早見沙織 Concert Tour2019 JUNCTION【東京公演】~感想~


「『自由です』って言われると、『この自由をもっと素敵な自由にするためには何を増やしていけばいいだろう』って考えるようになるし、今もそうですね。」

(本ツアーオフィシャルブック インタビュー記事より)


早見沙織が放つ音楽はいつも新しく多面的な顔を持つが、それは曲の数だけアレンジャーがいるわけではない。様々なクリエイターと呼応して異質性を獲得しているからこそ、その中心は常に鮮やかで広がりを見せるのだ。彼女自身がその変化の中で、獲得してきたもの。これから見つけるもの。目指すもの。それらは彼女の表現を通して、受け手の日常へと還元されていく。
ライブは、それを実感できるすばらしい場所だ。









……というわけで、東京公演の感想をつらつらと書きました。ライブを振り返る一助になれば幸いです。
ライブレポは他の方があげてるので、私個人が感じたことを。


早見沙織Concert Tour2019 JUNCTION
4.29 at東京国際フォーラム



メリハリのある構成

1stの時も構成の良さは印象的でした。今回はブロック構成をより意識したのか、おかげでメリハリがとてもよかったですね。弾き語りパートとか予想外すぎるパートもあったりして。3〜4曲ごとに演奏が続くので、そのパートの中でも照明の色彩・発声の変化だったり、多彩な表現が繰り広げられるわけだけど、それらがとても楽しみやすかった。

前置きがないことの心地良さ

必要以上の説明をしないですよね。各曲中のコーレス、「To years letter」「新しい朝」のラララを前振りしたりしないし、曲の背景もほとんど話さない。「全通してくれた人ー」とか「もちろんグッズ買ってくれたよね?」とか言わない。知らないことで置いてきぼりになってしまうかもですが、知らないという事実はあっても、それを責めるような雰囲気は早見さん本人もファンの方たちも露ほども出さなかった。そんな空間って、色んなお客さんのありのままを肯定してるように感じて素敵だし、ファンが思いを共有しないとできないと思いました。上のメリハリと合わせて、初参加の人でもこれなら親しみやすいなぁと。

既存曲のアレンジ変化と、今回の方向性

ライブごとに楽曲の違う顔を見せてくれるのが早見さんの魅力。マイナーチェンジだったり、原曲から鳴らす楽器を足したり引いたり変えてきたり、バンドアレンジだったり。
連続して演奏するからこそ、そのつなぎが見せる各曲の新しい魅力が毎度ながら本当に素敵ですね。アウトロをそのまま伸ばして次に入ったり、シンセの一音で世界観をがらっと変えたり。
注目したのは、今回原曲の中にあった"間"をあえてなくしていることが多々あって、ヴォーカルがない時も何かしらの音が常に鳴っていたこと。それはMCにもあった通り「ステージで鳴っている音しかない」の魅力を十二分に発揮しているというのもありますけど、わたしはそれ以上のものを感じていて。
……今回のタイトルである「JUNCTION」って、あくまで合流地点であって、それらが重なるのって一瞬なんですよね。
合流と散開をくりかえす交差点。開演頭の演出にもあった通り、各奏者が音楽の中でもそれを実践していたわけで、だから音がとめどないのかなぁと。ぼんやり思いました


映像演出がとにかくや゛ゔぁい゛
「白い部屋」「祝福」「Interlude:forgiveness」

まさかの映像演出。まさかの紗幕スクリーン。まさかのそのまま歌う。
映し出されるは色が抜かれた木々や川、自然物……普遍的な世界。
ただ映像を見せるのではなく、舞台丸ごと使って魅せることを考えてつくられてましたね。
最初の「白い部屋」は退廃していく世界と虚無感。舞台で早見さんの存在感はほとんど消えていて、目の前で歌ってるはずなのに視界に早見さんが意識されない。
そして「祝福」で世界の時がゆっくりと動き出し、命が再生する。安らかに流れていく雲と、雲間から薄いライトに照らされた早見さんの存在が時折見えては過ぎていく……
計算された音楽と映像と照明…これが演出なんだと唸りました。
そして枯れていた花が芽吹いていき……最後は赤一色でシルエットを強調。
「interlude:forgiveness」は水の底からはじまり、生命の息吹を感じる自然と影。それから時間の流れがどんどん進んでいく。。。
演奏も超絶すばらしかったんですよ。ただ起きていることを受け取ることに必死で、、、BDはよ!
……この3曲は特に余白が多いですが、他にも「この曲ははっきりとイメージが浮かぶ」って曲ありますよね。私にとっては「雨の水平線」がそうなんですが、やろうと思えば映像をつけられる曲はあると思います。もちろんライブでしかできない表現というのはあって、一方でその中に、音楽だけで突き詰めていきたい表現がある。映像演出もそうですが、早見沙織の音楽はこの世界を拡げていくんだ、そんな意志というか気迫のようなものを今回ライブを通して強く感じましたね。

カバー曲「fly me to the moon」

早見さんは声優業・音楽活動どちらも本業、、常々それが伝わるパフォーマンスをしてますよね(少なくともわたしはそう受け取っている)。一方でそれぞれで全く別人になるというわけでもなく。もちろん区別はするけれど、両活動が相互的に影響し合えたらという話もされています。今回はまさにそれがひとつ形になったのだと勝手に感じました。
この曲はご自身が幼少の時にジャズミュージックのきっかけとして親しんだ曲であり、近年高垣楓(アイドルマスターシンデレラガールズ)のキャラクターソングとして歌った曲でもある。そして自身の名義として表現した今回。。。まさにJUNCTIONしてる一曲!とても縁を感じますよね〜
曲調は最初はジャズスタンダードらしくゆったりと、中盤からリズム変わって4拍子に(シナトラ感あった)。ベース黒須さんの名アレンジです。いやあ演奏も素晴らしかった!今日イチ熱い拍手が送られました。

「星になって」「琥珀糖」「カーテン」
弾き語り三連星

弾き語りあるといいな〜とか思ってた人を全員殺しにきたパート。
「星になって」大好きなんですよ……
3曲とも照明すばらしかったですね。室内を彷彿とさせる窓枠、電球。のびる紫。カラフルな情景と、一転して赤。広がる緑。
新曲含めて歌詞もメロディもほんとに素敵ですが、力強い歌声でダイレクトに伝わってくる切なさもどかしさが、見事に胸をしめつける……
1stでは未完成と言っていた「星になって」歌詞は同じでしたが、演奏は全然違いましたね。何よりさらっと演奏に入ったことによる、受け取る姿勢の変化。
「アンコールでちょっと挑戦させて」とかじゃなく、完全にライブを構成する1ピースとして聴いてました。
《もう戻らない 明日はくる》(琥珀糖より)
消え入りそうな儚い世界に、ピアノ1本でガラッと引きこむ早見さんに目が離せなかった


体感した「新しい朝」のアプローチ

タイアップっていいなってこの曲聴くと思います。めちゃくちゃ泣きましたよはい。竹内まりやさん作詞作曲のこの曲は、自身もリスナーとして感動したと仰っていて、じゃあ歌う側としてはどうするんだろう?って。
曰く、「だれかの心を感動させようと、みたいな歌い方をしようとするのではなくて」「歌っていて自分の心が揺さぶられることを大切にしたい」と。すばらしいアプローチですよね。
ただ一方的な感動の押し付けじゃなく、そこにあるのは共感なんです。それがわかった時、美しい歌声と共に紅緒の生き様がすっと入ってきました。

きたぜコーラス編成

意外にもツアーでは東京が初にして唯一のコーラス編成。コーラスを多用している今作、しかし全て原曲通りにするわけでもなく、例えば「白い部屋」はコーラスを外しソロで歌うことで孤独感を演出してました。「Blue Noir」ではコーラスがメロディを担当するパートに、早見さんがめちゃくちゃアレンジを入れていてもう…ひゃっはー!!って感じでしたね。そういう、ライブの選択肢が増えたことが嬉しい。
「eve」はもうやばかったですね……リズム隊いないとか実質アカペラだしそれで音外さないんだから、もうスーパー女子会チームかよって。野田さんの大地を揺るがすような(?)アルトがほんとに素敵ですごかった。個人的に早見さんのコーラスとっても好きで、「TARI TARI」曲やアニサマ2016テーマソングをよく聞くのですが、存在感ばりばりなのに役割をちゃんと守ってるんです。なので、早見さんメインの時もコーラスもっと出てきて欲しいですね〜もちろん曲にもよるけれど、コーラスいるなぁじゃなくて、コーラスすげえってなる感じ。具体的にはアニサマ2016「ポケモンメドレー」のAKINO with bless4ぐらいがいい。音響さん次もよろしくお願いします!!


☆以下ただのオタクの叫び(むだに多い)
・開演冒頭のプロジェクションマッピングとても良き。光→増える→広がる→合流するというテーマが伝わりやすく、アルバムジャケットデザインの秀逸さも再確認できた
・開幕まさかの立ち煽り!?
・やさしい希望×ヴァイオリン=最高
・間奏でステージをひらひらくるくるする早見さんかわいい
・初参加のギター黒田さん、音がめちゃくちゃ存在感発揮してる。そして煽りまくるエアギター早見さんいいぞ〜
・サニーサイ→メトロナイトの、朝から夜に繋ぐリードシンセの音がまぁーーーオシャレでおもしろい!
・メトロナイト2番の「さわんないで」は強烈にくるかと思いきや、乙女っぽい感じ?→からの「fly me to the moon」「Blue Noir」でヌーディーモード全開
・モニターに映すカメラは基本寄りに撮ってたけど、曲終わりにちゃんと引いてステージ全体を写し、お辞儀する早見さんを"直接"見てもらう配慮がすばらしかった
・どこか忘れたけど、ドラムのハイハットで静かに一歩ずつ進んでいくようなイントロめちゃかっこよかった。会場中が息を飲んでた。というか終始ドラムよかった
・新しい朝歌ってる時のカメラ本気出しすぎ。早見さんマジ美しくてかっこいい。照明の青具合がとてもいい
・コーラスふたり、休みの時も拍手や身振り手振りでめっちゃ動いててずっと素敵
・コール&レスポンスが健在で安心からの難なく応えていく客席の進化にびっくり。転調のタイミングで振るとか笑ってしまった。\もっと/ \あ・な・た/ \しんじ〜るこーとがー/
\きーみーがいーるー/
・jewelry《唱えていつも 負けないわたし→キミに》where we are《ときめきを キミを見つけたい→見つけたよ》ライブならではの歌詞変更がいいよねって。
・little forestのバンドアレンジ、好き。もう好き。。
・上品に弾き語りしてからの「かかってこいよー!」ですからね、そりゃあいくしかないよって
・「Blue Noir」バンド紹介タイム〜もういけるところまでいけー!って感じだった。終盤のウルトラスキャットとかアニサマ2016のコラボを彷彿とさせた
・アンコール呼ぶ時拍手で統一してたの嬉しいよね。だって国際フォーラムAだよ!?これまでのどこよりも大きい会場でひとつ叶った劇的な瞬間に立ち会えてよかった・アンコール衣装&ポニテリボンが素敵だった。キュートで鮮やか…スタイリストさんありがとう


「Installation」「あるゆらぐひ」「温かな赦し」
から見る1st〜2ndの流れ

最後にこの話を。アルバム曲ってみんなばらばらの方向に走ってるけど、「温かな赦し」と中盤に挟み込まれた「Interlude:forgiveness」が全体を包む役割をしてるなと思ったので、赦すというキーワードについて考えたい。ところで、皆さまは許すと赦すの違いをご存知だろうか。

許す(allow,permit)……(これからすることを)許可する
赦す(forgive)……(してしまったことを)容赦する
大辞林 第三版より

前者は行為の前に行われるものであることに対し、後者は行為をした後に行われるものみたいです。宗教的なニュアンスだと、「罪を洗い流す」なんて言ったりもする。
最初に浮かんだのは、ある漫画のセリフたち。

「世の理不尽を許してはいかん。人として憤らねばならん。だが堪えねばならぬ。」
「俺を許すのか」
「勘違いしないで。理不尽を許してはいないのよ」

「鋼の錬金術師」(荒川弘 スクウェア・エニックス)

容赦という言葉からわかる通り、赦しというのは良し悪しではなく、ただ肯定すること。YES!でもNO…でもなく、ありのままを受け入れること。それは自分に対してと、だれかに対してとふたつあるんですね。

《信じて ただ わたしを 諦めずに 行こう》
1stアルバム収録「あるゆらぐひ」

《いいよ いいよ 受け入れてみる》
2ndアルバム収録「温かな赦し」

1stアルバム「Live Love Laugh」は、いわゆる"私とあなた"の物語で、白雪とゼンにはじまり相手が想定された音楽が中心だった。
2ndアルバム「JUNCTION」は、色んなところの"私とあなた"が集まっていて、多様な物語が想定された音楽が中心だ。
どこか似たメッセージを感じるこの2曲は、だれかに向けて言っているようで、自分自身に言っているようにも聞こえる。
どちらの曲も支える相手は他人だけではない、時にはうずくまってしまう自分にだって、信じて寄り添いたい。そんな気持ちが込められてるように思う。
そして楽曲の雰囲気が、物語の数だけ"わたし"も"だれか"もいるんだって教えてくれる。
……ここまで考えると、ふと「Installation」という曲が浮かんだ。

《あなたは宇宙の引力 吸い込まれそうなきらめき》
《きっと誰も知らないところで そう思われてる》

2ndシングル「Installation」

……今作「JUNCTION」はあの時の宇宙のきらめきが、色んなところで無限大に広がっていっている世界と、地続きのものなんだと私は感じた。
どこかのわたしと、どこかのだれか。
に憧れる、またどこかのだれか。
わたしへの憧れ。だれかへの憧れ。
憧れは時に人を輝かせる。憧れは時に人を厚くする。
憧れが交差した世界の中で、憧れに包まれた世界の中で、赦しとは解放だ。そんな赦しというものにきらめきを感じることは、あるいは少ないかもしれない。

それでも……わたしやだれかがくれた「いいよ」という言葉は、そっと温かく、やさしく揺れる光となって、ゆらいでしまうような日にも共に寄り添ってくれる。
その光は、ある日また違うだれかに赦しをあたえることもできるだろう。
きっと誰も知らないどこかで。
赦しによるきらめきが、交差をくりかえしながらそうして宇宙にひろがっていく。
それは、小さな革命。



《覆い隠された憧れのベール外せば 
他の誰でもない見慣れた姿が きっと》

2ndアルバム収録「Bye Bye 」


文章 パルメザン




早見沙織 Concert Tour 2019 JUNCTION 4.29 at東京国際フォーラム
【セットリスト】
opening
1.Let me hear
2.Secret
3.やさしい希望
4.夢の果てまで
MC
5.Jewelry
6.SUNNY SIDE TERRACE
7.メトロナイト

8.白い部屋
9.祝福
10.Interlude:forgiveness

11.星になって(弾き語り)
MC
12.琥珀糖(弾き語り)short ver.
MC
13.カーテン(弾き語り 4.29 ver.
MC
14.ESCORT
15.little forest
16.fly me to the moon
MC
17.僕らのアンサー
18.夏目と寂寥
19.where we are
20.Blue Noir
MC
21.温かな赦し
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
EN1. eve(with Cho&Vn)

EN2.新しい朝
EN3.Bye Bye
MC
EN4.To years letter


早見沙織バンド【東京公演】
ベース・バンマス:黒須克彦
ギター:黒田晃年
キーボード:角脇真
ドラム:かどしゅんたろう
ヴァイオリン:日俣綾子 保科由貴
コーラス:川崎里実 野田愛実


最後まで
読んでくれてありがとうございました。



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