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【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー ㉗ LOCKET 『LOCKET 04』(神奈川県鎌倉市)

COLLECTIVE には『ZINEの持っている可能性を探る』という裏テーマのようなものが存在しています。これは表立って言っていることではないのですが、会場内では時々『暗黙のルール』のように、可能性について語られています。そのためには ZINE の属性を知ることも大切なので、たくさんの ZINE をいろいろな切り口から見て、読んで、研究して、あーでもないこーでもないと話しています。目に見える部分だと例えば、オンライン印刷の価格破壊、レトロ印刷など特殊加工の普及(今回少ない)、デザイン系アプリの発展・簡易化、インデペンデントな販路の多様化などなど、ZINE カルチャーが醸成されるべき要素はたくさんあります。

ZINE が作りやすい、受け入れやすい環境が国内に整ってきてるのです。ZINE を売るために「足で稼ぐ」時代は終わり、SNS で人気の ZINE なんてものがそろそろ出てくるのです。

本来誰しもが持っているであろう『編集力』に、抜群のセンスはもちろん、デザイン力や印刷のクオリティ、最低限の資本金と販路さえプラスすることができれば「 ZINE の域を超える 」ことは可能。むしろ、マスな雑誌にはとうてい表現できない対コアな企画をコンテンツリッチにさせる意味では、安価な雑誌よりも高価な ZINE の方が魅力的にうつるもの(昔は雑誌もコアな情報を扱っていたけれどね)。コモディティ化された現代のメディア群の中で、頭角を現したいのなら、むしろインデペンデントな紙の媒体だろうと思うし、いい雑誌と言われる雑誌や、神回はまるで ZINE のように、マニアックになる傾向があります。俺たちはとっくの昔からわかってたけどね〜と鼻で笑う時代なんです。


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ぼくらの体を賭(と)して、
ぼくらにとっての真実を、
ぼくらの言葉で描きます。

独立系旅雑誌『LOCKET』こそまさに ZINE の域を超えた ZINE であり、現状想像(創造)できる ZINE の中で、ここが限界ではないだろうかとさえ思わせるペーパーバック。

その目で、耳で、鼻で、舌で、手で

もしくは90年代にピークを迎えた『雑誌』という生命体の末裔。最後の子孫。ZINE と名前を変えて生き残っていたのね。と、サブカルクソじじじたちが感動の涙を流しながら迎える ZINE こそ『LOCKET』だ。編集者がインターネットで情報を拾うようになり、売れた他社企画をデザインを変えて真似すれば安泰という時代に、この ZINE は、その目で、耳で、鼻で、舌で、手で触れて、てざわりをそのままに伝えようとしている。ぼくらの体を賭(と)して、ぼくらにとっての真実を、ぼくらの言葉で描きます、というメッセージにあるように、その実直さが誌面からしっかりと伝わってくるから見事である。


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しかも鎌倉からエントリーしてくれた1991年生まれの編集者の内田洋介さんと、1993年生まれのデザイナーのふたりで作られているというから驚きだ。今回の『COLA ISSUE』がなんと2015年から数えて4号目。「TRAVEL FOR OWN TRUTH」をタグラインに、ペンとフィルムカメラを携えて、主観的な真実、姿なき価値観のようなものを求め旅し、作られている。文も写真も、デザインも妥協がないというわけ。バケモノみたいな作り方だな。イシューの作り方も鋭い。昨今ブームになりつつクラフト・コーラ。


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読み手を主人公にさせてしまうような雑誌

某カルチャー雑誌だったら「いま流行りらしい」と本を片手にシャツを首からさげた外国人モデルに飲ませて道を歩かせて終わりだろう、もしくは鬼の首でも取ったかのようにコーラ特集を組むだろう。

けどそれではぼくらの胸には刺さらない。海外旅行ではじめてその国の空港に降り立った時に感じるその国独特のスパイシーな香りみたいに、ちゃんとコーラのにおいがする、味がするイシューの作り方。知ってるつもりで本当は知らないでいること。もしくは、知らないことのようで知ってること。この絶妙な距離の取り方が『いいイシュー』の作り方なのだ。そのバランスがちょうどいい。読み終わる頃には、クラフト・コーラを「飲みたくなる」のではなく、「作りたくなる」。そんなふうに、読み手を主人公にさせてしまうような雑誌なのだ(もう ZINE じゃなくて雑誌って言っちゃってる)。


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COLLECTIVE でも人気の『LOCKET』。

過去のバックナンバーはもう SOLD OUT なので、お急ぎを。といいながら自分の本棚を覗くと、まさかの LOCKET #03 が。過去に代官山蔦屋でジャケ買いしたのを思い出した。スタッフに言ってくれれば #03 も立ち読みできるようにしますので。

いやーそれにしてもすごい編集者がいたものだー。


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


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作家名:LOCKET(神奈川県鎌倉市)
2015年創刊の独立系旅雑誌。1991年生まれの編集者と1993年のデザイナーのふたり、世界中を旅して見つけた真実のようなものを、臨場感のある文章と美しいフイルム写真でお届けします。2020年7月31日より第4号 COLA ISSUEが発売。
https://locketmag.com
【 街の魅力 】
鎌倉に住むひとたちが好きです。
【 街のオススメ 】
① POMPON CAKES BLVD. ... 鎌倉でいちばんおいしい洋菓子店
https://pomponcakes.com

② il piccione D'oro ... 鎌倉でいちばんおいしいイタリアン
https://tabelog.com/kanagawa/A1404/A140402/14076472

③ 和処 大むら ... 鎌倉でいちばんおいしい日本料理店
https://tabelog.com/kanagawa/A1404/A140402/14064177





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