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幽霊との同居生活

 私の部屋には幽霊がいる。
昔から霊感が少しあり、幽霊を見ることがたまにあった。
嫌な感じがするな、と思った場所を霊感が強い友人に聞くと、あぁ、あそこはいるからねー。ありさみたいに中途半端な霊感の持ち主は、取り憑かれやすいから、近付かない方が良いよ、と言われたこともある。

 そして、この家に引越をしてきて、自分の寝室に入った瞬間、あ、ここいるなって思った。
内見の時には、気付かなかったなぁ。
事故物件とも聞いていない。
ありさは困ったな、と思う。
だが、もう引越をしてしまった。
幽霊がいるので、部屋を変えてください!
そんなこと言ったら、頭がおかしいと思われる。
仕方がない。悪い幽霊ではないかもしれないし、様子をみることにしよう。

はじめは、いわゆるラップ音で、睡眠の邪魔をされた。
無視無視。
ありさの経験上、怯えたりすると、調子に乗るので、無視が1番良い対応だ。

次は金縛りにあい、うっすら目を開けると寝ているありさの上に正座していた。
昔お祓いに行ったときに教わった呪文を唱えようか、悩んだが、これも無視した。
そのうち諦めるはず。
これくらいじゃ、負けないからね。
こっちも生活がかかっているのよ!
ありさは、心の中で叫ぶ。

はっきり見えたわけではないが、幽霊は男性ということが分かった。多分そんなに古い時代ではなく、最近の30代くらいの男性に見えた。

 それ以降、気配やラップ音が聞こえることはあったが、金縛りや姿をみることはなくなった。
ありさは勝った!と思った。

 そんな幽霊との同居生活の中、ありさは長年付き合っていた恋人から別れを告げられた。他に好きな人が出来た、と言われた。涙は出なかった。
5年も付き合って、他に好きな人が出来たか。
ありさの年齢も考えろよ!年齢を重ねてしまったありさには結婚という道は狭くなってきている。
年上なら許そう。しかし相手は若い子だろう。伊達に5年付き合っていない。言わなくても分かる。
全く若い子には、未来があるんだから、世の中の男性は年齢を重ねた女性の味方になって欲しいものだ。
ありさは悲しみを怒りに変えることで紛らわす。

その夜、久しぶりに金縛りにあった。
弱っている人間に幽霊は、取り憑きやすい。
くそぉ、弱っていると思って、調子に乗っているのか!?

ありさは携帯電話を取り出す。
友人達が幽霊と同居していることを信じてくれないため、録音アプリを使用し、ラップ音を聞かせた。
それを聞いた友人達は、紛れもないラップ音を聞き、信じてもらえたが、早く引越なよ、と結局ドン引きされた。

習慣になっていたため、昨日も録音をしていた。
夜中の3時、丑三つ時。
高らかに笑う男性の声が録音されていた。

おい!

ありさは口に出してしまう。
やられた。ありさは笑った。

バカにされたのか、
もしかしたら励ましてくれたのか、
どちらか分からないが、元気をもらった。

幽霊との同居生活も悪くない。

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