見出し画像

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (65) 駒﨑 崇彰 『I Guess Everything Reminds You of Something』(東京都板橋区)

最後のレビュー。65タイトル目。ここまで書いてきて、ものづくりに対して勇気をもらえた、とか、励まされた、とか、次を踏み出すきっかけになった、とか、自分のやりたいこと、気持ちを整理してもらえた気がした、とか、背中をすっと押せたようなレビューもあれば、あるいは、心の中に秘めていたことを当てられてびっくりしたとか、自分がやりたかったことを言語化してもらえたとか、預言者みたいなところもあったり、読み込んでもらえてうれしかったとか、気持ちをわかってくれるひとがいてうれしかったとか、褒めすぎじゃない?とか、単純に喜んでくれるひととか、わざわざお礼を言いにパークまで足を運んでくれたりする人もいて、本当にやってよかったなと思ってます。みなさんの声があったからここまでやってこれました。ありがとうございます。泣きながら書いてます。

お客さんの中にも、レビューを見て気になってたんですよね、とか、遠方からレビューを見て、オンラインショップで買ってくれるひとがいたり、会場にもレビューを貼り出しているので、それを見て、そういう見方もあるんだと、なるほどと関心してくれたり。

総じて、ぼくが伝えたいのは、ものごとを、1つの視点だけで見るよりも、いろんな視点でグルグルと見渡してみると、景色は、世界は、もっともっとおもしろくなるし、自分のものにできるってこと。ワールド・イズ・マイン。ZINE っていう正解のないメディアだからこそ、少しでも多くの視点を取り入れ、ZINE を眺めてみる。もしくは多種多様な ZINE の数々を通じて、多様性を知る。受け入れる力を磨く。共感はしなくていい。理解しようとする気持ちが、一人ひとりの暮らしを豊かにして、社会をゆるやかに変えていけるのではないかと思うわけです。SNS だけで知った気にならず、知らない誰かの噂話に耳を貸さず、自分の五感の1つ1つをしっかりと磨いて、この世の中と向き合えば、もっともっと毎日が楽しくなると思います。誰かのフィジカルやパーソナルな想いから吐き出された ZINE というメディアには、その感性を磨く力、可能性が備わってるんです。だからぜひこの機会に、最後の日となりますが、自分の感性を磨く、自分のための ZINE を、1つでも見つけてみてください。探してみてください。そして1冊でも売れたという事実が、誰かの気持ちを支えます。ぜひ。

最後に、ぼくは、長い時間がかかってでも、誰かの表現したい気持ちや、クリエイターやアーティストになるための活動を、支援したいなと思っています。結果が出ようが出まいが、向き合っていけたらと思っています。どうぞこれからもよろしくです。

画像1

何を見ても、なにかを思い出す

さて、最後のレビューです。最後にレビューするにふさわしい人から届きました。この人が作家として活動をやめるその日まで、ぼくは彼の作品をレビューし続けるんではないだろうかと思っています。

画像2

『I GUESS EVERYTHING REMIND YOU OF SOMETHING』。ヘミングウェイの短編小説の題を引用した1冊の PHOTO ZINE が届く。どこか懐かしい感じがする、行ったことがある場所のような気がする、会ったことがある気がしてくる。多くの『写真』には、そう思わせる力がある。実際に COLLECTIVE に並んだいくつかの PHOTO ZINE を見返してみても、どれも、どこか懐かしく、自分の記憶と挿し変わっていくような感覚があります。写真の中の景色に入っていってしまって、心が錯覚して帰ってくる。それは名前のない写真家の写真でも、読者モデルが撮った写真でも、アラーキーが撮った写真でも、ドアノーが撮った写真でも、地球の裏側のカーニバルの写真でさえ。つまり『写真』自体に、思い出を覚醒させるような機能が備わってるということ。無意識なことが多いと思うけれど。写真を見るという行為自体が『トリガー』(引き金)となって、記憶の中枢が刺激される。この ZINE は、そんな『写真』が、記憶の『トリガー』であることに興味を持った作者が、見る側に「何を見ても、なにかを思い出す」という体験をダイレクトに与えられないかと、自身の写真作品の中からセレクトし、編集した1冊。ある種、実験的なコンセプトだなと思って受け取って開いてみたけれど、実験はまず、成功と言える。

画像3

場所が特定されることのない1枚1枚の風景写真、あるいは日常のワンシーンが、音もなく静かに、ページをめくるたびに続いていく。都会とも田舎とも言えないそんな『世界』が本の中にある。その景色を見てるのは、写真家でもなく、カメラのレンズでもなく、『私』。風景の中に自分が溶けていく感覚がある。作者の『まなざし』が、自分の『まなざし』とクロスオーバーし、景色を自分の世界にできる。ちょうど顔が隠れて、視界がなくなる大きさ(判型)も大正解だと思う。没頭できる。ちょうど窓の外を覗いているような、もしくは、散歩中にふと立ち止まった瞬間に見えた目線の先のような。例えば家族と行った子どもの時の旅行や、上京したばかりの途方もない感情や、昔の恋人、友人の葬式、前に住んでいた家、久しぶりに帰った地元の学校。ちょっとずつちょっとずつ思い出して、1冊読み終えた頃には、映画を見た後のような気持ちになれた。

何を見ても、なにかを思い出す。この ZINE の作者は写真家の駒﨑崇彰さん。パークで展示をしてくれたこともあって、何度も、彼の写真をみてる。飲みに行っては写真の話をして、ぼくの辛口の批評にいつも耳を塞ぐ(というか酔い潰れる)。無理してファッション写真とかモデルとかをブッキングして撮らなくても、駒崎さんが撮る風景写真は、まなざしがやさしくて、とてもいいと思ってる。光と影を見つめて、この瞬間を『残したい』という思いがこもってるからだと思う。

画像5

この ZINE が届いて、開いて、風が吹いたような感じがあった。あーこれは、駒崎さん見つけたなって感じがあるだろうなって。それくらいいいなと思ったよ(お世辞じゃないからね)。

会期終了後もパークで取り扱います(勝手に決定)ので、レビューを読んで気になった人は会場ででも、オンラインでも、ぜひ。

こうして、駒崎さんの活動はもちろんですが、これからもこんな風に、こういったレビューという形ではないかもしれないけれど、ずっとみなさんの作品や活動、見守っていけたらと思っています。またいつかパークで会いましょう。

終わり。


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


画像4

作家名:駒﨑 崇彰(東京都板橋区)
埼玉県出身、東京在住。
【Exhibition】
2007『Love/Hate』Totem Pole Photo Gallery, 四谷
2012『Intentionally Blue』 cafe ZINC, 下北沢
2014『Existence/Invisible』SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS, 渋谷
2017『New Homecomings』PARK GALLERY, 末広町 *頓所梨湖との2人展http://www.takaakikomazaki.com
【 街の魅力 】
何処にでも出やすく便利で、なおかつ都内でも落ち着いた雰囲気で住みやすい街。
【 街のオススメ 】
ジャポネ ... フランス菓子をベースにした菓子パン、惣菜パンのお店。
いちごオムレットが絶品。シュークリームとエクレアはその場で生クリームを詰めてくれます。
https://tabelog.com/tokyo/A1322/A132205/13120907


🙋‍♂️ 記事がおもしろかったらぜひサポート機能を。お気に入りの雑誌や漫画を買う感覚で、100円から作者へ寄付することができます 💁‍♀️