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帰省の苦手なこと

お盆休みが珍しく長く取れたので、実家に帰省した。学生時代と違って帰省にかかる費用を捻出するのが苦ではないはずなのに、社会人になって帰省が苦手になった。帰りたいという欲求よりは帰ったほうがいいかな、という体裁で帰るようになって幾年月…。これは確実に20代半ば〜後半という年齢による周囲の期待と同年代の親族の結婚・出産の影響が大きいと思われる。

しかし、コロナ禍、30代に突入し、帰省に関する考え方が新たなステージになったことを実感し始めたので書き留めておこうと思う。

親戚の集まりが苦手

実家は絵に描いたような田舎の為、盆と正月は親戚で集まろうという風習が残っている。ただ、感染症の影響や高齢化の影響、時代的な流れは大いに受けており、自分が小さい頃やっていたような、本家に親族大集合!!という大規模な集まりは無くなった。
そんな、規模が縮小された親戚の集まりがなぜ苦手なのかというと、私には親族の集まりで出来る話題が無いからだった。普段会わない人とたまに会うと、いつ結婚するんだ、子供はどうするんだという話題で持ち切りになり、のんべんだらりと生きてきてそんな予定のない私はいたたまれなくなるのであった。相手が気を遣って話題を振ってくれたにしても、センシティブな話題すぎて返答に困るのである。盛り上がるような話題提供も出来ない私は、ヘラヘラと笑ってその場をやり過ごすしか無い。
しかし、30代のお盆は違う。話題の中心は祖父の認知機能低下及び親族の安否確認になっていた。祖父の物忘れが顕著になって張り紙が増えていく我が家の一苦労や、やれ誰が死んだ、やれ誰が病気になったの情報交換であっという間にお盆の集まりは終了となる。参加者の高齢化が顕著で長時間飲酒を続けられないこと、入眠時刻が早いことも影響し、30代の人間が結婚していようがしてしていなかろうが、そんなのは二の次なのだろう。

実際、私に振られた話題は申し訳程度で

親戚「結婚したの?」
私「してないよ。」
親戚「ふーん。令和は結婚だけが幸せじゃないもんね。」

−終了−

そして、令和の80代すげぇ…。高齢になってから価値観変えられるってすげぇ…。と、たまげた集まりであった。

親戚の価値観がアップデートされているからなのか、もう結婚を期待される年齢ではないからなのか、他に気にすることが多いのかは分からないが、昔ほど親戚の集まりが大変と感じることは無くなった。

手持ち無沙汰

帰省して困ること、それは手持ち無沙汰なことである。
何を隠そう我が実家、Wi-Fiどころかインターネット環境がないのだ。スマホで動画を見ようものならあっという間に通信制限になってしまう。気軽にSNSを見ることも出来ない、陸の孤島なのである。
普段のWi-Fi環境ではYouTube垂れ流し、時間があればSNSを開いては閉じる生活をしている私には耐え難い環境である。

え?友人と遊びに行けばいい?そんなセンシティブなことを言ってくれるな。交友関係が狭い&実家を離れて10年以上経つ&友人が家庭をもっている(かもしれない)私が実家に帰ってきたからと気軽に友人を遊びに誘えるわけが無い。友人を誘えない私はお盆期間中出掛けることもせず、黙って家にいるしか無いのである。

そんな我が実家にあるものといえば、漫画だけである。高校卒業までに私が集めた漫画も、その後親が買い続けた漫画も大量にある。墓参りと親戚の集まり以外は特に何もせず漫画をひたすらダラダラと読んでいた。
これは、学生時代に憧れた宿題の無い夏休みというものではないか…!そんな贅沢な時間を過ごし、自宅にある『あたしンち』と『銀の匙』等々を読破してきた。今更だが、電子書籍を大量にダウンロードしてくれば良かったと帰り際に気付いた。

別れ際

何年経っても慣れないものが、改札での別れ際である。
帰省に限らないのだが、改札でバイバイをしてから切符を通して改札に入り、その後改札内から見送りに対して振り返って手を振ることが出来ない。なんとなく気恥ずかしさを覚えるのと、振り返ってしまうと寂しくなって改札の外にまた戻りたくなるからのような気がする。
また、名残惜しくなるならまだしも、振り返ったときに相手が既に居なかったら別の寂しさでちょっと泣いてしまうかもしれない。そんな些細なことが怖くて振り返ることが出来ずに幾年月。親はどう思っているか聞くことは出来ていない。
改札通ってから振り返るべきか否かは永遠の悩みである。

実家に帰る度に思うのは、私はまだ甘ったれた子供であるということだ。
自分が親の立場になったことがないので、子供が何もせずグダグダとしている苦痛とか、毎食を考えなければいけない負担がどれほどのものかはわからない。
それでも、「帰ってきてくれてありがとう」と言われるのだから、実際親が私の体たらくをどのように思っているのかはさておき、手土産を持って帰るのが親孝行かと考えて帰省をしている。

親になっていない私が子供から抜け出せるときはくるのか、抜け出せるときはどんな役割を持つというのか。自分が親になるということは考えられないので、子供という立場から抜け出せる方法が全く思いつかないまま、帰路につくのである。

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