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憧れの人

初めてその人を見たとき、僕は感動で胸が打ち震えた。

下級の書記官として王宮に初めて入る時、これから始まる新しい生き方にとても緊張していた。
書記として働くことができることがわかって、そしてそれが王宮だとわかったとき、自分の幸運にとても感謝した。
まさま王宮で働けるとは思ってもみなかったから。
そして働き始めてからほどなくその方を見かけた。
遠くからだったけれど、僕はとても感動したのを覚えている。

そして今日、この葬祭殿であの方が民衆の前にお出になられる。

わが主、ハトシェプスト女王が儀式のためにこの葬祭殿に来て民衆の前に姿を現すことになっていた。
僕も書記官の一員として儀式に参加することになっている。
勿論下級だから近くに寄れないけれど、女王の姿を以前よりもまじかに見ることができる。
僕の上司や大臣たちが女王は女だから戦争をしないと不平を漏らしているけど、僕はそうは思わない。
女だから戦争をしないのではなく、労力にあった成果が見込めないから戦争をしないのであって敵対する者は容赦なく排除しているし、対価が見合えば戦争も辞さないと思う。
女だから、という目線でみるのは間違っていると思う。
女王もそのことを意識しているのか男装している。
男装しなければならないジレンマに苦しんでいるのは女王ご自身だ。

女王が民衆の前に姿を現した。
見ている民衆も熱狂している。
大勢の王族・大臣たちを引き連れて女王はさっそうと歩いている。
この時すべてが光り輝いていた。
僕はこの日を一生忘れない。

我が女王よ、永遠なれ!


葬祭殿


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