見出し画像

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (62) 野口 陽向 『GARAKUTA essential 』(東京都世田谷区)

47都道府県の様々な地域から ZINE を公募し、展示・販売するエキシビジョン COLLECTIVE いよいよ最後の土日です。夏休みの終わりみたいでさみしい。40歳手前になってもこの感覚は残ってるんだな。もっと大人になってるものだと思ってた。砂の城。波がさらってく。最終的に65タイトル。開始早々スカスカだった壁がどんどん埋まっていく様子は痛快だったな。これが一気にみんなの元へ帰っていくと思うと、不思議だな。売れなかった ZINE ももちろんあるのだけれど、たくさんの人が手に取り、眺め、何かを感じ取ったのは確かな事実だと思います。なんでもないものなんて、ないのだなと本当に思います。

さて、今日明日は、天気もよさそうだし、思い切り楽しみたいと思います。

画像1

この ZINE そのものがガラクタになることを願って

さて今日紹介するのは滑り込みでエントリーしてくれた野口陽向くんの ZINE『GARAKUTA essential』。誰かが作ったアートや絵、写真にはなかなか心が動かず、街で見かけるモノ、例えば電車のつり革とか、自販機、捨てられた粗大ゴミ、何かの部品とか、そういうものに惹かれるという作者が、実際に道で拾ったり蚤の市で買ったりして部屋に積まれて行ったガラクタたちを写真で撮影し掲載した ZINE。誰かにとってはガラクタでも「視点を変えれば、価値が見出される」。そういう思いでページをめくる。そもそもガラクタってなんだっけ?

画像2

インターフォンの受話器(national製)、ローライA110(カメラ)、使用済みのゴム手袋、タイプライター etc… さまざまなガラクタ、ジャンク品が無機質に並ぶ。こんなに潔いまでのガラクタって、あるんだと改めて思う。想像通りのガラクタ。確かにそれはかつて『プロダクト』として光を放っていたであろう、品の数々。うつくしさの名残がある。光があってこその闇というか、ガラクタがあっての新品というか。いま、まさに『ガラクタ』というレッテルが貼られてるだけで、まだまだ俺はやれる、戦える、と訴える戦力外通知を受けたアスリートのようにも見えてくる。(写真に撮る、ということがこんなにもガラクタと相性がいいとは気づかなかった、写真には再生の力もあるのだと思った)。気づきを与えて、視点を変えさせる。アートの源流のようなアプローチがしっかりと詰まった一冊。

画像3

それにしても、本当にめくればめくるほど、それぞれのガラクタひとつひとつがポートレートに見えてくる。それぞれが背負った歴史や時代の香りがして、今にも静かに語り出しそうだ。「あの頃はよかった」、と。映画『グレイテスト・ショーマン』の中で、人として社会から排除されたひとたちに光を当て、どんどんサーカス団にスカウトして一団を盛り上げていくといったヒュー・ジャックマンを思い出す。

作者が10代最後につくった ZINE 。決して読んで、役に立つとは言えない(だいたいの ZINE がそのように)このガラクタみたいな1冊も、誰かにとっては、アイデアの種になったり、誰かにとっては、創作のモチベーションになったりするのだろう。そう思うと、ぜひ、誰かの手に、渡って欲しいものですね。野口くん、いいよ。この切り口!


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY) 


画像4

作家名: 野口 陽向 (東京都世田谷区)
『人間=人生=作品』
私は偶然や成り行きに美しさを感じます。作る物も、それを大切にしています。モノに付く傷や痕跡は、その時の偶然が目に見えます。立体物が大好きです。人生でも同じで、成り行きや偶然で生きています。
やりたい事をやる為に努力をしますが、苦労はしていません。
作る物に自信はありますが、責任はありません。
受け取る人の「良い」「悪い」はどうしてもわからないものです。
そこが表現の肝であり、とても大変な事でもあると思います。
十人十色がなかなか厄介です。しかし、それが楽しいです。
こわい。つらい。なかなか最高です。笑https://www.instagram.com/hinata__noguchi
【 街のオススメ 】
蔦谷家電 ... 買わなくても読める。
https://store.tsite.jp/futakotamagawa/


🙋‍♂️ 記事がおもしろかったらぜひサポート機能を。お気に入りの雑誌や漫画を買う感覚で、100円から作者へ寄付することができます 💁‍♀️