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【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (63) POLARIS 『POLARIS』(東京都千代田区市ヶ谷)

COLLECTIVE ほぼ毎日(2階に住んでいるので)ZINE と向き合い、目を通し、パーソナルな思いを胸に断片的に刻んでみる(レビューを書く時まではしっかり読み込まないようにしてる)。散らばった破片のような言葉や絵や写真、色、形、手触りなど、自然とインプットされてるものもあれば、すっと水に溶けるように消えていってしまうものもある。自然と、てぐせのように触ってしまう ZINE もある。そういう ZINE はわりとみんなが触ってる。あと、会場内で会話に出てくる回数がおおい ZINE ほど売れる傾向にある。書いて、描いて、撮って、まとめて、1冊の ZINE にする。わざわざ紙で。それを手に取る、読む、それについて話す、笑う、考えるという相互におけるフィジカルな体験が、ZINE の購買意欲を掻き立てるのだ。SNS 時代に ZINE が持つ大きな魅力でもあり特徴、今後の必要性、つまり表現者の武器にもなりうるポイントは『フィジカルさ』にあると考える。表現におけるフィジカルさももちろん大事だけれど、創作の意欲に駆られて、アウトプットする、その立ち向かう先に対するフィジカルさ、読者に会いにいくくらいの鬱陶しさが、愛すべき点なんじゃないでしょうか。

さて、残り3冊。

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世界中の名もなき旅人の明日を照らす

今回紹介するのは、世界中の名もなき旅人の明日を照らす『北極星』の意を持つ ZINE『POLARIS』(ポラリス)。東京と上海で暮らす3人の編集者・デザイナー・イラストレーターの3人で制作した1冊。もう ZINE じゃなく雑誌のレベルです。「旅人たちの冒険」をテーマに、中国の秘境、ロンドンの刑務所、エチオピアの砂漠と、さまざまな場所を冒険したそれぞれが、その軌跡(ルポ)を言葉と写真とイラストで表現していきます(もうそれだけでワクワクするでしょう)。ZINE を作るきっかけは去年の夏の中国の秘境への訪問だけれど、最後の取材がちょうどコロナ前のロンドンというスケジュール感が刹那的だ。

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SNS に淘汰されてしまう旅ではなく、何が起こるかわからない『冒険』をあえて選び、実際に自分の目に焼き付け、てざわりを感じ、味わい、インターネットでは決して伝わらない『香り』を記憶の中にとじこめ、言葉や絵で吐き出す。自らの足で一次的に得た、その情報こそ、価値があり、大切なんだということが伝わってくる1冊。あそこは〇〇“らしい“と、インターネット上の情報や人から聞いたってだけで知ったような気になって、SNS にからっぽの情報をひけらかす人が増えている中、このフィジカルな姿勢こそが ZINE 的だなと思う。しかもそれぞれがそれぞれ持っているスキルを合わせて、1つのものを作る。それを届ける。とてもすばらしい体験だと思う。

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90年代にはこういった人に頼らず大袈裟なアジテーションもなく、朴訥と描かれる雑誌がたくさんあったように思う。いま、書店に並ぶ、できすぎた旅の記録には違和感が残る分、『POLARIS』からは親近感や真摯さを抱く。いま必要な『感覚』の旅の本だなと思う。

読んでいるうちに旅がしたくなって、体が疼きます。もっと早くエントリーしてほしかった(笑)。手に入れやすいのはこの土日です。お急ぎを。もしくはオンラインで。

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レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


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作家名:POLARIS(東京都千代田区市ヶ谷)                             
私達は武蔵野美術大学院の市ヶ谷キャンパスで出会った3人の編集者・デザイナー・イラストレーターです。このキャンパスは昨年4月に新設された大学院です。地域の人々・企業を巻き込みながら様々な面白い仕掛けをしています。POLARISは「旅人たちの冒険」をテーマにした雑誌です。東京と上海で活動する20代の編集者・デザイナー・イラストレーター3名で制作をしています。今回巡ったのは、中国の秘境、ロンドンの刑務所、エチオピアの砂漠、龍と雷の伝説。世界中を冒険し、その軌跡を言葉と写真とイラストで表現します。
https://polarismagazine.jp
【 街のオススメ 】
MUJI com 武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパス店 ... この無印良品は、大学院と共同で運営されているショップです。学生たちが商品や企画を開発し、店舗で実際に商いを行います。店舗奥にある Open Market ではわたしたちの雑誌が販売されたり、企画展を実施したりしました!
https://www.muji.com/jp/ja/shop/detail/045789



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