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私が見たい景色:暗い通りにある一枚の絵

人間が生きるために本当に必要な力を生み出すのは経済ではなく、藝術・文化だ。芸術こそが人生の道標となり、人々の心を豊かにする。

という言葉が、私のiPhoneのメモに入っていた。
どこから抜粋したのか忘れてしまったのだけど、力づよくて、すごく良い言葉だと思う。


最近、ある会社の社長さんからすごく大きな絵のオーダーをいただいた。
絵を所有するのも、オーダーするのも初めてというこの方、どうして絵なのか?を聞くと、こう返ってきた。

もう、自分にとってブランドもので自身をブランディングする必要性はない。絵は、「有形」ではあるが、価値の定まらないという意味で「無形」資産のようなもの。次は、みんなが「良い」と言うわけではないものを選び、自分の感性を見つめたい。だから、あえて「無名」の人から買いたいと思っている。
分かりやすく「生産性」のない絵という存在が、結果的に見ている自分を豊かにしてくれる。

ちなみにこうやって伝えてくれたのは、弱冠25歳で社員200名を抱える会社の社長さん。こんな若い方が、こんな意識で絵に興味を持ってくださるなんて、アートの未来は明るい(かもしれない)。


いきなり画家を目指して10ヶ月。
アートに携わるヒヨコとして、未熟ながらいつも「アートの価値」に思いをめぐらせている。
それはきっと、私が「人のために絵を描いている」からかもしれない。(「人のため」なんて表現はおこがましいけども)


私には、人生を通じてやり通したいシンプルなミッションがある。

その人の人生をご自身が全承認し、
魂が輝く瞬間をつくること。

どうしてそれを目指すのか?と聞かれても、まだうまくは答えられないし、答えられなくっても良いかもって思っている。

ただ、人からそういうことがやりたいんじゃないの?というフィードバックを受けるたびに、時にダバーっと、時にポロポロと、私の目からは涙がこぼれる。自分の意志とは裏腹に流れるこの涙に、何か真実がある気がしてならない。

最近、そんな私が、自分のあるいは自分一人ではなく誰かとの共創によって見たい景色がいくつか浮かんでいる。

今回は、その景色のうちの一つを書き留めておきたいと思う。

(最初の私のイメージはまさに「景色」で一枚の写真のようだったのに、書いてたら小説みたいになりました。。。)


景色  暗い通りにある一枚の絵

壁の色はダークグレー
コンクリート打ちっぱなしに近い質感、無機質
そこに1枚の絵がかかっている
形は縦長、高さは高さ250cm、幅150cmくらい
絵には照明が当たっており、ぼわーっと照らされている
絵は、全体的にクリームっぽい白
何が描かれているのかはうまく見えない
そこに、一人の女性がたたずんでいる
齢、20代後半、ロングヘア、細身
小さなハンドバッグを肩にかけ、絵の前に立っている

彼女は、絵の前にぼーーーっとたたずんでいる
ここに来るのは初めてではなく、定期的にくるのかもしれない
そして、来る度にいつも同じように時間を過ごすのかもしれない

絵は、ぼんやりと煌々と光っているようにみえる
彼女はその前で目を閉じるような、閉じないようなそれくらいの意識で立っている

絵から光がふり注いでいるようにみえる
彼女はその光を浴びているのか、その中に入っている感じなのか

身体から余計なものは流れていき
代わりに命の元になるようなエネルギーが満ちていく

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彼女は初めてこの絵を目にしたとき、近づくことができなかった
遠巻きにみて、そそくさと後にした

だけど、その道は彼女がよく通るだった
気には、なる。

ある日、その絵の前に立ってみた
人通りはそれなりに多い
そんなに長く前にいるのは気まずい
一瞬「はっ」とした
その理由はわからなかった
それ以上その絵の前にはいれなくて、足早に去っていった

家に帰り、淹れたハーブティーをのみながら、あの「はっ」の意味を回想してみる
それは、軽い火傷のような感覚だったかもしれない
熱かったり、痛かったりしたわけではない
だけど、不意打ちだった

明日じゃないけど、3日とか、4日後とかに、また前に立ってみよう

4日後がやってきた
絵の前には、知らない誰かが立っている
初老の男性だった
いつからそこにいるのかはわからないけど、半分恍惚を浮かべた表情で立っている
別に何をしているわけでもない
3分ほど、その絵と男性を一緒に眺めた

男性は、満足したようで、ふっとその絵を後にした

絵の近くに立とうかどうか、迷いが生じた
あの絵はあのおじさんや他の誰かのものであり、自分のものではないかもしれない
そんな戸惑いが頭をよぎる
躊躇、しているんだな……

でもなぜか、この機会を逃すと、二度とあの絵の前には立てないような気がする
勇気を出して、絵に向かって歩いてみた

絵の前に立ってみる
前回のような、はっとする痛みはなかった
絵は、やさしく、私の前にいた
自然と目が閉じる

全ては一つ
めぐる、まわる、共にある

そんなメッセージがわき起こる。。。

「これで、いいのかもしれない」

と感じ、その絵の前を後にした


私が見たい景色

絵の前で、こんな対話、戸惑い、揺れ、受容、そんな物語が起こって欲しい。
これが、私の脳裏に何度も浮かぶ、私が見たい景色です。




そんな絵を描けるようになるためにも、
挑戦は惜しみません。
2月には「感情」をテーマに個展を開催します。




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