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ミウラユウタ個展『リトーイントーキョー』に寄せて。

まず、一言お断りを。

何を言いたいかというと、これは土日の来店を促すメッセージではありません。基本的にそれぞれ自宅で過ごしてくださいね。なぜ、今回の展示に至ったかというのと、なぜ中止にしないのかというのと、ミウラユウタくんのことを少し、PARK GALLERY の責任者として記しておきますので、ミウラユウタ個展『リトーイントーキョー』のことを少しでも知りたい方は、長文ですがお付き合いください(来ないでください読んでみてください)。


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と、その前に…

ベッドで寝ながらでもわかるミウラユウタと今回の展示のこと
https://youtu.be/qkQHWUWMO-0

美術手帖にも取り上げてもらったよ
https://bijutsutecho.com/exhibitions/5674


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ある日、若いグラフィックデザイナーからメールが届く。「個展がしたい」と。うちはスペースのレンタル料、使用料を作家さんからちょうだいしないので、展示するなら僕やスタッフが好きと言える作家や作品がいい。だから、まず会うことにしている。作品を持ってきてもらって、見せてもらう。その時にもしすぐにでも売る自信が我々にあれば即答してスケジュールを決めるし、もっとこうした方が PARK で展示するならいいかもってアドバイスして終わる時もある。タダで貸して、作品も売れないとただの赤字なので、売るための方法を作家と一緒に考えるという座組みだ。作家にはできるだけ多くの知人友人を誘ってもらう。我々は写真や言葉を通じて個人的なネットワークや SNS で発信する。ミウラユウタの場合、正直、作品が売れるかはわからないけれど、クリエイティブに対する真摯な姿勢に可能性を感じ(目を見て決めるに近い)、わりとすぐに OK を出したと思う。あと、今回展示されている椿の作品が超好きなのだ。

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この椿1つだけでも見る価値ある思った。そして何より、このタイミングで個展をやると彼は「伸びる」と判断した。商品が細々と売れるよりも、1人の作家の成長の方がギャラリーにとっては長い目で考えて財産であることが多いし、そういう風に感覚的に決める時もある。パークという場所にはアートに興味があるない関係なく人がビール片手に集まってくる。アートの話をする時もあれば、恋の話をしたり、バカな話をしたりする。店主の料理をつまみにただの飲み屋だと勘違いしているやつもいるほどだ。そういう風の通る場所に、作品を置くことで、彼の作品が1つだけ上のステージにあがるような気がした。感覚的な話だけれどね。まぁなんどもいうけれど俺は椿の作品に惚れた。


ちなみに椿のポストカードをオンラインで売ってます
https://parkgallery.stores.jp/items/5e845c222a9a42757f9ec560
ポスターもあります、欲しい方は相談ください。


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コロナのバカと唱えながら、部屋に花を飾ってみるのもいいでしょう。たまには枯れない『花の作品』を飾ってみるのもいい。とにかく、ミウラユウタの作品を見ながらみんなでああだこうだ言い合う機会は残念ながら今回は奪われました。開催前には『中止』も一瞬よぎったけれども、「やりたい」と言って何度もパークに通う彼に背中を押された。今となって、としか言えないし、多くの人はそうだと思っているけれど、少し甘い見通しを立てていたのは正直なところで、それでも彼を応援し、励ましに来てくれる人たち、できる限りの対策をして足を運んでくれる常連さんの前でシャッターを閉めるというのはなかなか考えにくかった。だってここ俺の自宅だし。自宅待機だし(ちなみにパークはぼくの自宅の1階です)。

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じゃあ消毒や換気をし、それでも気になる方にはマスクを提供し(残り1枚ざんす)、マスクがない人とは一定の距離(6フィート)を保つ。スタッフやミウラくんと考えて話し合いながら。ちなみにミウラくんはめちゃくちゃコロナの状況に詳しい。そこに強い責任を感じた。彼のジャッジなら従おうと思った。ぼくも毎日の新聞と向き合ってる。まだ開けることが正解かはわからないけれど、多角的に見て、いま関係者全員が納得できていることが大事だという判断はしている。無症状感染者だったらどうするんだ!うつしちゃうよ!というご指摘があるかもしれませんが、その人はまぁ落ち着いて家で待機を。アポイントメント制なども考えたんですが、幸か不幸かまだまだ無名な小さな店なので、ドッと人が同時間に訪れるということがなく(来年はそうなってるといいね!)一定距離を保ったまま観覧いただけるので、4月4日、5日は通常通りオープンします。なんなら会期延長で来週の4月11日、12日の2日間もあけます(あくまで少しでも早く奇跡的な終息を祈っての希望的観測行為ですので来てくださいというメッセージではありません)。不特定多数の人がいる時間帯を避けたい方は、事前にメールでも電話でも DM でもくれたら時間を確保しますので、気軽にご相談ください。

なにも延期してまでやらなくても、という声もあるとは思うのですが、なんというか我々なりの「バランス」なんです。態度というか。肉体以外のものを守るための。うちが飲食店だったらきっとテイクアウトメニューを開発すると思うし、ライブハウスだとしたら閉めると思う。ただただ自分たちだけ守ろうとは思っていなくて、閉めて考えたほうがいいタイプのひとと、そうじゃない人がいると思うので、後者ではあるのですが、せめて、コロナの先の文化やアート、この先に求められる『場』のことを考えていますので、どうか広い心で理解を得られると嬉しいです。

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それにしても悔しい。この写真にある今回の作品のプリプロ(制作過程)は本当におもしろい。デザインの裏側というか創作のためのアイデアソースがたくさん。メモをあえてレイヤーにすることで、思考の層も悩みも伝わってくる。こんな風に、現場でしか見ることができないものってあるよなーと。島の焼酎もあるんだよーと、改めて場の大切さを教えてくれる。印刷のディテールもそう。みんな驚いて帰ってく。SNS だけ覗いてわかった気になっててはいけないね。

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何を言いたいかわからなくなってきたので、話を戻します。

今回の展示の目標は最初に書いた通り『売ること』ではなく『人をたくさん呼ぶこと』でもなく『ミウラユウタ』という作家の、そして彼の作品の『成長』なので、この得体の知れないウイルスによる不可抗力は、今後の創作意欲のバネになるであろうと思うし、誰かが来てくれたという知らせを聞くたびに声を出して喜ぶミウラくんは、通常の展示では経験できないほどの感謝の思いを育んでいると思う。毎日のように感覚を研ぎ澄ましているから、些細な感想も宝物のように感じられる。吸収してる噛み締めてる。

誰かが彼のことを知ってくれているという事実は、彼をきっと励ますと思います。

例えばフォローしたり
https://www.instagram.com/yuppe_my/

感想メッセージはもっともっと喜ぶよ。

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イメージしていた出口とは違うけれど、この展示は成功と言えるでしょう。ただ、こだわりぬいた印刷で刷られた1枚1枚の作品たちのコストを考えると胸が痛む。まだ若い作家よ。安くないよ。なので、ここからはお願いなんですが、ミウラユウタくんやパークのことが気になったり、ちょっとでもいいなって思ったら、オンラインで彼の作品を買い物してくれるとうれしいです。ミウラくん以外の作品もちょくちょくアップしてますので、それはぼくの酒代にもなるよ。

PARK GALLERY ONLINE STORE
https://parkgallery.stores.jp


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最後に、

おとといの晩、アートディレクターをやってる友人から LINE が来た。「いま PARK でやってるデザイナーさんの展示よさそうだね」と。このたった1通でなんだか救われた気がした。うれしくなってその日のうちにミウラユウタくんに伝えた。彼は彼で、そのディレクターのことを知ってたみたいで、やっぱり嬉しそうだった。同業者、しかもずっと上の先輩から言われたら嬉しいだろうな。ぼくも自分のことみたいに嬉しかった。

ほかにも『リトーイントーキョー2』を楽しみにしてるって書き込みも嬉しかった。なので、こんな風に、少しの感想、SNS で見ての感想だって、いつもの何倍も何十倍もうれしいんです。残りの会期で、そんなメッセージが少しでももらえたら嬉しいです。

そして今後、もっと成長した彼の『リトーイントーキョー2』が見れるよう、みなさんこれからもミウラユウタを、PARK GALLERY を応援よろしくお願いします。

加藤 淳也(PARK GALLERY)


PARK GALLERY
https://park-tokyo.com
https://www.instagram.com/parkgallerytokyo/

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