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ソウル・ブルース相談室

Q1. ダニー・ハサウェイ"ライブ"はなぜこんなにも私達の心を打つのでしょうか?

A.この名盤の最大の聴きどころである歓声や観客の大合唱には巧妙なオーバー・ダヴィングが大量に施されています。もしあなたがあのコール&レスポンスや鋭い反応に感動したというのならば、あなたはアトランティックのプロデューサの術中にマンマとハマっているのです。その他"Jealous Guy"のコーラスもあからさまなダヴィングですし、有名なウィリー・ウィークスのベースソロもまるっと編集が施されています。A面のトルバドールとB面のビターエンドでは会場の規模が3~4倍違いますから響きの違いを聴きとってみるのもよろしいでしょう。夢を壊すようではありますが、オトナの事情に舞台裏、浮世は全てイカサマです。だからといってこの作品の真価が失われるということはまったくなく、それゆえ本盤はソウルジャズファンク不滅の金字塔でありつづけるのです。ハサウェイの映像は少ないのですが1971年のTV出演時のものをどうぞ。弾いているエレピがウーリッツアではなくローズなのでライブのあの音色じゃないのが画竜点睛を欠きますが貴重ゆえ紹介します。Donny Hathaway 'Put Your Hand In The Hand' https://www.youtube.com/watch?v=62IHpU6RRxs


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Q2. バーナード・パーディのドラムはなぜあんなにすごいのですか?

A.パーディはドラマーではありません。声帯の代わりにドラムを使う歌手です。フレーズに詞がついているのです。「ダチーチー」「ストラカタタン」など有名な「歌詞」をファンであるあなたならすぐに口真似で挙げることができるでしょう。高低差の極端なタムのチューニングと「タテに落ちる」フィルインは最初期の頃から顕著で、先日非物質化したドン・コヴェイ先生の"mercy mercy"を聴けばよく判ります。余談ですがこれギターは無名時代のジミ・ヘンドリックスだという説がありますね。当時ヘンドリックスはキングピンズに出入りしてパーディと同僚でしたから、充分あり得る話ではあります。ともあれパーディの「歌うドラム」の典型であるチャールズ・カイナードの"something"をお聴きください。後半6:14から70秒間3コーラスに渡ってジョージ・ハリソンの名曲をドラムで歌っています。「おれはビートルズでもドラムを叩いている」が口癖のパーディ先生の面目躍如たる超名演です。

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