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【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (61) かもめと街 チヒロ 『かもめと街歩きZINE vol.1』(東京都)

僕個人として、どこかの街のギャラリーへ足を運ぶときは、そのアート的な感覚とのバランスを保つために(中和するために)、その近所のおいしいもの、を探求します。せっかく行ったのだから「ただでは帰らぬ」というケチな根性もあるのかもしれませんが、その『場』を楽しむだけではなく『地域』ごと楽しんだ方が、きっとその日の1日が充実してくるはず。東京だから、地域から地域へのハシゴみたいな日ももちろんいいけれど、場(点)で見るよりも、地域(線)でみる方が奥深いなと思います。焦んなって。

だから、パークも、場所としての『点』ではなく、『線』でつないで、幅広く楽しんでほしいと思ってます。ギャラリーからすぐ脇を入り、石段をのぼれば、そこに広がるのは神田明神。商売繁盛の神様。日本三大祭『神田祭』は2年に一度、パークのまわりをにぎやかにします。歩いて5分もかからないところには中学校をリノベーションしたアートの複合施設『3331』が。そして、神田の方に足を伸ばせば、由緒正しき蕎麦屋の名店『藪そば』『まつや』が軒並みをそろえています。秋葉原のど真ん中でもあるので、アニメ好きやメイド好きにもオススメ。大人の夜を彩る『湯島』も目の前。スナックのハシゴもいいね。ここは、東京大空襲の戦火を逃れた老舗の名店ひしめき合う、れっきとした東京の東なのです。

だからどうぞみなさん、この2日間は、パークを『点』で見ずに、線でつないで、地域を舞台に遊んでいただければと思います(日曜日は飲食店が休み多いので注意です)。いざとなったら電車に飛び乗り、10分で谷根千へ。デートにも最適です。ぷー。

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あたらしい東京下町さんぽを案内するWebマガジン

自分の好きな街って、なんでこんなに人に伝えたくなるのかな。ぼくはこの末広町に来る前(パークはギャラリー兼住居です)、清澄白河の一歩手前の『森下』(3ヶ月でひこしたけど)、その前はずっと世田谷(下高井戸→下北沢→豪徳寺→下北沢→上町→松陰神社)。いまでも、昨日のことのように思い出せるし、あの店のあれが最高って、ずっと言ってる(死ぬまで言うかも)。誰に頼まれるでもなく、通って、広めて、混むと行かなくなる。そんな猫みたいな人生を歩んできたよ。だってぼくには自信がある。うまいものをうまいと叫び、きれいなものをきれいと言う。日本の産業・経済を支えてきたおじいさんやおばあさんには感謝と敬意と、でっかい笑顔を。何よりも贔屓しないこころ。おごらない気持ち。を、大切に生きてる。

東京の『下町』からエントリーのチヒロさんによる ZINE『かもめと街歩きZINE vol.1』は、あたらしい東京下町さんぽを案内するWebマガジン〈かもめと街〉を運営する浅草育ちのチヒロさんが手掛けた記念すべき ZINE 1冊目。浅草だけに限らず、『下町エリア』の気の利いたカフェや、地元民ならではのおすすめ手みやげを紹介しています。

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浅草で3代続く老舗の純喫茶『銀座ブラジル』、その渋みとは対称的にそのうつくしさを際立たせるのはリノベーションによって生まれ変わったカフェたち。そのコントラストがまぶしい。「ひとつひとつのメニューにこだわりがありすぎて語りきれない」と、店への思いを語るのは銀座ブラジルのマスター。その時の熱くなった胸の思いを、少しでもたくさんの人に届けたいと、創作意欲を掻き立て、完成させた1冊。

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世の中にはたくさんのガイドブックや町歩きの本があるけれど、どれもどうも客観的で、誰かの借り物の情報が多い。それはきっとまぁ仕事として請け負っているから、はじまりの起点が愛情ではないんだよね(さも愛から始まった風のものもあるけれど、バレてるよね=言葉が重い)。本当に愛からはじまっている本は、足らないくらい潔いものです。住所?電話番号?ノンノン。いりません。

ぼくも仕事で、街のガイドブック的なものを作ることがあって、その生みの苦しみを知ってるつもりでいるけれど、やはり、その本のスポンサー主導で、紹介先や、紹介文はコントロールされてしまう。ぼくなんか、わりとその辺の編集に関しては武闘派(いいとおもったら押し通す派)なんですが、それでもどうしてもかなわない。

けれど、ZINE のいいところは、誰にもとがめられることなく(取材NGは仕方ないけれど)、好きを好きなまま、発信できるからいい。うらやましい。実はこういう本を作ってみたかった。勇気づけられたというか、悔しい。もっと俺の方が詳しいと思わず、言いたくなる。

SNS でのリコメンドは、本当に誰でもできるかんたんなものになってしまった。情報価値が薄い。ぼくの好きな街の中華屋を、あんな風にオススメされると、あれはもう冒涜だなんて思ったりもする。お前の舌になにが見える!と。だからこそ、いま、紙で、言葉で、写真で、こうしてフィジカルに、1つ1つの店を伝える、こういうひとがいて、うれしいじゃないですか。パークに来たら、絶対に買ってください。

ちなみに、夏に飛ぶのはウミネコ、冬に飛ぶのがかもめ。

これからの季節、かもめの嗅覚が研ぎ澄まされますね。


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


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作家名:かもめと街 チヒロ(東京都)
あたらしい東京下町さんぽを案内する Web マガジン〈かもめと街〉を運営しています。浅草育ち。初めての ZINE では浅草の老舗喫茶店〈銀座ブラジル〉を特別取材。その他下町エリアのお洒落なカフェや、地元ならではのおすすめ手みやげを紹介しています。これ1冊で下町散歩が楽しめます。https://www.kamometomachi.com
【 街の魅力 】
東京の下町。喫茶店など、扉を開けただけで物語の世界に入ってしまうような出来事に出会える街。
【 街のオススメ 】
① 銀座ブラジル 浅草店(喫茶店)... カツサンドなど、どれを食べてもレストランのような本格的な美味しさ。きびきびしつつ温かい店員さんも魅力です。
https://tabelog.com/tokyo/A1311/A131102/13022134

② YATO(本屋&カフェ) ... 両国にあるカルチャー色の強い本屋。いい本がたくさん。DIYされた店内もかっこいい。
https://www.instagram.com/yatobooks

   



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