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身近な植物を見て触って嗅ぎ、五感でランドスケープと植生学を学ぼう

内装設計を中心に、室内緑化を強みとしているわたしたちparkERs(パーカーズ)ですが、最近は外構、ランドスケープや屋上のご提案もさせていただく機会もかなり増えてきました。

parkERsのプランツコーディネートチームは、千葉の産地さんツアー、大田花き市場見学ツアー、東京の林業を体験するツアー、月に一度の森の再生活動を通して森づくりに携わるなど、都市と森をつなぐ様々な活動を続けてきました。
今年はそんなプランツコーディネートチームが、より広く知識を身につけて提案力をさらにあげていき、パートナーやお客さまも巻き込んでさらにわたしたちparkERsのファンをつくっていくこと、parkERsがデザインする時に大切にしている「公園のような心地よさ」を探求すること、そして都市と森をつなげることを目的に、6回に渡り、他チームメンバー、お客さまやパートナー、外部の専門家のみなさまと植物や森づくり、ランドスケープについて学ぶ活動を企画しています。

過去に東京・檜原村で体験した林業ツアーについてはこちらから。

「プランツコーディネーターって何する人たち?」についてはこちらから。

このプランツコーディネートチームの6回の活動を一年間にわたってnoteでもご紹介していきたいと思っています。


「ののあおやま」で植物を見て触って嗅いで学ぼう

初回となる今回は都市のランドスケープについて学び、植栽のメンテナンスやデザインするメンバーの知識と専門性を高め、より魅力のあるご提案につなげることが目的。

以前からもお付き合いをさせていただいている植生管理士・林学博士の西野 文貴(にしの ふみたか)さん(株式会社グリーンエルム)を講師にお迎えしてparkERsオフィス近くの「ののあおやま」を散策しました。

以前西野さんと明治神宮の森を巡った時のnoteはこちら。


わたしたちもよくご提案の中で園芸用の品種だけでなく、その土地の自然とのつながりを感じられる「在来種」と呼ばれるその土地に自生している身近な植物をあえてご提案することがあります。今回はそのために必要となる知識や園芸品種との組み合わせなどについて、実例を見ながら学ぶことができました。

その土地本来の植物がどのように育つのかを想像して植える。それには土壌管理も大切に。

「自生種」「在来種」という単語を使うことが多いですが、専門的に言えば「潜在自然植生」、人間が干渉をやめた時にそこに成立する植生を示します。つまり「気候風土に応じてそこで生える植物」といえます。そしてそれは、決して一種類の植物ではなく、気候風土含めた自然の生態系あってのこと。

例えば、ヤブコウジースダジイ群集の森にはベニシダやヤツデが生え、スダジイにはツワブキ、ヤツデなどが生え、共生して森の生態系を作っています。植物同士だけではなく、シャクナゲやアセビなどのツツジ科の植物、ランやイチヤクソウなどは菌から栄養をもらい、菌へ栄養をあげることで共生しています。他にも、ミズキは鳥散布で増える特性があるので、よくみると身近なところに生えていたり、サクラの仲間の葉にある蜜腺でアリを引き寄せることで葉を食べてしまう毛虫を除ける役割を持っています。

「どういう生態系の植物なのか」「植える時や場所にどんな生態系とのつながりがあるのか」といった、その植物の自然界の組み合わせ(植生)を学び、それを踏まえたデザイン、提案につなげていく必要性がさらに高まっているとのこと。

ミズキは真っ直ぐな幹に対して枝が扇状に四方に映えるので樹形がわかりやすい

一方でデザイン面重視の植生は、本来のその土地の自然の生態系を植物の専門家から見ると不自然に感じてしまうこともあるそう。
ただ、それが必ずしも悪いというわけではなく、やはり生態系の一部である人間が防犯や防災のため、そしてデザイン(見た目)という理由もあるので、本来の姿は知識として身につけながら、新たな提案につなげていくそのバランスとセンスが今後必要になっていくことを痛感した時間でした。

サクラの蜜腺を探して見せてくださる西野さん
カラスザンショウ(ミカン科)は鳥散布なのでおそらく自然に生えてきたもの。
「潜在自然植生種」が東京・青山のど真ん中で垣間見れた。
クサソテツ(こごみ)は東北や軽井沢などではよく見かけるが、東京・青山では通常自生しない
ツル植物が吸着根をはやしてピタピタと木の幹を登っていく過程がよくわかる
日本には700種近くもあるシダ科の植物はわたしたちにとって身近な植物のひとつ

また、ランドスケープ的には地形の多様性も重要。人工的な土地はどうしても平たくなりがちですが、自然に近い小起伏があることでそこに育つ植物やその成長はもちろん、そこに住む虫や鳥たちなどの多様性も広がっていくことも。

こうした小起伏も育つ植物とその生態系にとって重要

当然人間も植物たちがどう成長していくかを想定しながら植え込んでいきますが、予想と違う方向に成長、移動していくこともあるそう(実例として「大手町の森」をあげられていました)。植物の育ち方ひとつでも自然は人間の予想の上を行くことが本当に多くあることを実感することができました。

ヤマブキは落葉性ですが、実は葉だけでなく枝も緑色

また、雨だったからこそ学べた風景としては、ケヤキの苔の位置について。これによって雨水の通り道や太陽の向きがよくわかる。自然の美しい模様にもちゃんと自然の摂理が働いていました。

幹の左側を中心に雨水が流れ、苔ができる。右側は太陽が当たるため、苔はほとんど生えず。

今後は、より一層地域性や遺伝子汚染を避けた森づくり、そしてランドスケープデザインも求められていくはずとのお話をいただき、少しでも植物に携わるわたしたちにとってその点も学びを深めていく必要性を感じることができつつ、またひとつ大きな課題をいただいた時間となりました。

日本の自生種に触れて五感で感じて学ぶ

40分ほど「ののあおやま」を散策した後はオフィスに戻って、講義と質疑応答と事後アンケートタイム。

西野さんにはいくつかの自生種を持参いただき、それぞれの特徴やなぜその特徴を持つようになったのか、自生する環境などについてご説明いただきました。

実際に触ったり、香りを嗅いだり、五感を使って記憶に残します
葉の裏が白いシロダモ。表はクスノキ科特有の葉の主脈、副脈が3本ある。
シロダモの新芽の毛布(絹毛)はさわるとフワフワ
葉をちぎってお湯にいれると精油から独特の香りが。新芽は虫除けのため香りが特に強いそう。
クサギ(シソ科)は触るとピーナッツバターのような香り
他にもネズミモチ(モクセイ科)と外来種のトウネズミモチの違いやその特徴についても
ウラシマソウ(サトイモ科)の花は長いヒゲが特徴。
さっそくウラシマソウをオフィス内に植えて、室内でどう育つのか実験開始!

森の役割と再生、これからのランドスケープ

予想以上に盛り上がった自生種の説明に続いて、座学で森の再生や樹木の役割、これからの植栽について短めの講義をしていただきました。

15分以内の講義のためになんと400枚越えのスライドを用意してくださった西野さん
(ありがとうございます!いつか全部聴講できる機会が欲しいparkERsです)

植え込み直後の表参道のケヤキ並木の風景、災害からいのちを守る「鎮守の森プロジェクト」について、など短めではありましたが貴重な資料と共に樹木と森の役割についてお話いただきました。
印象的だったのは、東日本大震災の大洪水の浸水域と神社を地図で重ねたところ、人の暮らす里山と大自然(奥山)の境目にあった神社の森がその境目になっていました。神社の森が昔から人を守ってきた証といえます。

地図で津波浸水域と神社の位置を比較すると神社の森の役割のひとつが見えてきます

そんな貴重な時間はあっという間に過ぎてしまい、質疑応答や事後アンケート(一部今日の講義内容の復習クイズ形式)後、無事講義は終了しました。

主催側の時間が甘く、時間がオーバーしてしまったという反省はありつつも、参加者は閉会後も少し残ってくださった西野さんとの熱い植物トークが続く充実した時間となりました。

講義終了後も続く熱い質疑応答

西野さん、今回は貴重なお時間をありがとうございました。必ずや近い将来、学んだ知識がparkERsらしい新しい発想や提案につなげていきます。

今回のように、植物に関わる様々な専門家のみなさんとのつながりを通して植物の生態系そのものを学び続けることはもちろん、プランツコーディネートチームを中心として地道に参加している森づくりといった野外活動は、植物の種類や配置を提案するにとどまらず、専門的な知識や経験から生まれるparkERsのプランツコーディネートチームならではのユニークなアイディアの源。
こうした活動を通して、parkERs内はもちろん、植物に関わるプロフェッショナル、パートナーのみなさん、そしてお客さまにも共感いただける場づくりにつなげていきます。

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第二回は、いよいよ春の一大イベント「春の植樹祭」こと、「第22回 湘南国際村めぐりの森植樹祭」です。

昨年の「秋の植樹祭」の様子はこちらから。


参加されるみなさん、身体を動かして楽しみながら森と森の再生について学び、再生のお手伝いをしてきましょう!
そして、レポートもお楽しみに。