COLLECTIVE レビュー #48 Atsushi Sen『hollow』(福井県)
前回のレビューで「ZINEって買うって決めた時がピークだよね」と言っていた友人の話をした。帰ってゆっくり読もうと思うことはもちろんあるんだけれど、なかなか帰ったら読まないよねと、話してた。でも、店頭で、ZINE に触れた瞬間に、「ピン」とくることがある。
「持っておくべきだ」
という力が働く。これがほしかったとか、この部分に感動した、とか、そういった心の動きではなく、ほぼ衝動的に、もしくはある種のしたたかな感情をもって、手元にアーカイブしたい、本棚の肥やしにしたいと思うのだ。「持っている」ということがなかばステータスになるようなそんな ZINE に出会いたい。いい ZINE とは、持っているだけでクールな ZINE 。棚に置いてあるだけで暮らしを豊かにさせる ZINE だ。読むとか読まないとか、理解しているかどうかすら関係ない。
ストリートカルチャーが好きで、ZINE のコレクターでもある彼はこう続ける。
「いい ZINE は2冊買って、1冊はカッターでカットして好きなシーンを額に入れて飾っている」。
COLLECTIVE ZINE REVIEW #48
Atsushi Sen『hollow』
福井を拠点とするフォトグラファーの Atsushi Sen さんのフォトジンをめくりながら、そんな友人の話を思い出した。スケートボードに影響を受けながら活動する彼の ZINE のタイトルは「HOLLOW」。おそらく「空洞」的な意味。固体の中を空洞にすることで軽量化させるとかそういった場合に使われる。柔らかなフィルムカメラの特徴を活かし切り取った日常は、まるでファインダーという空洞から覗いた景色。フィルムのノスタルジーも合間ってか少しの虚無感が漂っている。
フィルムでのスナップであることも、構図も被写体も、新鮮かと言われるとそうではなく(新鮮なことがいいというわけではないけれど)、ZINEとしてはよくあるクラシックなスタイルには違いないと思う。人生の半分くらいが「写真を見る」仕事だったから反応が鈍くなってしまってる自分もいると思う。しかし、「空洞」というタイトルが、しっかり効いている作品だ。全体を通して、どことなく漂う「虚しさ」、そしてそこから生まれる距離感が美しいなと、ぼくは感じた。ZINE を手にとった瞬間、この美しい虚無感を少しでも指先から察知できるのであれば、この ZINE を本棚に迎え入れてもいいかと思う。それだけでクールな ZINE だと思う。そして、ぼくなら裏返してスニーカーの写真を見えるように飾ると思う。
そういえば引っ越しのタイミングでアリ・マルコポロスのサイン入りの ZINE をなくした。もともと物をなくしやすいタイプだったし、あくまで ZINE だから、別にいいやと思っていたけれど、今思えば額にでも入れて飾っておけばよかった。
レビュー by 加藤 淳也
---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----
【 ZINE について 】
日本の美しさを自分なりに表現しました。
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