PASSTOマガジン vol.12ベイカー恵利沙さんに聞く「ファッション×気候変動 私たちにできること」
こんにちは。
PASSTOマガジン編集部のマイです。
今回は「 ファッション×気候変動 私たちにできること」をテーマに、ベイカー恵利沙さんをゲストに迎え、ファッションを楽しみながら、気候変動へのアクションを両立していくことについてお話を伺います。
インタビュー場所は株式会社ECOMMIT 東京第二事業所。ここでPASSTOの回収品の中からベイカーさんにコーディネートを組んでもらい、リユースファッションの楽しみ方も教えていただきました。そして最後にはリユースファッションが楽しめるイベントのお知らせもあります。
まずは、自身のお話について聞かせてもらいました。
写真:五十嵐一晴
ベイカー恵利沙さん
ELLE JapanのSTYLE INSIDERとしても活躍するベイカーさんは、ファッションセンスはもちろん、自然体なライフスタイルに共感をする女性が多く、同世代からのスタイルアイコン的存在。
そんなベイカーさんは、1989年生まれのオレゴン州と千葉県育ちで、2017年からニューヨークを拠点に移す。
ニューヨークに引越してから元々関心のあった社会課題への興味が大きくなり、それに自分のキャリアを近づけたいという思いから、日本の気候変動報道をサポートする団体「Media is Hope」にて海外メディア・組織とのコミュニケーション、広報を担当。
同時に、ファッション業界でのライターやブランドコラボなどディレクター業を担う。
ファッションが持つ、人を惹きつける力
大学生の時にフェアトレードを日本で広める団体に入り、フェアトレードのお洋服を使ったファッションショーを企画。モデルには、当時から環境などさまざまな社会課題に取り組む冨永愛さんが参加してくれた。
「大学生のころからファッションが好きでした。自分が社会課題を伝えるアプローチとして、ファッションを入口にすると伝わる層が広がると感じていました。なのでこの時もフェアトレードを強調するのではなく、ファッションにフォーカスし、ショーの後にトークショーで問題や課題解決を伝えるものにしました。」
ニューヨークでの出会いが
自分の興味関心を思い起こすきっかけに
大学卒業後、日本でモデル業などファッションに関わる仕事に携わる。2017年にニューヨークへ移住し、気候変動やサステナビリティ、人権などを日常的に話す友人がたくさんでき、改めて自分が興味のあったことを思い出させてくれるきっかけになった。
「2019年のオーストラリアの森林火災は、気候変動への行動を起こす大きなきっかけになった出来事です。アメリカで報道されるニュースを見て、たくさんの動物や人が死んでしまったことなどの現実を知りとてもショックでした。同時に、人間の活動がどれだけ自然破壊に繋がっているかを構造的に学ぶきっかけになったのです。」
個人の域を超えて、
社会でできることに自分の力を使いたい
そして翌年2020年は新型コロナウイルスの感染拡大によりロックダウンを経験。そしてアメリカでは大きなムーブメントとなったBlack Lives Matter(アメリカで始まった黒人差別抗議運動)を目の当たりにし、この1、2年で個人と社会の繋がりを考えるようになった。
「元を辿ると、私が初めて社会課題に関心を持ったのは人権についてです。人種差別など、自分の行動範囲の中で気をつけているつもりではいました。BLMを期に自分自身が差別をしていないと思っていても、人種差別が続く社会に生きていることを実感しました。」
「個人の力が集まって社会を変えるから、私たち一人一人がパワーを持っているということは間違いありません。でも、日々のライフスタイルの変化だけでは、人種差別も気候変動も、本質的な解決は起きない。だからこそ個人のライフスタイルの選択を超えて、社会が変化していくことにみんなの力を集めていかなければならないと感じました。」
社会課題に対して、個人でできることの域を超えて社会システムをみんなで変えていくということを仕事にしたいと考えていたときに、現職の「Media is hope」と出会う。
「Media is hopeは、日本の気候変動報道を増やすため、メディア間連携の強化、メディア向け勉強会の開催、番組企画やスポンサー支援など、幅広く活動している団体です。行動変容を起こすためには知識を増やし、なぜ行動変容をしなくちゃいけないかを理解しないと行動できないし、そうしないと変わらないと思うんです。だからこそ、本質的な変化を起こすのにMedia is Hopeは必要な団体だと思っています。」
ニューヨークに住み英語で記事を読むようになってから知識が広がり、同時に日本語では報じられていないことに驚く。
「日本でも気候変動報道を強化しよう、とずっと戦ってきてくれているメディア関係者の方々がいて、その方たちと一緒に、気候変動報道が大きくなっていくサポートをしています。私は海外コミュニケーション担当として、世界50カ国、500メディア以上のジャーナリストが参加する気候変動連携ネットワークとも連携し、そこで学ぶ知識や情報を繋げる役割を担っています。」
“好き”だからこその葛藤
Media is Hopeで危機迫る気候変動にまつわる情報に触れながら、ファッションの仕事をしていることに矛盾を感じ苦しく感じることがあった。
ファッションが好きなこと、自分の好きなものを否定してしまう時もあった。
「2年近く悩んでいたのですが、やっと“それぞれの役割がある”ということに考えが辿り着きました。私にはこれまでのキャリアやSNSで築いたコミュニティーがあり、そしてファッションも気候変動も同時に取り組んでいる自分だからこそできることがあると思うのです。」
ファッションが好きな自分を否定しない
気候変動に対して真剣に向き合っているからこそ、きっとベイカーさんと同じような葛藤や境遇に立った人は少なくないはず。
「ファッションはいろいろな人を惹きつける力を持っていて、それは他の業界にはないもの。ファッションを通して間口を広げ、ファッションを楽しみながら気候変動へのアクションに繋がることを、自分自身の活動を通して伝えていきたいなと思っています。」
活動の一つとしてSNSではコーディネートだけでなく、ブランドの取り組みまで紹介する。
「なるべくコンシャスに買い物をしたいと思っている人はたくさんいると思いますが、ブランドの背景まで調べるのは時間が必要。私は買い物をする前に、ブランドの取り組みまで調べて納得してから買い物をするようにしているので、自分が知っている情報はシェアしていきたいと思っています。実際に情報をシェアすると、良いリアクションが返ってくるので、その情報に需要があることも感じています。」
ベイカーさん流のファッションの楽しみ方
クローゼットにある多くの服が、リユースか、ヴィンテージ、古着、お下がりのお洋服というベイカーさんの今日のコーディネートを見せてもらった。
・ジャケット:アメリカのリサイクルショップ「Goodwill」で購入
・トップス、バッグ:アメリカのオンラインリセールプラットフォーム「The RealReal」で購入
・スカート:中目黒のヴィンテージショップで購入
・ブーツ:7年以上履いている「COACH」のもの
「旅先でセカンドハンドショップに寄るのが好きなのですが、売っているもので地域性が見えてくるのが面白いのです。そして、トップスはRejina Pyo(レジーナピョウ)いうブランドなのですが、憧れのブランドが価格的にも手に取りやすくなるのも、リユースファッションの醍醐味でもありますよね。」
好きなものは大きく変わっていないけど、やはり年齢やライフスタイルの変化で身につけるものは変わってくる。その洋服自体は素敵だけど、しばらく着ていないときに「この服を私より大事にしてくれる人がいるだろうな」って思った時に手放す。
「ニューヨーク生活では、コミュニティーの中で服を循環できるので、クロージングスワップ(古着交換会)に持っていくことが多いです。日本に住んでいた時は家族に譲る以外に選択肢がなかったので、思い入れもあって捨てたくない服が今も実家にありました。なので今回はその服たちをパストしました!」
ベイカーさんのStory Of PasstoはPASSTOのインスタグラムで公開するのでお楽しみに!
どんな系統のスタイルもリユースで楽しめる
さらに今回は、株式会社ECOMMIT 東京第二事業所に集まった回収品の中から、ベイカーさんにお気に入りのコーディネートを組んでもらった。
「自分の好きな系統がリユース品だと見つからないとイメージしている場合もあるけど、リユースとして集まった服は、いろいろなタイプの人が持ち込んでいるからこそ、見つけられることを伝えたいと思っています。」
「ブルーのニットに、センタープレスのパンツを合わせました。ジャケットはタイトめを選ぶことでクラシカルに着こなすことができます。」
「オーバーサイズのムートンジャケットが主役。ジーンズ×ボーダーのトップスの組み合わせは、タイムレスに着れるコーディネートです。」
新しいものを買い続ける社会を変えていこう
お洋服が回収された先を見にくるのは初めてというベイカーさん。事業所に集まった服を見てどんなことを感じたのだろうか。
「事業所に集まったお洋服たちは救われ、捨てられずにすんでよかったと思います。
売るのは大変だし、でも捨てるにはもったいないものってたくさんあるだろうから、それが集まる場所があるのは嬉しいです。それがきちんと次の人に渡っていくことがわかって安心します。ただ次々と新しいものが生まれて、ここに集まり続けることは違うと思うので、私たちは新しいものを買い続ける社会は変えていかなければならないですよね」
ファッションを楽しみながら
循環する社会を作っていくための選択
国連貿易開発会議(UNCTAD)では、ファッション業界は世界で第2位の汚染産業とみなされている。
ファッションの生産と廃棄の過程で環境負荷がかかる。その負担を軽減するためにも、私たちがすべきことは今ある資源を活用していくこと。それができるのが”リユース”という選択だ。
PASSTOは生活者から回収した衣類を回収、選別、再流通させている。回収品は、リユースを優先することで、使える状態のモノをそのまま次の人に届けることにより既存のモノの価値を活かし、新たな商品をつくる過程で生まれる環境負荷を抑えられる。
「クリエイションから生まれる喜びや、ファッションを楽しむことを諦めたくない。その中で個人として取り組みやすいのはリユースのお洋服を取り入れるということです。」
「気候変動に真剣に向き合うと時に自分や周りに厳しくなってしまうこともあると思います。ですが厳しくしすぎては続かないし、ファッションを楽しみ、好きでいたい。だからこそ自分ができる最善のことを見つけていきましょう。」
リユースファッションを楽しもう
ECOMMITは、コスメティックブランドSHIROを展開する株式会社シロとともに、渋谷PARCOにて「SHIRO with PASSTO」の POP UP STOREを2024年11月15日(金)~11月27日(水)の期間、開催。
ここでは、SHIROやブルーボトルコーヒーの店舗やPASSTOから回収された衣類のなかから、スタイリストがセレクトしたリユースの衣類を販売するほか、今回の記事でベイカーさんに選んでいただいたお洋服も販売する。
イベント詳細はこちらから:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000088.000067508.html
今回はファッションと気候変動のどちらに対しても真剣に向き合うベイカーさんだからこそのリアルな悩みや葛藤した経験のお話を聞くことができました。これを読んでくれている皆さんも共感できる部分があったのではないでしょうか。
ベイカーさんがお話の中で、「自分の中でも100%答えがでているわけではなく、自分にできることを考えている途中。もしかしたらどこかで考えが変わり、行動が変わっていくかもしれない。」という言葉が印象的でした。
それは、常に新しい情報に触れ、考え、行動しているベイカーさんだからこそ。常に私たちは最善な方法、自分にとって心地よい選択を見つけ行動できるはずです。
今回の記事で初めてPASSTOのことを知ってくれた人もいるでしょう。
ファッションが大好きな人たちにとって、心地よい選択肢の一つにPASSTOがあることを知ってもらえたら嬉しいです。
お気に入りのものを大切に長く着たら、ぜひPASSTOしてください。
みんなで捨てない社会を目指すためにPASSTOは、捨てる人と使う人を繋いでいきます。