奴隷になったアリ

その昔々、奴隷は労働力であって、消耗品であって、資産であった。資産価値があるから、奴隷はそれなりの待遇で扱っていたようで、何かの物語のような悲惨な待遇だったという訳でもなかったらしい。ひどい扱いをしていたところもあっただろうけれど。

アニメのアルスラーン戦記で主人公の殿下がある商家から奴隷を解放するんだけれど、解放された奴隷は喜ぶどころか、何をしていいのかわからなくなって、困ってしまったという話。

結局、人の元で働くことしか教わっていないので、自分が志を立てて、野心を満たそうとかも無ければ、ささやかな店を出して自分のために生きようとか、そういう発想が出てこないのは自然なこと。

日本の教育も労働者を育てるための教育方針のような気がしてならないのだけれど、いまはどうなのだろうか。勉強が楽しかったという思い出があまりなくて、まずは頭に入れておけという感覚だったし、その後も自発的に学ぼうと考えたのは、学校ではなくて本からなんだけれど。

メキシコのシンベスタブ・ウニダード・イラプアト研究所ではアカシアの樹液が含む酵素によって、アリがほかの糖源を摂取できないように仕向けていたと発表。

アリが摂食する樹液にはショ糖などの糖分が含まれていて、この糖を分解するにはインベルターゼという酵素が必要になる。

研究所で調べたアカシアアリはこのインベルターゼが不活性化していて、通常のショ糖では商家ができなくなっていた。このアリは樹液からエネルギーを作れない。

ところが、アカシアは樹液の中にインベルターゼを含めている。アカシアアリが消化できる樹液を提供している。

つまり、アカシアアリはアカシアの樹液しか消化できない。

なんでアカシアアリがインベルターゼを失っていたのか、それはアカシアが出す樹液の中にはキチナーゼという酵素も含まれていて、アカシアアリが生まれたときに持っているインベルターゼを阻害してしまうのだという。

アカシアアリは受け身でありながらも、アカシアアリという生涯不変の奴隷を手に入れたわけだ。

この方法はアリ以外にも応用が利くんだろうか。それが可能であるなら、虫を操ることも案外現実的になるかもしれない。

虫に電極をつけて、ラジコンにした話もあったけれど、餌付けして隷属関係にできるなら、もっと組織的なことが可能になるんじゃないかな。

土壌の環境改善や農家の作物を害虫から払うこともできたりしないかな。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?