【弁理士による解説】起業家が意外と知らない特許制度のしくみ
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【弁理士による解説】起業家が意外と知らない特許制度のしくみ

フィラー特許事務所|弁理士・中川真人

 スタートアップ企業、小規模事業者の知財支援を行っているフィラー特許事務所の弁理士・中川真人です。
 今回は、特にこれから起業を行う法人設立前の起業家に向けてのメッセージです。スタートアップに特許は必要か、まず何から始めれば良いのか、弁理士が直接ご説明いたします。

これは特許になりますか?→技術的な困難性を克服した発明であれば可能です。

 特許になるかならないかは、課題解決の手段に技術的な困難性があるかないかで8割方決まります。例えば「顔を近づけることでロック状態を解除する」というプログラムを考えた時、①何かしらのセンサーでデジタルデータを得て、②ロックを解除して良いかを「人間の判断を介さずに」GO or STOPの結果を得て、③実際にロックを解除するという3ステップで処理を走らせることにしたとします。
 このとき、①何かしらのセンサーでデジタルデータを得ることが簡単か、②そのデジタルデータからロックを解除して良いかを「人間の判断を介さずに」GO or STOPの結果を得ることが簡単か、③その結果を受けて実際にロックを解除することが簡単か、そして、各①→②、②→③のステップを一連に走らせることが簡単か、をそれぞれ判断します。
 そして、これらの各ステップを達成するのに技術的な困難性がある部分について、特許を受けることができる可能性が出てきます。ここで注意すべきなのは、誰を基準に技術的な困難性を判断するのかという点と、各ステップの着想の困難性も考慮に入るのかという2点です。
 技術的な困難性の判断基準は、法律的には「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(特29条2項)」と呼ばれる人を想定して行い、この例ではロック解除を取り扱う標準的な(業界偏差値50程度の)プログラマーを指していると考えていただいて間違いありません。

困難性の判断基準は誰か?

 次に、各ステップの着想の困難性については、残念ながらどんなに優れた思いつきや「これはよく考えたな!」というひらめきであっても、それ自体では「技術」として成立していない限り特許の対象にはならず、仮にそのアイデアが技術的にそれほど困難性もなく達成できるのであれば、日本の特許法ではやはり特許にはなりにくいです。これは、日本の特許法が発明の定義を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」という厳格な定義規定を設けているからで(特2条1項)、発明は高度な技術性を有するものと、発明の要件に組み込んでしまっているからです。
 ですから、「優れた思いつき」は特に誰にも知られないように秘密にする必要があります。この「秘密の状態が守られていること」を、法律的には「非公知」と言います。特許を得るには、課題解決の手段に技術的な困難性が必要ですから、少なくとも世に知られている技術であったり既に完成している発明では、理屈的にも絶対に特許を受けることができないことになります。
 まとめると、あなたが何かの課題を解決する優れた思いつきをした後で、それを技術的な困難性を克服してついにその課題解決を達成したとします。その課題解決の手段が当業者にとって困難性があり、かつその完成した技術(システムや製品)がまだ世に出ていない新しいものであれば、その技術は特許される可能性が出てきます。

特許の目的は事業の独占ではない?

 この、まだ世に出ていない新しいものであることを「新規性がある(特29条1項各号)」、当業者にとって困難性があることを「進歩性がある(特29条2項)」という言い方をします。では、特許になりそうにないアイデアであれば、特許を取ろうとする必要はないのでしょうか。実は、そうではありません。特許制度は、一般に考えられている「市場を独占」するための法律ではなく、本来的な目的は「情報シェア」の制度だからです。
 これから、一般には知られていない事業者であれば知っておくべき本当の特許法の意味と、特許法が属している知的財産権制度について、もう少し詳しく説明していきます。

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 フィラー特許事務所では、特に起業家がおかしやすい誤りと最もあなたの起業を、最も成功に導きやすい最善の知財戦略を、これから起業をしようと考えられているみなさまのために「起業家のための知財経営ガイド」として、一冊の電子書籍にまとめました。これまで説明してきた「これは特許になりますか?」は「起業家のための知財経営ガイド」の第1講を抜粋したものです。実際の電子書籍はこのようなデザインです。

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解説動画もご覧ください

 「起業家のための知財経営ガイド」は、フィラー特許事務所が米国の起業文化をもとにオリジナルのメソッドとして構成した5講からなる解説動画付きの電子書籍です。米国ではベンチャーが経済を牽引する一方、我が国ではベンチャーが起業する環境すら満足に整っていません。我が国の起業文化は、2017年〜2018年にかけて働き方改革とともに日本初のベンチャー企業の育成を掲げてこの数年のうちに爆発的に浸透していきました。
 しかし、高度に産業が発達している今日では、昔のように「みんなが平等に切磋琢磨し競い合う」という環境にはなっていません。既に市場にはそこの成功者がいて、潤沢な資金と人材を有している「成長し切った企業」と、今まさにこれから新しいアイデアで事業を始めようとする「今日誕生した企業」が、同じ土俵で初日から対戦を強いられるのです。
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 つまり、本当に日本初のベンチャー企業の育成をはかり、そして実際に起業をされるみなさまがこの成熟し切った産業界で新しく事業を立ち上げるには、起業の本家である米国のメソッドを可能な限り取り入れつつ、今の日本の産業構造に適し日本の法律に適合した方法で、十分な専門家によるサポートに守られながら、適切な方法と手順に従って事業化という工程を進めていく必要があるのです。
 「起業家のための知財経営ガイド」は、それを可能にするために知的財産法の専門家である弁理士が、これから起業をはじめられるみなさまがより安全に、より効果的に、あなたの起業が成功に導かれるよう願いを込めて特別に書き下ろしたものです。

 ぜひ、第4講「事業権を確保するとはどういう意味?」の解説動画をご覧いただき、みなさまの起業が少しでも安全に、そして確実に前進するお手伝いができれば、特許事務所としてこれ以上の喜びはありません。

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フィラー特許事務所|弁理士・中川真人
2021年に誕生した大阪梅田の新しい特許事務所「フィラー特許事務所」を経営している弁理士です。 弁理士は、知的財産権に関する業務を行うための国家資格者で、一般には特許、実用新案、意匠、商標に関する特許庁との手続きの代理を行う専門家です。