋:どう見てる、哲。

結:前の回までは荒れてたけどこの回からギアを上げてきた感じはある
打席に立たないとわからないが、早目に点を取りたい

齋:そうだよな
少しでも楽に投げてほしいからな

町:僕達が点を取ってやらないとね

竹:頼むぞ

結:おう

藤巻高校サイド
藤巻監:正宗!大丈夫か?

正宗:はい!大丈夫です

監:統から見てどうだ?

統:自分から見ても大丈夫かと
ボールに勢いも増してきましたし、これからかと

藤巻監:それなら大丈夫か
で、相手の投手はどうだ

統:まだ何とも言えないですね
打席に立たないとわからないですけど、津幡があそこまで振り遅れてるということは相当キレてるとは思いますね。タイミングも取りづらいと言ってましたし。

藤巻監:そうだな
全員聞け!全部の球を振りにいこうとするな
それぞれ狙いを決めて、振りに行く時は迷わず振り抜け。球速が前の投手よりある訳ではない
振り抜けば内野の頭は越えるはずだ
いいな!

藤巻ナ:はい!

拓:向こうはおそらくじっくり見てくるはずだ
場合によってはサイン出すからな

〇〇:はい!
ふー

拓:今までのこれまでのお前がやってきたことを示す時だな

〇〇:言わば現時点での俺の集大成…


結:行くぞ!!

雷道ナ:しゃぁあ!

統:点取っていくぞ!

藤巻ナ:しゃぁあ!


アクシデントもあった雷道高校
それでも抑えた〇〇
一度は崩れかけた正宗
それでも仲間により息を吹き返した

〇〇vs正宗の熱い投げ合いが始まる

どちらが先に点を取るのか

そして、勝つのはどちらなのか

To be continued…

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