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夜明けまで

西部開拓が始まり南部も開発が始まった。
私が今いるこの土地は金ではなく石油が出ることがわかって各地から人が集まってきた。
掘削人として、土地の地権を買って石油が出るのを信じ掘り進める人、それらの人たちに対していろいろな品物を売りつけようとする商売人、あとは詐欺師など。
ありとあらゆる種類の人間が集まっている。

私もその中の一人。
いや、一獲千金という目的を持った人とは違う。
私は流されるままこの土地に来た。
そしてここで集まった人たち相手の酒場の女主人をしている。
この酒場は私の所有で雇われではない。
そこは商売の才があったということだろう。
私は赤い衣装を着て赤い髪をなびかせ毎晩集まった客相手に酒をふるまいウイットに富んだ会話をし、来た客が皆帰るときには大声で笑いながら帰るようふるまう。
明るく楽しく時には妖艶に、この酒場の中では私は女主人として采配を振るう。
この酒場が私の支配する唯一の場所だからだ。

客が皆帰った後、一人残されると私は空虚感に襲われる。
なぜこんなことになってしまったのだろう。
これが私のしたかったことじゃない。
生まれはここではなくここから離れた場所で、ごく普通の家の出だ。
ごくごく普通の家。

それなのにどうしてこうなってしまったのか。 
毎晩お酒を浴びるように飲み心にもないことを平気で口にする。
このまま酒場の女主人として終わるのか。
そうしてまた一人でお酒を飲み夜が明けるのを待つ。

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