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【年明けが天王山】GAFAM vs クリエイター連合 ~生成AIの著作権論争~

こんにちは、パトルです。

クリエイティブやAI界隈の人はみんな興味を持っている生成AIの著作権問題の現状についてお話します。ちなみに、私はAI推進派ではありますが、著作権の問題に関しては複雑な気持ちもあり、双方の立場で今まで記事を書いてきました。それでは本題です。


生成AIの著作権問題をおさらい

生成AIの著作権で日本で一番話題になっているのは、クリエイターの文章や画像が無断でLLM(大規模言語モデル)に学習されている問題ではないかと思います。一方、これに対応する有効な法律がなかったり、現行の法解釈だと無断学習自体は問題がないというが通説です。

日本では現実的な議論は進んでいない

資料:https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/93903601_01.pdf

著作権に関する詳細の説明は避けますが、日本でのAI著作権の状況をわかりやすく要点だけ列挙します。(詳細は状況によって変わり得ます)

  • AIが著作物を学習しても問題ない

  • たとえ学習不可を表明している著作物を学習しても問題ない

  • AI利用者がAIを使って文章や画像を生成しても著作物に似ていなければ問題ない(似ているという定義はかなり複雑)

  • 既存のキャラクターを生成しても具体的な著作物(ポスターとか)と違うポーズを取らせれば商標権が取られていない限り問題ない(販売しなければ商標権があっても問題ない)

世界で一番AIに寛容であるといわれる所以です。詳しくは、こちらで説明しているので良ければご覧ください。

文化庁は、生成AIの普及に伴い令和5年6月に生成AIの著作権に関する方針を発表しました(上記の動画参照)。この内容を加味した上で、先ほどの箇条書きの要点は作成されています。その後、議論は継続されているとされていますが、新しい方針やコメントは出ていません。

日本のAI著作権は米国の動向に左右される

米国のAI著作権についてすごく簡単に説明します。

米国は日本と共にAI政策に寛容であるといわれますが、米国ではAIが著作物を学習することはグレーになっています。日本では問題ないとされているので、日本の方が寛容度は高いといえます。

グレーの意味について補足します。米国にはフェアユースという考え方があります。フェアユースとは「批評、解説、ニュース報道、学問、研究を目的とする場合、著作権のある作品を許可なしで『限定』利用することを著作権法違反としない」抗弁事由です(権利侵害をしていない!と主張できる)。つまりフェアユースに当てはまれば著作権侵害になりませんが、フェアユースになるかは実質的に裁判をしてみないとわかりません。

つまり今の米国の状況を簡単にまとめると「AIによる著作物の学習について、AI提供者はフェアユースにあたると主張しているが、クリエイターはフェアユースに当たらないと主張している、でも裁判所も過去の事例が少なく判断しづらいのでどうしたらいいかわからない」という状況です。

なぜ、日本のAI著作権問題が米国の動きに依存するかといえば、基盤モデルを提供するAI提供者はほとんどが米国企業だからです。EUでも今年新たなAI規制を定めましたが(施行は2026年)、結局「EU域内のユーザーにサービスを提供するならば」AI規則が適用されるというものになっています。日本で独自の著作権ルールを発表しても、日本のアニメを学習されて米国やヨーロッパで使われたら意味がありません。
※EUのAI規則は著作権の内容がメインではありませんが、EUで作ったルールはEU内の利用者しか対象にならないという文脈で例示しました。

米国著作権局が動いた

2023年8月30日に米国著作権局は、著作権法上の課題などを調査するための意見募集を実施すると発表しました。これは幅広い関係者から意見を集めるものですが、ヒアリングの内容には「著作権で保護されたどのような教材がAIの学習に使用され、それらの教材はどのように収集・管理されているのか」といった技術的な内容も含まれています。提出の締切は11月29日までとなっています。つまり、来年には議論と方針が出されると思われます。


すごいバトルになる予感

米国著作権局の意見募集にはMeta、Microsoft、Google、Apple、OpenAIが、AIの著作物学習はフェアユースにあたるため規制すべきではないと主張しているという記事が出ました。

私は以前の記事で、イーロンマスクがAI脅威論を唱えてAI規制を訴えていたこと、大手AI提供者のCEOたちが自らバイデン大統領に会いに行き、AIの危険性に対応する合意したことの真意は、著作権問題から目を逸らせるためのロビー活動であると分析しました。なぜならば著作権問題こそが基盤モデル提供者の最大の経営リスク(巨額の賠償金)であるからです。つまり、AI提供者にとってAIの著作権問題は負けられない戦いです。

一方、ハリウッドでは脚本家組合や俳優組合が大手スタジオに対してストライキを起こしていましたが、2023年9月、大手スタジオが折れる形で決着しました。

ハリウッドの一件で団結力を見せたクリエイター連合が勝つのか、政治力を駆使するAI提供者連合が勝つのか、米国著作権局の判断から目を離せません!

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