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米国のイケてるHRテックサービス「HR Cloud」を調べてみた

近年、世界のHRテック市場は急速に拡大しており、米国のCB Insights社の調査によると、その市場規模は140億ドル(約1兆5000億円)と言われています。

日本のHRテック市場規模は世界と比べるとまだまだ小さいものの、2018年度は225.4億円(前年比143.9%)と大きく伸び、2023年度には1000億円以上の市場規模になると予測されています(ミック経済研究所の調査による)。

日本では働き方改革の推進やタレントマネジメントの効率化が企業に求められていることから、HRテックは人事領域の様々な課題を解決できるツールとして期待されているのです。

日本のHRテック市場はまだ発展途上ですが、アメリカ、イギリス、カナダ、インドはHRテック先進国と言われています。中でも、アメリカは世界のHRテック市場の約6割を占めているといわれています。

本記事では、HRテック先進国であるアメリカのサービスから「HR Cloud」をご紹介します。「HR Cloud」が提供するサービスから今後の日本のHRテック市場の動向を探ることができるかもしれません。

1. HR Cloudが提供する4つのサービス

HR Cloudは人事業務を合理化するだけでなく、従業員同士の交流を促進することで、楽しいオフィスカルチャーの構築に役立つHRテックサービスです。全てのデータはクラウドに保存されるため、従業員はいつでも、どのディバイスからでもアクセスが可能です。

HR Cloud が提供するサービスは下記の4つです。これらのサービスは企業のニーズによってカスタム可能であり、ユーザーは必要な機能のみを選択して購入できます。

【HR Cloudの4つのサービス】
・「オンボード」新規採用者の入社手続きをサポートするソフト
・「リクルートATS」応募者追跡システム
・「ピープルHRMS」従業員情報を一元管理
・「ワークメート」従業員プラットフォーム

2. 気になるHR Cloudの特徴

まずは、HR Cloudが提供する4つのサービスの特徴についてご紹介します。

2.1 「オンボード」新規採用者の入社手続きをサポートするソフト

「オンボード」は入社第1週目に行う、わずらわしい書類手続きを簡単にするソリューションを提供するソフトです。デジタル承認で入社時に提出する公的書類の記入から提出、監査までをサポートし、役所への提出漏れを防ぎます。また、給与口座振替依頼書等、入社初日に提出する採用関連書類をペーパーレスで処理します。書類の提出はペーパーレスで電子署名に対応しているので簡単に行えるのも魅力です。

情報の管理面では、従業員の在職期間を通して、公的な認可書や免許証の管理に対応できるように定期的なタスクを自動設定することが可能です。
ダッシュボードには従業員情報がすべてレイアウトされており、不足情報を正確に確認できます。また、直観的に構成されているダッシュボードは使いやすく、ポータルをパーソナル化し、合理化したシステムとユーザーが必要なツールが提供されます。

また、採用・応募者の追跡、パフォーマンス管理、給与計算等を他社のシステムと連携することが可能です。

2.2 「リクルートATS」応募者追跡システム

「リクルートATS」は求人掲載、候補者評価、人材採用をサポートするシステムです。新規応募者を効率的かつシームレスに採用できるよう応募者を管理します。

求人広告は一度作成するだけでIndeed、Glassdoor、Monster、ZipRecruiterなど複数の掲示板に投稿できます。また、利用者に優しいインターフェイス設計で、応募者からのアクセスも簡単です。

応募者追跡システムは応募者を整理し候補者をストックするので、テキストやメールで面接の設定や採用通知の自動配信が可能です。そして、募集を行っていない次の採用までの準備期間も、システムがデータベースを維持します。募集要項の特定から採用通知まで、採用プロセスのカスタムが可能であり、作業を保存することで、プロセスを複製して今後の募集に流用できます。

求人掲示板のヘッダーとサイドバーは、会社概要やソーシャルメディアのURLへのリンクを掲載することでブランド化でき、応募者にアプローチすることが可能です。またHRCloudが提供するソフトで、募集職種の作成、入社試験問題の掲題など、リクエストフィールドを簡単にカスタムすることができます。

入社手続きの際は、応募者情報のロールバックによりデータの再入力は不要です。システムに格納されたデータは、給与計算やバックグラウンドチェックなど、あらゆる種類のデータに流用できるのです。

「リクルートATS」が作成する応募者レポートは、自動的に収集された履歴書データを数値で分類し作成されるため読みやすく、最適な候補者を特定するのに役立ちます。

2.3 「ピープルHRMS」従業員情報を一元管理

「ピープルHRMS」は従業員情報を一元管理することで、記録システムの合理化を実現します。文書やファイルを単一のデータベースに保存し、クリックするだけでレポート作成を可能にします。スマート検索機能を使えば、給与や過去の記録等の履歴情報に簡単にアクセスすることも可能です。

気になるセキュリティ面では、エンタープライズレベルのセキュリティが提供されており、マルチベンダーファイアウォールとカスタム化されたセキュリティプロトコルで万全のセキュリティ体制が整っています。

従業員、役職、場所などの変更はリアルタイムで組織図に反映され、カスタマイズしやすい従業員データベースは、応募者の追跡から入社まであらゆる業界のプロセスを合理化します。膨大な従業員データからさまざまなレポートも作成でき、休暇情報の把握も可能です。

従業員ポータルには、専用のメッセージ、ビデオ、文書化機能が用意されており、ソーシャル機能を活用することで従業員同士の結束を高められます。

2.4 「ワークメート」従業員プラットフォーム

「ワークメート」は従業員同士で業績を認識し合うことで、チームのコミュニケーションを推奨し、チームでの計画の実行を助ける詳細な通知システムです。

タスクの遂行に必要な情報と専門知識をチーム内で共有することで、コラボレーションが生まれる仕組となっています。デスクトップまたはモバイル上のポータルを通じて、知識の共有や、共有情報のリポジトリの編集が可能です。有用な記事や話題を従業員に提供することで、業界のトレンドを保つことにも活用できます。

社内SNSでは、従業員の業績を認識し、報奨で動機付けすることができます。カスタム可能なバッジやデジタルハイタッチ、コーヒーショップの優待カード等のグッズで従業員の働きに報いることが可能です。自動化された投稿機能を使用して、成果とマイルストーンをチーム全体で共有することもできます。

インタラクティブなアンケートなどを実施することで、従業員はチームとしての一体感を感じられます。また、従業員エンゲージメントツールを追加することで、コミュニケーションをもっと楽しくできます。Slackや他のアプリを連携すれば、オフィスの壁を越えたコミュニケーションも可能にします。リアルタイムで更新される勤怠状況と共有カレンダーにより、タイムゾーンが異なる場合でも全員が同じページに表示されるため、離れた場所で働く従業員との距離を近く感じることができます。

「ワークメート」では、従業員が目標の達成に向かって進めるように、継続的で漸進的、肯定的なフィードバックを奨励しています。

HR Cloudが連携可能なサービス
HRCloudのさらなる特徴は、現在使用しているツールをシームレスに連携できることです。連携可能な主なサービスは下記の通りです。

3. 【HR Cloudが連携可能なサービス】

[応募者追跡]
- リクルートATS(HRCloudが提供している応募者追跡システム)
- コンパス(SaaS採用ソフト・人材管理システム)
- グリーンハウス(適切な人材採用に役立つ応募者追跡システムとツールの設計ソフト)
- ジャズHR(採用目標を上回るよう支援することを目的とした採用支援ソフトウェア)

[人物調査]
- チェッカー(高度なAI技術を使用した人物調査ソフト)
- ESR(迅速・正確・手頃な価格で、コンプライアンスに準拠した情報を提供)

[給与支払]
- ADP(給与計算・福利厚生・退職後サービスを提供)
- クイックブック(経費精算・請求書管理・支払い等の機能を備えた会計ソフト)
Ultipro(金融・ヘルスケア・小売・製造業向けHCMソリューション)
パフォーマンス管理
Engagedly(シンプルでシームレスなリアルタイムパフォーマンス管理システム)

[ユーザーID管理]
- オクタ(既存の企業資格情報を使用してHR Cloudにアクセス)
- OneLogin(多要素認証などとのディレクトリ連携を提供するクラウドID管理プラットフォーム)

[シングルサインオン]
- Google Apps for Work、オフィス365(サインアップしてHR Cloudにサインイン、登録連絡先をHR Cloudに連携)
- Yammer(社内のコミュニケーションに使用されるフリーミアムエンタープライズSNS)
- LinkedIn(ビジネス志向のSNS)

4. 日本のHRテックサービス

それでは、日本国内のHRテックサービスにはどのようなものがあるのでしょうか。日本のHRテック市場では、1社でHR機能を網羅しようとしている「完結型」と、複数社の機能を連携させて使用する「API連携型」の2通りあります。

ちなみに、本記事で紹介したHR Cloudは「完結型」です。ここでは「完結型」と「API連携型」のHRテックサービスについて解説します。

4.1 1社で完結型

「完結型」HRテックサービスは自社で人事業務の機能を網羅しようとしているサービスです。日本では、株式会社Donutsのジョブカンやネオキャリア社のjinjerが完結型のサービスです。 

すべての人事業務の機能を自社で網羅しようとしているため、APIがなかったり、他社にあるのにそこには不足している機能があったりします。

4.2 複数社API連携型

「API (Application Programming Interface)」とは、システム間でデータやプロセスを共有することです。その共有された情報を第三者に対して開示することをOpenAPIといい、このOpenAPI構想で各サービスのデータ同期がされています。

しかし、自社の使っているサービスにAPIが無かったり、APIがあっても必要なデータが同期されなかったり、同期タイミングをコントロールできないという可能性があります。

「完結型」と「API連携型」、どちらのHRテックサービスも必要な機能を包括的に管理することが難しい可能性があります。

<最後に…>

日本では、働き方改革の推進や社会のグローバル化により、大手企業だけでなく中小企業でもHRテックを導入する会社が増えています。HRテックは業務の効率化を実現するのはもちろんのこと、従業員エンゲージメントの向上も期待できるツールとして注目されています。従業員エンゲージメントが向上することで、優秀な人材を確保し企業の発展に繋げることができるのです。

HRテックの導入を検討しており、現在お使いのツールとの連携でお悩みの企業様はぜひ弊社までお気軽にご相談ください。
https://www.pavlov-inc.co.jp/#contact

参考:
HR Cloud公式ウェブサイト
HR Tech Market Map: 145+ Startups Reinventing Human Resources
ミック経済研究所、「HRTech クラウド市場の実態と展望 2017 年度版」を発刊

ありがとうございます!