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専門家の意見と上手に付き合おう。

お子さんの成長や発達に気がかりがある方の中には、「先生によって言うことが違う」と悩む方もいることでしょう。私も娘が幼い頃には、保健師さん、発達外来のお医者さん、歯科医、子育てセンターの保育士さんなど、たくさんの専門家のお世話になりました。私はたくさんの支援者と繋がることは良いことだと思っています。相談する機会が増えるということは、子供について話す機会が増えることです。同じことでも、悩んでいなくても、子供について言葉にしてしゃべる回数が多い方がストレスを溜めずにすみます。逆にいうと、発達に遅れがある子の子育ては、知らず知らずのうちにストレスがたまるものですよ。

その時に一つ心に留めておいてほしいのは、「専門家は自分の専門のことしか見ない」ということです。うちの娘が通う歯医者さんは、ヤクルトを嫌っています。糖分が多く、ねっとりとして歯に残りやすいヤクルトは、虫歯になりやすい飲み物の代表として「あまり飲まないように」と言われています。でもヤクルトは乳酸菌が入っていてお腹にいいです。発達が遅い子には便秘気味の子が結構いるので、ヤクルトを勧めるお医者さんもいるかもしれません。

歯医者さんも小児科医も、その子のことを思って最善のアドバイスをしてくれたはずなのに意見が異なります。そうすると迷ってしまうお母さんもいるでしょう。結局、歯医者さんは歯のことしか考えていないし、小児科医は医学的なことしか考えていません。情緒や家族の生活パターンまで考えていない場合があるのです。それは「無責任」ということではなく、それぞれがそれぞれの持てる武器を最大限に使うという、誠意の証です。歯医者さんもお医者さんも、目の前の子供に対して自分が与えうる最大限のアドバイスを提供したいと思っているのです。

もし小児科医や看護師さん、保健師さんのアドバイスが「言ってる事は分かるけど、うちの子には・・・」ということがあった場合、「専門家は自分の専門しか見ない」と思ってください。そして子供の生活全体を見て、その子の得意不得意も考慮して、もらったアドバイスを応用することができるのは、やはり母親です。専門家の意見は参考程度にして、実生活に合わせてアレンジして構わないのです。

「専門家なら、うちの子にあったアドバイスをして欲しい」と思う方もいるかもしれませんが、それはなかなか難しいです。専門家は範囲を狭くすることで深い理解が出来るからです。つまり生活全体・・・ひいてはその子の人生までを考える親とは、根本的に役割が違うのです。専門家は「狭く深く」。親は「広く浅く」です。

子供が成長するにつれ、「保育園の先生は、小学校選びの知識はあるけれど小学校の実情には詳しくない」とか「特別支援学校の先生は進学・就職には詳しいけれど、卒業後の長い人生については詳しくない」ということが見えてきます。それも専門家は専門のことしか分からない。ということと同じなんですね。「じゃあ、どうしたらいいんですか」という質問に対して、私は解答を持ちません。知りたい事は自分の足で調べるしかないからです。実際、私は娘の就学前に7校見学しました。見学の申し込みも自分でしました。また、卒業後の人生を知りたくて成人障害者向けの事業所に就職しました。でもみんなに「そうしてください」というわけではありません。私はそれが苦じゃないタイプだったから出来ただけだと知っているからです。本来は、長い人生全体について相談できる場所があるといいと思っています。

子供が小さいうちは、保健師さんや保育士さんが子供の生活全体を見れる方だと思いますので「医者からこう言われたけど、うちの子には難しいかも・・・」という事は素直に相談したらいいと思います。その時に、説明の手間は惜しまないでください。それと、心を開いてください。都合の良いことだけ話して、手っ取り早く良いアドバイスをもらおうとすると、遠回りになります。相手に親身になって欲しかったら、まず自分が心を開きましょう。多くの専門家は、あなたを非難したいのではなく、あなたと子供の力になりたいと思って、あなたの前にいるのですから。

少し脱線しましたが、専門家で物事に詳しい人ほど、全体を見ない傾向があります。それはその人が劣っているということではなく、専門家とは、そういうものだ。ということです。なので、子供の相談で迷った時は、アドバイスを参考にして子供に合わせてアレンジすることをお勧めします。子育ては多岐に渡ります。体の健康、心の成長、刺激も大切だし、安心感も大事。家族の中で育つという事は、家族の都合に合わせないといけないこともあります。それがマイナスに見えるとしても、必ずプラス面もあるものです。

専門家の珠玉のアドバイスを、子供に合わせてカスタマイズして活かすのが、親の役割と言えるかもしれません。